著者
白神 聖也
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.77-84, 2005-03-31

スーパーサイエンスハイスクールに指定され2年目の今年度は,大学等の研究者に講演をしていただく「入門プログラム」と大学の研究施設で実験・実習を行う「体験プログラム」を随時行った。「入門プログラム」の生物分野の内容は,鳥類の発生,ES細胞からの血小板の産生,菌類の二次菌糸での核の分配である。「体験プログラム」では夏休みに遺伝子組換え実験,海洋生物学実験を実施した。その中で生徒は先端科学に触れて興味・関心をもち,自然科学者を志す者もでてきた。入門プログラムよりも体験プログラムの方が直接体験ができるという点で生徒の評判はよかった。一方で特に入門プログラムにおいて,学校での学習進度の関係や理科の選択科目の関係で,難解な内容についていけない生徒も出てきている。今後の課題は,研究者と高校理科教師が連携を緊密にして打ち合わせを行い,高校での事前学習に十分時間をかけることである。また,今年度から高校2年生にSSクラスを設置し,数理系の能力を伸ばすカリキュラム編成をした。学校設定科目として生物分野では基礎生命科学をおいた。このクラスでは理科を3科目選択できることになる。基礎生命科学はヒトを中心とした内容にしたことと遺伝子について深く学習できるようにしたことに特徴がある。また,これとは別に1単位で課題研究を行わせているが,生物分野は生徒17人5グループに対し教師が1人しかおらず指導が困難な場合があるのでTA1人を確保した。週1時間ではなかなか研究が進まない実態があるので3年次は週2時間(2時間連続)にすることを考えている。
著者
阿部 哲久
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.62, pp.3-10, 2016-03-31

政治的教養の育成をめざした授業の開発と実践研究を行った。授業はジョシュア・グリーンの理論に基づいて構成した。「トロッコ問題」などの思考実験によって実感を持って考えさせること,活動に加えて人間の道徳的判断や道徳的価値観についての知識を学ぶことで自分自身の道徳的判断を客観的にとらえさせることを意図した。実践の結果を分析したところ,政治的教養の基盤として目標に設定した「一つの見解が絶対的に正しく,他のものは誤りであると断定することは困難である」という見方を育成する上で効果があることが示唆された。
著者
沓脱 侑記 内海 良一 平松 敦史
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.67, pp.61-66, 2021-03-31

コロナ禍による全国一斉休校のなか,化学のオンライン授業の試みとして,授業動画の作成と配信を行った。本稿では対面授業とオンライン授業の違いを踏まえながら,オンデマンド型教材の開発過程や視聴した生徒の反応などについてまとめ,化学におけるオンライン授業のあり方について考察したい。
著者
三根 直美
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.63, pp.126-112, 2017-03-31

和歌は古典文学作品のほとんどにでてくるが、その学習目標はシラバスに明確に記載されていない。加えて、生徒にとって和歌を理解し鑑賞することは難しい。その理由の一つは、和歌はわずか三十一文字で構成されており、和歌に含まれる情報は十分とは言えないからである。また、和歌のメッセージは様々な修辞技法によって表現されているのも理由の一つである。本研究では、検定教科書の和歌を分析し、一つの指導アプローチが提案されている。具体的には、『伊勢物語』、『土佐日記』、『今物語』、『大和物語』、『源氏物語』、『無名抄』、『蜻蛉日記』、『紫式部日記』に含まれる和歌を①和歌のテーマ、②和歌の読み手と受け取り手の人間関係、③修辞技法の観点から分析した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)和歌のテーマは多岐にわたっている、(2)和歌は様々な形式で詠まれている、(3)多様な修辞技法が用いられている。数多くの種類と形式の歌が教科書では扱われているため、生徒の理解を促すために、授業者は和歌の指導の際には明確な目標を設定する必要がある。加えて授業者は和歌を系統的にかつ段階的に提示して、授業をしていく必要があろう。