著者
山口 明美
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 (ISSN:13421468)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.8-18, 2008

衣類の洗浄の基本は"もとにもどす"ことである。長い年月を経て洗浄力を高めるための研究がなされ,洗濯機,洗剤はより優れたものが登場し,洗濯は容易になったかのように思われる。しかし,汚れの成分によっては洗浄効果があらわれないこともある。その一つとして鹿児島地区では馴染みの固体粒子である火山灰と油脂成分である皮脂汚れとの混合汚れを想定し,家庭洗濯における固体粒子である火山灰と油脂汚れの個々の成分の洗浄されやすさを検討することを目的とした。8種の皮脂成分と火山灰を用いて作製した人工汚染布を,6種の洗剤を用い,洗浴温度,洗浴硬度を変えてターゴトメータで洗浄し洗浄性を評価した。その結果,洗浄力に最も影響を与えるのは硬度であることがわかった。繊維と洗剤との関係において,洗浄力の評価に石けん,合成洗剤の違いよりむしろ繊維基質に起因することもわかった。また,皮脂成分の中では,コレステリンステアレート,トリオレイン,スクアレンは除去されにくいことがわかった。
著者
川西 志朋 原口 初美 竹田 千重乃
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 (ISSN:13421468)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.38-55, 2006-06
被引用文献数
1

鹿児島県の特定給食施設における非常用食料の実態を調査した。鹿児島県内の集団給食施設に2004年(平成16年)10月から11月にかけて155施設にアンケート調査を依頼し,124施設(回収率80%)から回答を得た。施設の内訳は,病院(52施設),学校給食(32施設),保育園(20施設),社会福祉施設(14施設),寮(4施設),自衛隊(2施設)である。災害に備えての施設ごとの備蓄状況にっいては,備蓄のある施設が37%(46施設),備蓄のない施設が63%(78施設)であった。非常食のある施設における設置時期は1997年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災以降が多く,全体の85%を占めていた。備蓄食品例については主食,主菜,副菜,果物,飲み物・スープ,特殊食品,その他に分類した。保存量にっいては52%において2〜3日分を備蓄していた。非常食の条件では「調理にあまり手間のかからないもの」が44%,「長期保存に耐えるもの」が37%であった。非常食の更新にっいては「品質保持期限または賞味期限の範囲内で行う」が55%,「適宜行っている」が35%であった。備蓄への考えにっいては学校・学校給食センター,保育所においては非常時,休校となるため,現時点では特に非常食の備蓄は検討していないと言える。全施設においては非常食を利用するような事態への遭遇は7%であった。
著者
山口 明美
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 (ISSN:13421468)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-26, 2008

第一報において,火山灰と皮脂汚れとの混合汚れの洗浄において,硬度の影響が大きいことが認められたことを報告した。ここでは,硬度成分と考えられる火山灰中の各元素を含む鉱物が洗浄に及ぼす影響と鉱物の変化と洗浄の関係,さらに商業洗濯における再汚染の有無を明らかにすることを目的とした。原子吸光法による火山灰の分析の結果,ケイ素,アルミニウム,鉄,マンガンの順に鉱物は多く含有されていることがわかった。この鉱物の中で,アルミニウムが最も繊維に付着しやすく,洗浄効率が低いことがわかった。マンガンの含有量は少ないが,付着すると非常に落ちにくい物質であることもわかった。白布添付による方法で再汚染試験を試みた結果,ドライクリーニングにおける再汚染はほとんどないことが明らかになった。
著者
園田 麻利子 小西 早智 谷口 早耶加 山崎 里鶴
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 (ISSN:13421468)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.82-94, 2008

1.入院の動機は,最期をゆったり過ごしたい,自分で決めた治療方針を貫きたい,家族に迷惑をかけたくないことであった。2.ホスピス入院中の思いは,時間的経過の流れの中でみたとき,3名が共通であり,病気の進行に伴って「病気発症と積極的治療」「治療効果が得られず揺れ動く」「ホスピスへの入院を決定」「ホスピスでの満足した生活」という4段階のプロセスがあった。それは,治療への期待,疾病の悪化に伴い揺らぐ自分,そしてホスピスを選択し今満足しているという思いであった。3.納得のいく治療への模索,自己選択した治療の遂行,ホスピスへの入院について自己の価値観に基づいて自己決定したことが,現在のホスピスでの満足した思いにつながっていた。4.3名とも,がん治療の経過で納得できない医療・体制について不満・不安を表出した。それは,患者中心の医療を望んでいるが現実にはできておらず,その人らしく生きることへの医療者の支援への願望であった。
著者
園田 麻利子 上原 充世
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 (ISSN:13421468)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.21-35, 2007

本学看護学科3年次生に開講されているターミナルケアの授業を通して学生の死生観の変化を明らかにし今後の教育の方向性を模索することを目的に授業前後で質問紙による調査をした。対象は,本学看護学科3年次生,50名であり,期間は平成18年4月,7月の2回である。その結果,以下のことが明らかになった。1)死別体験,葬儀参列の体験が8〜9割があり体験率は高いと言えた。2)死に対する態度の尺度,死生観尺度,死のイメージ尺度(SD法)の授業前後の比較では授業後が有意に高かった。このことから,授業は学生の死生観が肯定的に変化することに大きな意義を持っていたと考えられた。3)死別体験・葬儀参列の体験・看取り体験と各尺度との関連は一部を除いて有意差はなかった。このことから看護学生の死生観を形成する上でこれらの体験は大きな影響を及ぼしていないと考えられた。4)授業は,専門の講師からの講義や学生が自ら死について考えられるような教材であったが,授業後においても死を否定的に考える学生もいるので今後の授業内容の検討が必要であると考えられた。今回の調査より,ターミナルケアの授業は,学生の肯定的な死生観育成に大きな影響を及ぼしていた。しかし,授業後においても死を否定的に捉える学生はいるので,授業のあり方の継続的な検討が示唆された。