著者
張 星源 優 克剛
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
北東アジア経済研究 (ISSN:18808476)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.69-89, 2004

本論文はNBERがまとまったアメリカUSPTOの特許間引用データベースを用いて、韓国、台湾、シンガポール、中国、マレーシアそしてタイという東アジア六ヶ国・地域における特許間引用と特許出願についての現状を分析したものである。主に、次のような結果を得た。(1)特許の出願と特許間引用について、この六ヶ国・地域ともに量的に急速に上昇しており、韓国と台湾の方ははるかに他の4ヶ国を上回っている。(2)質的には、特許の出願と特許間引用において、韓国と台湾そしてシンガポールはともにIT情報技術及びコンピューター産業に集中している。(3)特許間引用の結果から同産業内での技術普及が見られている。(4)この6ヶ国・地域の特許出願に関するハーフィンダール指数は日本及び欧米よりはるかに大きくなっている。
著者
田口 雅弘
出版者
岡山大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
北東アジア経済研究 (ISSN:18808476)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.45-58, 2007

本稿は、EU東部地域の経済格差の現状をEU中心部との比較、また国内における県別の比較を行い、その構造を明らかにするものである。1997年 7月に欧州委員会は「アジェンダ2000」を発表した。これによって、ポーランドを含む旧東欧 5カ国およびキプロスの先行加盟が準備され始める。こうした動きに並行して、コソヴォ紛争の深刻化などに伴い、EUは「拡大によるEUの安定化」志向を強めることとなる。最終的には、2004年に10ヵ国、2007年に 2ヵ国が新規に加盟した。EU東方拡大は、全般的にはEUの政治的・経済的安定化に貢献したが、しかしながら、地域経済圏拡大はかならずしもクロスボーダーリージョンの安定化につながっているわけではない。むしろ、EU拡大によって生じた摩擦や対立もある。それは、現在EU内で急速に拡大志向の議論が萎み、「拡大」よりは「深化」に重点を置く議論が中心になりつつあることにも表れている。もちろん、その背景には、「拡大」が経済圏・文明圏として重要な地域をほぼ包括しつつあること、EU周辺の政治的混乱が収まりつつあることなどがあるだろう。しかしその一方で、拡大によって逆に多様性=不安定要素を取り込んでしまい、その対応に多くの労力と資金がつぎ込まれて、拡大のメリットが十分に享受できないという「拡大疲れ」を伴った不満もある。本稿では、経済格差、経済発達の遅れがどの程度のレベルにあるかを、ポーランドを中心に統計的に整理し、その構造を明らかにすることによって、クロスボーダーリージョン安定化を考える上でのひとつの材料としたい。
著者
Nakamura Ryohei Recky H. E. Sendouw
出版者
岡山大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
北東アジア経済研究 (ISSN:18808476)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.17-44, 2009-03-26

This study is conducted in order to examine the inter-provincial per capita GRP (Gross Regional Product) disparities in Indonesia under the NEG (New Economic Geography) framework. The coefficient of variation shows that the disparities are decreasing in the periodof 1993-1997 and increasing in the period of 1998-2004. On the basis of the disparities trends, those two different periods are examined in our analysis. By utilizing wage equation which developed by Fujita, et al.(1999)we make use of panel data analysis in estimating the role of domestic market access, foreign market access, urbanization and human capital on interprovincial per capita GRP. The findings suggest that domestic market access, foreign marketaccess and human capital play important roles on inter-provincial per capita GRP disparities, while urbanization shows reverse role because of excess of urban labor.
著者
張 星源
出版者
岡山大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
北東アジア経済研究 (ISSN:18808476)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-16, 2009-03-26

本稿では、アメリカUSPTOに登録された各国の特許情報に基づき、日本を始め、アメリカ、ヨーロッパおよびアジア諸国・地域における情報技術に関連するイノベーションの国際比較を行った。得られた結果は以下のように要約できる。特許の登録件数では、アメリカ、日本、EU15カ国の順に多いが、最近では、アジア各国の成長が著しい。また、フィンランドやアイランドのような情報化先進国とともに、日本や韓国のICT特許の特化係数が最も高いことが分かる。特許一件当たりの引用回数により特許の質をみると、アメリカの被引用件数が最も多く、日本とEU がこれに次ぎ、アジア諸国の引用される回数は少ない。技術スピルオーバーについては、アメリカとアジアは、他国よりイノベーションの成果を吸収しているのに対し、日本とEUは逆に他国にイノベーション成果を流出させているといえる。