著者
利根川 智子 会津大学短期大学部社会福祉学科(所属は掲載当時のものです)
出版者
会津大学短期大学部
雑誌
会津大学短期大学部研究年報 = Bulletin of Junior College Division, the University of Aizu (ISSN:13406329)
巻号頁・発行日
no.63, pp.93-98, 2006-02-28

子どもは集団生活を送る中で仲間関係を持ち、社会性の発達を促す。葛藤解決場面においては、子どもは自他の欲求・要求の違いを考慮し、自分の情動や行動を調節しなくてはならないため、友達との関係の持ち方を学ぶ良い機会となる。本研究においては、幼児期後期の葛藤場面の内容、葛藤解決方略、葛藤の結果について発達的差違を探索的に検討することを目的とした。4歳・5歳クラスの男・女児26名の自由遊び中に生じた葛藤場面について分析した結果、葛藤数は5歳児の方が多く、内容は物・場所の取り合いが多く、解決方略は拒否や禁止の意思表示をすることが5歳児よりも4歳児に多く、葛藤の結果として、4歳児は言い分を通すことが多かったが、5歳児では双方の言い分を調節するかうやむやに終わることが見出された。
著者
郭 小蘭 郭 麗虹
出版者
会津大学短期大学部
雑誌
会津大学短期大学部研究年報 (ISSN:13406329)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.83-91, 2006-02-28

本論文は中学校のカウンセリング活動の中でよく見られる女子生徒のリストカットの事例からスクールカウンセラー(以下SCと略す)の学校全体に対する支援活動の実際を紹介し、支援方法について検討する。この実践的研究事例の提供の意義は、この領域に関する研究方法の開拓につながること、また、現場で活躍している教師、保護者にとっても参考になることにある。本論文の中ではまず第1部分では、筆者の出会ったリストカット事例を通じてリストカットって何だろうか。リストカットはなぜ起きたのだろうか。起きた時の対応及び今後の課題は何だろうかについて実践的な報告をする。そして、第2部分では学校でリストカットが起きた場合はどのように対応するだろうか、(具体的には第一の発見者、発見者の対応、SCへつなげていく、生徒の周囲の環境との必要な部分に関する情報共有と連携)について、実践的な報告を通じて学校全体に対する支援方法を検討していく。さらに女子生徒のリストカットの3事例を通じて、思春期という難しい時期の女子の心理、生徒に対する大人のかかわり方について何か提言することができれば子育て支援に貢献することができるのではないかと思われる。
著者
宮下 朋子
出版者
会津大学短期大学部
雑誌
会津大学短期大学部研究年報 (ISSN:13406329)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.139-145, 2006-02-28

〔目的〕短期間の学習において、減塩という食育が成り立つかどうかを検討するため、本学学生を対象に、調理学実習I・IIの授業において塩分濃度差識別教育を行い、その結果を確認したので報告する。〔調査の条件と設定〕塩分濃度差識別能力を見る官能調査を実施するにあたり、試料温度を実際の調理で用いる温度である70℃付近に調整して実施した。〔調査対象および調査方法〕平成15年度の食物栄養学科1年に在籍した学生を対象に、訓練前の前期調理学実習Iの第1回目の授業と、訓練後にあたる後期調理学実習IIの授業の最終日に行った。調査は、塩分濃度0.5〜1.0%の範囲で濃度差0.1w/v-%に調整し、品温70℃±3℃に保持した試料をランダムに配置し、順位法による弁別試験と、その6試料の中から自分が最も好ましいと思う塩分濃度の試料を選ぶ選択法による嗜好濃度試験を実施した。〔結果および考察〕Kendallの一致性の係数W、Spearmanの順位相関係数γs、は、いずれも有意に高く、塩分識別能力が上がったことを示した。また、訓練の効果を見るコクランによるQ検定でも、学習効果があったことを示していた。しかし、選択法による嗜好濃度試験では、前期と後期では大きな差は見られなかった。これらの結果から、1年間の授業を通して行った減塩教育は、学生の塩分を知覚する能力を高める効果は認められたが、嗜好塩分濃度には大きな変化は見られず、文化的に手に入れた味覚は、1年間という学習期間では変化しない事を示していた。一方で、パネルは、前期より後期において塩分濃度を識別できるようになっていた。このことは、味覚識別能力の獲得は、訓練と環境によって可能である事を裏付ける結果となり、1年間という短期間の学習でも可能であることを示していた。塩分濃度差を識別する能力の獲得は、自らの食生活の中で塩分をコントロール出来る能力の獲得である。減塩を目的とし、塩分濃度を見分ける能力を培うとともに、意識的に料理の塩分を捉える習慣を持つことで、食生活の中での塩分摂取量をコントロール出来るものと考える。