著者
金本 宣保
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.185-190, 2005-03-22

「高校生の小説の読み方は変わったか。」という問があり、「そう変わっていないのではないか。」という思いもあり、確かめたいという課題意識があった。2004年度高等学校2年生で、夏目漱石「こころ」を教材とした授業をし、作文「『こころ』について」を書かせた。1986年度の高等学校2年の「こころ」の授業の記録の作文と比べたが、大筋は変わっていない。2001年度の当校の江口修司教官の高等学校2年生での「こころ」を教材とした授業をしたときの学習者の作文と比べてみても、変わっていないものがある。「こころ」の授業では、かってと今との作品の受けとめ方はそう違っていないことを、学習者の作文によって確認した。
著者
大江 和彦
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.67-72, 2000-03-18

学習指導要領の改変に伴う授業時間数減少の中で, 教材の内容精選を効果的・合理的に行うことは, 地歴科だけではなく, どの教科においても課題であるといえる。この課題を克服するためには, 新たな視点からの教材開発が必要と考える。現代社会に生き, 未来を創造してゆく生徒に, 画一的でない, 柔軟性のある思考を可能にさせる授業づくりを課題とし, 日本歴史の既成的時代区分の批判的吟味を通じて, 日本史A前近代史における主題的学習の分野に絞り, 海の時代的役割からみた東アジア交流史の教材構成案を, 1つの視点として提示したい。
著者
白神 聖也
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.77-84, 2005-03-31

スーパーサイエンスハイスクールに指定され2年目の今年度は,大学等の研究者に講演をしていただく「入門プログラム」と大学の研究施設で実験・実習を行う「体験プログラム」を随時行った。「入門プログラム」の生物分野の内容は,鳥類の発生,ES細胞からの血小板の産生,菌類の二次菌糸での核の分配である。「体験プログラム」では夏休みに遺伝子組換え実験,海洋生物学実験を実施した。その中で生徒は先端科学に触れて興味・関心をもち,自然科学者を志す者もでてきた。入門プログラムよりも体験プログラムの方が直接体験ができるという点で生徒の評判はよかった。一方で特に入門プログラムにおいて,学校での学習進度の関係や理科の選択科目の関係で,難解な内容についていけない生徒も出てきている。今後の課題は,研究者と高校理科教師が連携を緊密にして打ち合わせを行い,高校での事前学習に十分時間をかけることである。また,今年度から高校2年生にSSクラスを設置し,数理系の能力を伸ばすカリキュラム編成をした。学校設定科目として生物分野では基礎生命科学をおいた。このクラスでは理科を3科目選択できることになる。基礎生命科学はヒトを中心とした内容にしたことと遺伝子について深く学習できるようにしたことに特徴がある。また,これとは別に1単位で課題研究を行わせているが,生物分野は生徒17人5グループに対し教師が1人しかおらず指導が困難な場合があるのでTA1人を確保した。週1時間ではなかなか研究が進まない実態があるので3年次は週2時間(2時間連続)にすることを考えている。
著者
阿部 哲久
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.62, pp.3-10, 2016-03-31

政治的教養の育成をめざした授業の開発と実践研究を行った。授業はジョシュア・グリーンの理論に基づいて構成した。「トロッコ問題」などの思考実験によって実感を持って考えさせること,活動に加えて人間の道徳的判断や道徳的価値観についての知識を学ぶことで自分自身の道徳的判断を客観的にとらえさせることを意図した。実践の結果を分析したところ,政治的教養の基盤として目標に設定した「一つの見解が絶対的に正しく,他のものは誤りであると断定することは困難である」という見方を育成する上で効果があることが示唆された。
著者
沓脱 侑記 内海 良一 平松 敦史
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.67, pp.61-66, 2021-03-31

コロナ禍による全国一斉休校のなか,化学のオンライン授業の試みとして,授業動画の作成と配信を行った。本稿では対面授業とオンライン授業の違いを踏まえながら,オンデマンド型教材の開発過程や視聴した生徒の反応などについてまとめ,化学におけるオンライン授業のあり方について考察したい。
著者
三根 直美
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.63, pp.126-112, 2017-03-31

和歌は古典文学作品のほとんどにでてくるが、その学習目標はシラバスに明確に記載されていない。加えて、生徒にとって和歌を理解し鑑賞することは難しい。その理由の一つは、和歌はわずか三十一文字で構成されており、和歌に含まれる情報は十分とは言えないからである。また、和歌のメッセージは様々な修辞技法によって表現されているのも理由の一つである。本研究では、検定教科書の和歌を分析し、一つの指導アプローチが提案されている。具体的には、『伊勢物語』、『土佐日記』、『今物語』、『大和物語』、『源氏物語』、『無名抄』、『蜻蛉日記』、『紫式部日記』に含まれる和歌を①和歌のテーマ、②和歌の読み手と受け取り手の人間関係、③修辞技法の観点から分析した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)和歌のテーマは多岐にわたっている、(2)和歌は様々な形式で詠まれている、(3)多様な修辞技法が用いられている。数多くの種類と形式の歌が教科書では扱われているため、生徒の理解を促すために、授業者は和歌の指導の際には明確な目標を設定する必要がある。加えて授業者は和歌を系統的にかつ段階的に提示して、授業をしていく必要があろう。
著者
岩永 健司
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.89-98, 1993-03-10

本稿は,社会科「歴史的分野」での「課題学習」は現在または未来を志向し,知識内容を目的ではなく手段ととらえることによりその設定の趣旨に応ずることができる,との仮説に基づく実践からの考察である。この仮説から「歴史的分野」において「国際社会と日本-イギリス産業革命と現代社会-」というテーマで実践を行った。生徒の発表を中心としながら行ったその実践の根拠,実際,ならびに結果に基づきながら社会科「課題学習」について考察した。
著者
多賀 徹哉
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.105-112, 1994-03-10

英語教科書は英語教育では中心的な役割を果たしてきた。幕末期においては英語学習は蘭学同様に即,西洋の知識や技術を取り入れる手段につながった。また,明治時代に英語教育が学校教育に取り入れられると,英語教科書が唯一の教材であり,これなくしては英語の授業は成り立たなかったと極論できそうな状況であった。従って当時の英語教科書の内容を研究することで英語教育の実態を探ることができるし,教科書の扱い方からは日本の英語授業のあり方を映しだす鏡を得ることになろう。日本の英語教育は明治初期から,訳読式のやり方が大勢であった。従って,1921年(大正12)のパーマーの来日と彼の活動による英語教育に対する意識の高まりはエポックメイキングな出来事であった。しかし,パーマー以前から英語教育界の中では,訳読式授業の弊害が批判され,音声重視の授業の提唱がなされていたのである。極めて大ざっぱな言い方になるけれども,パーマーほど整理されてはいないし,パーマーの時期ほど実践されてはいなかったが,パーマーの提唱の先覚者たちが確実に存在したのであった。そして,外山正一もまたその一人であったのである。彼の著書でもあり,先覚的な教授法を提唱した『英語教授法』の内容分析,そして,彼が編集に加わった『正則文部省英語讀本』の分析,『英語教授法』の主旨がどのように反映されているかの研究が,今後の英語教科書,英語教授法の指針のひとつとなり得るかもしれない。
著者
藤本 隆弘 房前 浩二 岡本 昌規 三宅 幸信 高田 光代 合田 大輔 石口 雄二 小川 智恵子
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.237-247, 2005-03-22

当校では1982年より「生涯体育に視点をおいた授業実践」に取り組んできた。「体育の学び方を学ばせ, 体育・スポーツの生活化」を目指し, 「自ら学び, 自ら考え」, 自己を成長させていく「自己教育力」の育成をねらいとして実践してきた。今回の授業では, ソフトテニスを「ロビングからはじめる」ことによって, ボールの落下点の予測や移動するフットワーク, 打球のための体のさばきなどが身につきやすいのではないか, また, サービス・サービスレシーブやボレー・スマッシュなどの技能の習得に役立つのではないか, 狙ったところにロビングで返せることは戦術を考えることにつながるのではないか, と仮説を立て実施した。「ラリーの続く」楽しさに, 生徒たちが意欲的に, 考え, 工夫し, 技能の習得につとめ, ゲームの中でも工夫することができる授業になったと思う。
著者
千菊 基司 多賀 徹哉 幸 建志
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.137-142, 1998-03-24

教育実習の最大の目的は,「授業を成立させる力」をつけることにあろうが,この力については教授が容易な技術と,そうでない技術に分けられると考えてよいであろう。特に後者は授業を通じて獲得されるものであるが,実習生の人数と教官の持ち時間の関係で限られた時間しか実際に授業の経験ができない。この点を克服するために,実習生全体に,(1)ビデオで録画した授業を媒介にした授業観察の指導とその後の指導案を考える演習,(2)指導案通りに進まない時の対処法についての講義,(3)発問の分類や発問を考え出す演習等を行った。初めての試みであったが参加した実習生には好評で,異なる学年を教える実習生がグループの枠を越えて多様な意見を交換することで,多くを学んだようである。本稿はその実践報告と,指導教官や実習生からのフィードバック等から得られた今後の課題からなる。
著者
清水 浩士
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.97-110, 1996-03-11

図書事務のコンピュータ化は数年来の希望であったが,校内LANが設置されることに伴い,93年9月より図書室委員会において検討が始まった。コンピュータ導入の意義,現状の図書館業務の分析,コンピューター化にあたっての要件設定等が検討されハードウェアとソフトウェアを定めた。94年度は夏休みを中心に図書館内の図書にバーコードを貼り,95年度の夏休みには残りの図書にバーコードを貼る作業が完了した。コンピュータ設備は年々拡張され,図書館内に貸し出し返却用端末が1台,図書事務室にサーバー1台と業務用端末が1台稼働している。また,その図書館システムが校内LANの一部を構成し,校内各所から図書館システムにアクセスが可能になっている。現在,校内各所から分担して蔵書をコンピュータに登録する作業がおこなわれており,図書の貸し出し,返却業務は95年度2学期から仮運用を開始した。
著者
入川 義克
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.41-48, 1995-03-10

夏休み・冬休みには,まとまった量の問題を解くという課題が多かった。また,授業を振り返ってみても,クラスという学習集団を対象として,数学的な知識・技能を伝達し,解法の過程をあらかじめ予想して進める形態の授業が多かった。限られた時間内で教えなければならない現状を考えれば,このような進め方も必要である。しかし,授業の展開の仕方にもよるが,このような進め方だけでは,多くの生徒にとって受け身の授業になってしまう。生徒の多様な考え方を引き出したり,数学的な考え方や数学に対する興味・関心を高め,生徒が学習の主体者として意欲的に課題に取り組んでいく課題や授業を計画的に取り入れていけば,私達が期待する以上の効果を上げることができる。
著者
甲斐 章義
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.231-235, 2005-03-22

広島大学理学部・大学院理学研究科では, 毎年11月初旬の広島大学祭の時期に「理学部・理学研究科公開」が行われている。その一環として, 次世代を担う中高生に「理学」への関心をさらに深めてもらう機会として, 「中学生・高校生による科学シンポジウム」が企画されており, 今年度で7回目を迎えた。ここでは, 自然科学 (数学を含む) に関する日頃の研究活動の成果を, グループあるいは個人で発表する場が設けられており, 多くの学校から熱心な取り組みが毎年発表されている。今年は11月6日 (土) に理学部E002講義室にて開催され, 全部で7校から18件の発表が行われた。その年の研究発表の件数にもよるが, 1つの発表につき, だいたい10分くらいの時間で発表が行われ, その後2〜3分くらいの質疑応答がある。我が校は4年前からこのシンポジウムに毎年参加しており, 2001年度は数学の発表が1件と理科の発表が1件, 2002年度は数学が2件と理科が1件, 2003度は数学が3件, そして今年度は数学が2件, 理科が1件の発表を行った。これらの発表のうち, 数学の取り組みについてごく簡単にではあるが報告したい。
著者
小林 京子 高橋 美与子
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.39-46, 1999-03-19

今日の食生活は, 食材・調理手法共に国際色豊かになると共に, 「食」の社会化も高まっている。また, 一方家族形態の多様化, 個人の生活重視あるいは家庭事情等によって, 家族揃っての食事回数は少ない。従って「食」を通しての家族の絆は希薄化し, 家庭の味や伝統的な食文化の継承・伝授は困難である。本研究では, 高校生及び高齢者が食文化の継承・伝授について, また今日の食生活の状況や望ましい食生活をどのように考えているのか意識調査し, 多くの高校生や高齢者は食文化の継承・伝授の大切さ・意義を認識しながらも生活時間のずれや食嗜好の差から家族揃っての食事ができていないことが伺えた。そこで, 高齢者と共に伝統的なお菓子作りを授業実践してみた。大半の生徒が交流体験を通して生活の知恵等多々学び, 意義深かったと述べている。今後はこのような体験機会をいかに設定していくかが課題となる。
著者
小林 京子 高橋 美与子
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.111-118, 2002-03-18

「食」の果たす役割は,健康な体の維持,成長発育の増進,活力の源のみならず,人と人とのつながりを深め心の豊かさを育むなど,心身両面の健全な発達に深く関わっている。しかし,今日は,生活諸般で利便性を求め,食生活も例外ではない。社会情勢の変化,家族形態の多様化等も相伴って,食生活の社会化・多様化・味の画一化が進んでいる。こうした食生活が一要因となり,「食」に関わる諸問題が生じ,「食育」の必要性が警鐘されている。成長期であると共に,食習慣・価値観の形成期でもある青少年が,栄養や食品に関する基礎的知識,調理の基礎的技術,バランスのとれた食事の整え方,会食の楽しさ,食事のマナー等の一連の学習をする中で,夏休みの課題として,家族の協力を得ながら食事作りに取り組む課題を課した。本研究は,この体験学習から学んでいる成果の一端を述べる。
著者
金本 宣保
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.63-70, 1993-03-10

大岡信「言葉の力」を教材として,高等学校に入学して最初の国語の授業をした。はじめに,教材の文章を読まないで,「言葉とは」どういうものだと考えているが作文を書かせ,授業で文章を読解して,はじめの各自の作文を読みなおさせ,教材の文章から学んだことを作文に書かせた。学習したことを自己で確認することが自然にできた。吉野弘の講演で,子供の詩で多くのものが「鳥になって空をとびたい」と書くという話をきき,何を生徒の作文に求めているのかを改めて問い考えた。作文を書かせる授業は,文学作品の創作をめざしているのではなく,学習の一場面であり,教室という場で指導の問いや教材の文章を考えて表現することをめざしている。-というのが一応の結論である。