著者
松並 知子
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.52-57, 2020-03-25 (Released:2021-02-09)
参考文献数
22
被引用文献数
1

「恋人とは一心同体であり、恋人は自分のものだから自分の好きなように支配しても良いし、束縛は愛の証である」と感じるような依存的恋愛観は、現代の若者に多く見られ、デートDVの要因とされている。また自分らしくあるという感覚である「本来感」や「仲間集団への依存傾向」は依存的恋愛観の心理的要因であると考えれる。そこで、依存的恋愛観と暴力観の関連、および、本来感と仲間集団への依存傾向と依存的恋愛観の関連を検討することが本研究の目的である。高校生839名を対象に質問紙調査を実施した結果、男女ともに、依存的恋愛観が強まると、恋人への暴力行為を「暴力」と認知しない傾向が示された。また女性の場合、低い本来感が仲間集団への依存に影響を与え、それが恋人への依存性にも関連している傾向が示された。一方、男性の場合は、本来感と依存的恋愛観に関連は見られず、仲間集団への依存のみが恋人への依存性に関連していた。 ジェンダー差については、依存的恋愛観は男性が有意に高く、仲間集団への依存は女性が有意に高かった。また暴力観では男性が女性よりも「暴力にあたる」と回答する傾向が強かった。 本研究では相手に依存しすぎない健全な恋愛観がデートDVの予防に関連することが示唆されたので、今回の結果をもとに、予防教育プログラムを開発することが今後の課題である。
著者
丸井 淑美
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.143-152, 2020-12-25 (Released:2021-02-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

[目的]性的少数者の小学校から高等学校または大学に至るまでの学校生活の実態を明らかにするとともに、その結果から得られた学校教育における課題について検討することを目的とする。[方法]20歳以上の性的少数者10名に半構造化面接によるインタビュー調査を実施し(2011)、インタビュー内容をSCAT(step for coding and theorization)を用いて分析した。[結果]女性同性愛者は、学校で自己開示できない寂しさを感じていて、同性愛を罪や恥、病気のようなものとして排除する気持ちを持っていた。男性同性愛者は、安心して自分のセクシュアリティを話せない学校環境であったため、異性愛を装い生活していた。性同一性障害に関する情報の不足や相談相手の不在により孤立し、不登校や自己破壊行為を行っている者もいた。[結論]異性愛中心主義の教育は、性的少数者の子供たちに少なからず負の影響を与えており、本研究においては女性同性愛、性同一性障害(性別違和)に共通の課題であることがわかった。 性同一性障害(性別違和)の子供たちは、家庭や学校生活の中で自分のセクシュアリティを隠しておくことが難しい状況に追い込まれ、やむを得ずカミングアウトをしていることがわかった。セクシュアリティに関する正しい情報を適切な時期に提供していれば、当事者であることの生きづらさは軽減していたはずであるとのストーリーラインが導き出されており、知識習得の遅れは重大な課題であることがわかった。
著者
鈴木 春花 朝倉 隆司
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-40, 2018

<p> 本研究は、性別意識に着目して、男性養護教諭の仕事の意識と体験の特徴を明らかにした。</p><p> 男性養護教諭4名を対象とし、約1時間程度の半構造化インタビューを実施した。分析は、テーマ分析の方法を参考に、共著者間で協議して進め、基本的問題意識とデータの読み込みから、5つのテーマを設定してカテゴリーを生成した。</p><p> 性別意識が現れたカテゴリーは、《養護教諭を目指した理由・動機》《養護教諭としての職業観》では、【男性でもなれるという思い】【専門性と性別は無関係】であるという認識のカテゴリーであった。男性の《養護教諭としての仕事上の体験》では【男性養護教諭に対するバリアへの挑戦】【少数派男性ゆえの孤独感と存在価値】【中年期の男性養護教諭イメージの不確定さからくる不安と期待】【子供が持つ羞恥心への理解】【セクハラの危険性の認知と予防策】【性別を超えた対人職の倫理】と特徴的なカテゴリーを見出した。《うまく働ける要因》では、【学校のニーズ】【男女の複数配置】【普通と思う受け入れ姿勢】という職場の条件、【本人のポジティブな性格】という本人の要因を見出した。《男性養護教諭の存在意義》に関しても、【子供に養護教諭の選択肢を与えることができる】【キャリア教育の一翼を担う】【これまでの当たり前を問い直すことができる】【多様なニーズへの対応ができる】のように、男性養護教諭の立場から養護教諭のあり方を問い直すカテゴリーを見出した。</p>
著者
杉崎 海 朝倉 隆司
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.145-157, 2013-04-30 (Released:2021-07-07)
参考文献数
16

本研究の目的は、養護教諭が保健室という空間をどのように構築しているのか、そのプロセスを説明し、そのプロセスに潜在化している経験則や養護教諭の共通した配慮を明らかにすることである。そのために、われわれは養護教諭の保健室観を検討し、それが保健室の機能や空間整備とどのように関連しているのかを検討した。 対象者は、東京都内の国公立学校に勤務する養護教諭10名である。半構造化インタビューを2011年8月から12月にかけて実施した。対象者には、保健室観や、保健室の役割、機能、良い空間整備についてどのように考えているかを質問した。また、どのようにして機能を最大限に生かすように保健室の空間を利用しているかも尋ねた。 インタビュー・データの分析により、養護教諭の保健室に対する役割期待と、保健室とはどのようにあるべきかという保健室観が、保健室が果たすべき機能の規定へと結びつく。そして、その機能が、それを最大限有効にするように保健室の空間整備の仕方に影響するという図式化をした。そして、保健室の機能と各コーナーの配置との関連性について検討を行い、保健室の各コーナーのレイアウトに対する対象者に共通した配慮について明らかにした。また、養護教諭の理念を具体化した保健室づくりの実現を制約している要因として、予算、スペース、養護教諭の職務上の問題が存在することも明らかにした。最後に、本研究の限界と課題についても考察を加えた。
著者
相川 朋生 竹鼻 ゆかり
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.69-85, 2013-04-30 (Released:2021-07-07)
参考文献数
18

本研究は親と死別した子どもの体験に基き、親との死別から現在までの体験と変化を明らかにすることを目的とし、児童期や思春期に親との死別を体験した6名の大学生および社会人に対し、死別の経緯や周囲との関わり、死別によって生じた心身の変化などについて半構造化面接を行った。逐語録を作成し、死別による体験や変化について語られたコードを抽出し、類似のコードをまとめてサブカテゴリーを作り、カテゴリー化を行った。各カテゴリーは、さらに、心理的変化・社会的変化・身体的変化の3観点で分類した。また、カテゴリーの分類に先立って、体験や変化が表れた時期を5期設定した。 その結果、親との死別によって子どもは、心理的変化を生じ、死別前後の強い衝撃が悲嘆感情に変化し、その悲しみは様々な感情と影響し合いながら表出されることが分かった。また、その悲しみはだんだんと和らぎながらも、現在にいたるまで何らかの形で残っていることが明らかになった。 社会的変化のうち、家族関係は、時間が経過するとともに強固なものになったが、一方で、死別体験の当事者は、周囲との関わりに困難を感じていた様子が示された。 また、強い悲しみにより身体的変化が生じたが、時間の経過に伴って悲しみが和らぎ、対処行動がとれるようになると、その反応は消失していた。 そのなかで子どもは、悲しみへの対処の仕方を理解し実践することによって、徐々に自分のなかで悲しみを整理しながら生活できるようになっていた。
著者
鈴木 春花 朝倉 隆司
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-40, 2018-03-20 (Released:2021-07-07)
参考文献数
37

本研究は、性別意識に着目して、男性養護教諭の仕事の意識と体験の特徴を明らかにした。 男性養護教諭4名を対象とし、約1時間程度の半構造化インタビューを実施した。分析は、テーマ分析の方法を参考に、共著者間で協議して進め、基本的問題意識とデータの読み込みから、5つのテーマを設定してカテゴリーを生成した。 性別意識が現れたカテゴリーは、《養護教諭を目指した理由・動機》《養護教諭としての職業観》では、【男性でもなれるという思い】【専門性と性別は無関係】であるという認識のカテゴリーであった。男性の《養護教諭としての仕事上の体験》では【男性養護教諭に対するバリアへの挑戦】【少数派男性ゆえの孤独感と存在価値】【中年期の男性養護教諭イメージの不確定さからくる不安と期待】【子供が持つ羞恥心への理解】【セクハラの危険性の認知と予防策】【性別を超えた対人職の倫理】と特徴的なカテゴリーを見出した。《うまく働ける要因》では、【学校のニーズ】【男女の複数配置】【普通と思う受け入れ姿勢】という職場の条件、【本人のポジティブな性格】という本人の要因を見出した。《男性養護教諭の存在意義》に関しても、【子供に養護教諭の選択肢を与えることができる】【キャリア教育の一翼を担う】【これまでの当たり前を問い直すことができる】【多様なニーズへの対応ができる】のように、男性養護教諭の立場から養護教諭のあり方を問い直すカテゴリーを見出した。