著者
沖 裕貴
出版者
中部大学大学教育研究センター
雑誌
中部大学教育研究 (ISSN:13497316)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-18, 2017-12-20 (Released:2018-02-14)

本稿では、カナダおよび世界各国の制度的な教育専念教員ならびに実質的な教育専念教員に関する実態とその導入の背景や特徴、課題についてまとめたものである。カナダをはじめ一部の国々では終身雇用で教授職への昇進を含めた教育専念教員制度が確立しており、大学内での彼らの貢献の評価は高く、彼らの自らの職位に対する満足度も極めて良好である。また、一部の国々では国としての施策には反映されていないが、教員個人や大学ごとに教育と研究のバランスを個別に調整するところも多い。これには各国とも、多様な入学者の増加と教員の負担増、公的研究費の相対的減少、研究の重視と教育効果の説明責任の拡大などの高等教育を巡る情勢の変化が背景となっている。教員団を分断し、教育と研究の両立の理念を破壊する懸念もあるが、なし崩し的に進んでいるこれらの事態に対し、新たな教員像、大学像を模索するともに、研究としての教授・学習の学識(SoTL)の認知と人事考課への反映が急がれる。 This paper attempts to describe the actual conditions of institutional and substantial teaching-stream faculty (teaching-centered faculty members) in Canada and several advanced countries, and consider their backgrounds, characteristics and issues. Not only in Canada but also in some countries the system of teaching-stream faculty including a full-time faculty appointment and opportunities to promote to a professor has already been established, and their contributions have been highly evaluated by their colleagues while they have been so much satisfied with their positions. In some other countries the national policy relating to teaching-stream faculty has not been introduced yet, but the balance of teaching and research is separately adjusted according to an individual and a university. In the background they are similarly facing the drastic changes in higher education such as an increase in diverse enrollment and teaching burdens, a relative decrease in public research funds, more emphasis of research results, and gradual expansion of accountability of the teaching effects. Though those actions may raise a serious concern about resulting in the development of a two-tiered faculty environment and destruction of the traditional balance of teaching and research, a new concept of faculty and university must be pursued towards these inevitable shifts, and at the same time, especially in Japan, individual faculty evaluation should be revised as quickly as possible so that it may reflect on scholarship of teaching and learning as academic work.
著者
佐藤 枝里 渡邉 素子 北岡 智子 鈴木 雅子 谷口 洋子 和合 香織 和田 浩平 稲山 かおり 願興寺 礼子
出版者
中部大学, 大学企画室高等教育推進部
雑誌
中部大学教育研究 (ISSN:13497316)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-49, 2021-12

新型コロナウイルスの蔓延により、学生達の生活様式は大きな影響を受けた。大学生活が従来包摂してきたフェース・トゥ・フェースで対面することの豊かさ、直接性や身体性が有していた価値、身体移動に伴う距離や時間が封印されることとなった。これまで学生相談・学生支援は、対面相談を基本とした個人カウンセリングと予防的心理教育を行ってきたが、コロナ禍を機に、対面と遠隔のハイブリッドによる支援が必要とされるようになった。本論文では、パンデミック発生後18か月間の取組を主に予防的心理教育の視点から概観し、今後の学生支援の可能性と留意点について取り上げた。初年次科目の出前授業では、授業形態の切換えに関わる適応支援や学部・学科への帰属意識を高める工夫が望ましいこと、新入生アンケートは、宿泊研修中のウェブ実施が学生への迅速な支援につながること、心理教育的グループ活動については対象学生により開催方法を選択することが重要であることが考察された。
著者
葛 文綺
出版者
中部大学, 大学企画室高等教育推進部
雑誌
中部大学教育研究 (ISSN:13497316)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-11, 2021-12

新型コロナウイルスの流行によって人々の生活様式が大きく変わった。大学もその影響を受け、遠隔授業が導入され、教職員も学生も試行錯誤の日々を送っている。本稿ではこのような状況での教員と学生の関係構築について論じる。まず、大学でアカデミック・ハラスメントが起こりやすい背景、判断基準について述べる。また、それを踏まえたうえで、遠隔授業で起こりやすい3つの問題、1)オンライン授業時のカメラオンとオフの問題2)教職員と学生の連絡におけるすれ違いの問題3)人間関係の距離感の問題を取り上げ、その対応について説明する。ハラスメントにならない効果的な指導方法については、褒めて育てることと叱ることを取り上げ、具体的な褒め方と叱り方について解説する。そして、タイプ別のコミュニケーションについては、4つのタイプの強みと弱みを踏まえ、架空事例を用いてそれぞれのタイプの学生への対応について詳しく述べる。最後にストレスマネジメントの方法について紹介する。