著者
山本 千紗子
出版者
上武大学看護学部
雑誌
上武大学看護学部紀要 (ISSN:1880747X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-25, 2009-12-28

乳幼児にたくさん話しかけること・褒めることの大切さを裏付けるエビデンスを求めて、米国立医学図書館提供のデータベースMEDLINEに収録されている先行研究を中心に文献を探索した。その結果、できるだけ早期に多くの言葉をかけることが重要であり、音楽的な抑揚やピッチの明白なマザリーズと呼ばれる、母親特有の抑揚の大きな子ども向けの話し方は言語発達上意味がある。特に乳児の顔の間近で、発音に伴う口の形が見える「目に見える言葉」が言語習得に大きな役割を果たしている。子ども向けの話し方であれば、男性でも違いはない。"no" "don't" "stop it" などの否定語は、子どもの行動を抑止するだけでなく、その後の言語発達や学業成績にも影響し、肯定的な言葉を積極的にたくさんかけることは知能の発達を促し、言語習得以上の効果がある。33ヶ月以上児において「勝つこと」は課題達成において喜びを大きくし、嬉しいときに実験者や母親の肯定的で賛同的な反応を求める行動をとることが示され、褒めることは子どもの積極的な行動を促進することが明らかにされている。大人では、褒められることに等しい、社会的に高い評価を獲得したとき、勝負に勝って金銭的報償を得たときに活性化するのと同じ報償系の脳が反応することがfMRI(functional magnetic resonance imaging:機能的磁気共鳴映像法) によって確認されており、人をのばす教育への応用が示唆されている。医療・看護の領域と同様に、先行研究の知見を子育てに活用した科学的エビデンス(根拠)に基づいた子育て(EBC;Evidence-based Child-rearing)は、子育て支援の一方法として活用が期待される。
著者
村上 弘之
出版者
上武大学
雑誌
上武大学看護学部紀要 (ISSN:1880747X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-14, 2007-09

近年,麻疹や風疹などの小児ウイルス感染症や結核などの集団感染事例が高校・大学等の教育機関だけでなく,医療機関では院内感染として問題になっている.臨地実習が看護教育上欠かすことができない看護学生は,臨地実習施設が病院だけでなく地域施設などにも及ぶことから何らかの感染を受ける危険が高い.また,患者に感染させる危険も高い.現在の看護学生が属する10歳代後半から20歳代若年者集団には,小児ウイルス感染症や結核などに対する感受性が高い者が多く含まれている.これまで,医学や看護を学ぶ学生にはB型肝炎感染予防対策が中心であり,空気感染や飛沫感染によって伝播するウイルス感染症や結核に関する対策は少なかった.看護学生の属する若年者の感染症に対する感受性を考慮し,臨地実習では学生の安全だけでなく患者の安全を厳守するという医療安全,学校内では集団感染発生に対する危機管理上必要な対策が求められている.
著者
堀込 由紀
出版者
上武大学
雑誌
上武大学看護学部紀要 (ISSN:1880747X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-18, 2011-12-28

医療安全に関連したシステム・機器等のICT関連機器を中心とした医療安全上の問題を把握することを目的とし、具体的には「患者認証システム」「転倒転落防止機器」「インシデント報告システム」の3項目の効果と課題について、関東広域圏の500床以上の医療施設で、アンケート調査の協力を得た28施設の医療安全管理者に紙面での調査を行った。 その結果、「患者認証システム」は、8割の施設が導入しており、バーコード認証が主流で、導入している施設すべてが輸液輸血投与時に利用していた。導入効果は、間違い未然防止、誤認インシデント報告の減少が、課題は、機器の不足や操作性等の業務負荷によりシステムの認証を利用しない傾向がみられることであった。「転倒転落防止機器」では、対象施設の総所有数が総ベッド数に対して8%という実態が明らかになった。医療安全管理者の満足度も低く、病床数が多い施設ほど現状に対して不満足である傾向がみられた。効果としては、迅速な危険感知が挙げられ、課題としては、機種の選択の難しさ、機器の不足が認められた。「インシデント報告システム」は、8割の施設が導入していた。集計機能、インタラクティブ性など実装機能が向上しているが、職員間での報告格差の問題は是正されていない現状が認められた。 本調査においてICTの活用における医療安全という視点からの現状が把握され、投薬認証を含めた患者認証システムの拡充、転倒転落機器の充足や効果的な管理、基礎教育における医療安全教育充実及び医療安全管理者への主に医療安全教育に対する支援の必要性が示唆された。
著者
中下 富子 伊藤 まゆみ 星野 泰栄 宮崎 有紀子 佐光 恵子 大野 絢子
出版者
上武大学
雑誌
上武大学看護学部紀要 (ISSN:1880747X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-33, 2006-03-10

現在訪問看護職が提供している在宅看護技術について実施頻度と難易度を明らかにし、今後の在宅看護・介護技術研修プログラム再構築の資料とすることを目的とした.対象は、G県内訪問看護ステーションの施設代表者及び訪問看護職とした.結果、在宅看護技術実施頻度の高位は、清潔、バイタルサイン、日常生活動作の基本的な看護技術とされる項目であった.在宅看護技術難易度の高位は、ターミナル状態や認知の問題へのケアといった精神的ケアの要求される項目及び医療処置といった技術性の高い項目であった.また、訪問看護経験年数と実施頻度との正の相関が大分類11ケア項目にみられ、経験年数が増すほど、ケアの実施頻度も増す傾向が認められた.実施頻度と難易度との負の相関がバイタルサインズ・問題兆候やターミナル状態のケア、医療処置にみられ、実施頻度の高い項目ほど難易度を低く評価している傾向が認められた.