著者
三根 直美
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.63, pp.126-112, 2017-03-31

和歌は古典文学作品のほとんどにでてくるが、その学習目標はシラバスに明確に記載されていない。加えて、生徒にとって和歌を理解し鑑賞することは難しい。その理由の一つは、和歌はわずか三十一文字で構成されており、和歌に含まれる情報は十分とは言えないからである。また、和歌のメッセージは様々な修辞技法によって表現されているのも理由の一つである。本研究では、検定教科書の和歌を分析し、一つの指導アプローチが提案されている。具体的には、『伊勢物語』、『土佐日記』、『今物語』、『大和物語』、『源氏物語』、『無名抄』、『蜻蛉日記』、『紫式部日記』に含まれる和歌を①和歌のテーマ、②和歌の読み手と受け取り手の人間関係、③修辞技法の観点から分析した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)和歌のテーマは多岐にわたっている、(2)和歌は様々な形式で詠まれている、(3)多様な修辞技法が用いられている。数多くの種類と形式の歌が教科書では扱われているため、生徒の理解を促すために、授業者は和歌の指導の際には明確な目標を設定する必要がある。加えて授業者は和歌を系統的にかつ段階的に提示して、授業をしていく必要があろう。
著者
吉田 裕久 山元 隆春 朝倉 孝之 岡本 惠子 黒瀬 直美 新治 功 西原 利典 増田 知子 三根 直美 宮本 浩治
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.38, pp.111-117, 2009

本研究は高等学校の国語基本教材「羅生門」において, どのような読みの学力を育成することができるか, それを授業を通して明らかにすることを目的としている。方法として以下の3点を設定した。①初読における生徒の読解力の状況を調査する。②学習後, 生徒の読みがどう変化したか, 検討する。③どのような授業アプローチにより, 読解力が身につけられたのか, さらに基本教材においてどんな学力を身につけていくことが可能なのか検討する。そして授業実践として, 方法・形態の異なる3つの授業を設定した。1は, 「境界の物語として読む」ことを明示した上で, プレテクスト『今昔物語集』とテクスト「羅生門」の位置づけから, コードや象徴を読み解く方法である。2は, 「認識主体の育成をめざした」授業で, 「何が問題なのか」を発見する授業である。3は, グループ学習で, 「下人の行方を考える」学習課題を設定し, テクストから検証する方法である。これらの実践は, 「要点駆動の読み」を生み出すことをめざしたものともいえる。常に叙述を吟味しながら, 小説を読むことを探求していきたい。