著者
大久保 理恵 坂野 永理 内丸 裕佳子
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-9, 2012-12

岡山大学の日本語コースでは,各レベルの到達度の目安として,CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の到達レベルを取り入れることを検討課題としている。本稿では,ヨーロッパの高等教育におけるCEFR 導入の背景を述べ,ベルギー,ドイツ,ハンガリーの三大学におけるCEFR導入状況の調査結果を報告する。調査により,各大学によりCEFRの取り入れ方は様々であることがわかった。しかしながら,どの大学においても,CEFR がきっかけとなり,日本語コース,教員,学生に変革が起こり,その変革が授業やカリキュラムの向上につながっていることが明らかになった。
著者
野呂 康
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.8, pp.163-178, 2012-12

「モデル小説」と呼ばれる文学概念の効用と限界を、19世紀末にフランスで出版された小説『チュチュ』(プランセス・サッフォー著)の分析を通して明らかにする。『チュチュ』なる小説は未邦訳であることもあり、その出版経緯と内容紹介も合わせて記す。
著者
陳 南澤
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.8, pp.143-150, 2012-12

本稿では開化期の韓国語学習書である『日韓通話捷径J (1903)におけるハングルと仮名表記から、当時の韓国語の音声・音韻論的特徴を概観する。r日韓通話捷径』はソウlレ方言を反映しており、韓国の開化期の教科書や新聞のような文語中心の文献にはあまり現われない当時のソウル方言の文語の特徴をよく示している。本書の仮名音注は音声転写の性格が強仁20世紀初めの韓国語の音韻論的特徴をよく表しており、本稿では、本書の仮名音注を通して当時の韓国語母音の音声的な特徴を概観する。なお、本書の語棄は現代韓国語の形成過程を明らかにするのに役立つと考えられる。今後、明治期と日本植民地期の他の文献を総合的に考察することで現代韓国語の形成過程をより明らかにできると期待きれる。
著者
坂野 永理 大久保 理恵
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.8, pp.179-190, 2012-12

本稿ではCEFR のスイス版自己評価チェックリストを使い, 岡山大学の日本語コース受講者86名を対象に,学期開始後から終了前の約3か月の期間で自己の日本語力の変化を感じているかどうか,またその変化はどの言語領域において現れるのかを調査した。調査の結果,初級,中級,中上級の全てのレベルにおいて,学生の自己評価の平均値が学期開始後より終了前の方が有意に高いという結果が現れた。また,各レベルの全ての領域で終了前の方が開始時より自己評価の平均値が有意に高く,全ての項目で終了前のほうが開始時より平均値が高いという結果となった。本調査により,受講生は学期終了時には自己の日本語力をより肯定的に評価するようになったことが明らかになった。
著者
内丸 裕佳子
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.8, pp.61-72, 2012-12

本稿は,アンケート調査を通じて高等教育機関で学ぶ学習者の中級レベルに対する学習ニーズを明らかにすることを目的とする。アンケート調査結果は4点にまとめられる。(1)教科書の説明および内容:初級に比べ評価が低くなる。母語による解説が望まれている。(2)学習項目:アカデミックな日本語,日常生活での日本語の両方に対するニーズがある。会話学習への要望が最も多く,次いで文法・文型,語彙が同数だった。(3)教え方に対する要望:①既習表現と比較しながら説明する。②文型・表現は共通する意味・用法でまとめて効率的に教える。③文型・語彙の硬さ・柔らかさの区別を示す。(4)教室活動に対する要望:短い会話練習,作文,ゲーム要素を取り入れた練習も増やす。
著者
矢野 正昭
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.9, pp.51-60, 2013-12

オレゴン州はアメリカ合衆国本土太平洋岸の3つの州のうち中間に位置する州である。日本との経済的な結びつきも強く、仕事や観光あるいは留学といった目的で同州を訪れる人は多い。目的がそのいずれであっても、オレゴン州についてある程度の予備知識を持って現地入りした方が、そうでない場合と比べ、より実り多い結果を期待できるであろう。しかし日本では、アメリカ合衆国に関する情報は大量に流通しているようにみえるが、個々の州や地方に関する情報、ことに日本語で書かれたものとなると意外に限定される。その空白を埋める試みとして、オレゴン州の地理・歴史、政治・経済、社会・文化などについて、公的機関やメディアの情報と独自取材をもとに概要を紹介する。(その2)
著者
上田 和弘
出版者
岡山大学グローバル・パートナーズ, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 = Bulletin of higher education, Okayama University (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.10, pp.15-34, 2014-12

ある時代のある特定の時期に書かれ発表されたさまざまな文学テクストをながめたばあい、ときにジャンルさえ越えて、そこに流行語のようにいくつかのある特徴的な語や表現が時を同じくして出現してくることがある。それはもちろん作家(詩人)から作家(詩人)へのなんらかの影響関係がそこにあったからだとまずは考えられよう。しかしこれは必ずしもたんに一方から他方への単方向的な影響というのではなく、作家(詩人)たちのあいだで、いくつかの条件があわさって、ほとんど同時発生的にある共通ないし類似の語や表現が生まれたり用いられたりすることもあったのではないか、また、あくまで個々の作品から遡及的にしか見いだされぬとしても、そうした共通ないし類似の語や表現を生みだすことを可能にした、ある時代のある特定の時期に成立していたと想定される表現可能態の言語空間がそこに潜在していたのではないか――本稿は、その空間をピエール・ブルデューの用語を借りて「文学場」の名で呼んで、20 世紀初頭における日本の近代詩と19 世紀中葉におけるフランスの近代詩をそうした「文学場」という観点からとらえなおす試みである。
著者
岡 益巳 安藤 佐和子
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-16, 2013-12

留学生支援ボランティア・WAWA は1994年に設立され、2002年には留学生センターの公認団体となり、2009年には念願の独立した活動拠点を手に入れた。WAWA 設立20年の節目に当たって、これまでのWAWA の活動の歴史を振り返ってみたい。(1)新入留学生の受入れ支援、(2)チュートリアル・サービス、(3)留学生家族のための日本語教室、(4)異文化交流イベントがWAWA の活動の4本柱であるが、学内外の環境変化の影響を受けて(1)は中止に、(2)は大幅縮小という状況に陥っている。また、ボランティア学生の気質の変化の影響により(3)も縮小せざるを得ず、(4)に関しては企画・運営力の低下が懸念される。こうした現状を踏まえ、設立21年目を迎えようとするWAWA のあり方について提言したい。