- 著者
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丸井 淑美
- 出版者
- 日本健康相談活動学会
- 雑誌
- 日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.2, pp.143-152, 2020-12-25 (Released:2021-02-10)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
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[目的]性的少数者の小学校から高等学校または大学に至るまでの学校生活の実態を明らかにするとともに、その結果から得られた学校教育における課題について検討することを目的とする。[方法]20歳以上の性的少数者10名に半構造化面接によるインタビュー調査を実施し(2011)、インタビュー内容をSCAT(step for coding and theorization)を用いて分析した。[結果]女性同性愛者は、学校で自己開示できない寂しさを感じていて、同性愛を罪や恥、病気のようなものとして排除する気持ちを持っていた。男性同性愛者は、安心して自分のセクシュアリティを話せない学校環境であったため、異性愛を装い生活していた。性同一性障害に関する情報の不足や相談相手の不在により孤立し、不登校や自己破壊行為を行っている者もいた。[結論]異性愛中心主義の教育は、性的少数者の子供たちに少なからず負の影響を与えており、本研究においては女性同性愛、性同一性障害(性別違和)に共通の課題であることがわかった。 性同一性障害(性別違和)の子供たちは、家庭や学校生活の中で自分のセクシュアリティを隠しておくことが難しい状況に追い込まれ、やむを得ずカミングアウトをしていることがわかった。セクシュアリティに関する正しい情報を適切な時期に提供していれば、当事者であることの生きづらさは軽減していたはずであるとのストーリーラインが導き出されており、知識習得の遅れは重大な課題であることがわかった。