著者
中田 幸司
雑誌
玉川大学リベラルアーツ学部研究紀要 (ISSN:18828647)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-9, 2014-03-15

平安宮廷歌謡『催馬楽』を研究する方法に詞章の分析がある。現存する六十余曲は大別すると「恋歌」・「非恋歌」・「その他」という内容面と、五七五七七に収束する「短歌体」・複数の立場の者による「問答体」・「その他」という形式面による位置づけができる。本稿で扱う「力なき蝦かへる」は、『催馬楽』の中ではもっとも短い詞章であり、「力なき蝦 骨なき蚯みみず蚓」の反復を見るに過ぎず、どのような内実を読むべきか定説はない。ここに第一勅撰和歌集『古今和歌集』の仮名序にみる表現、また後世の和歌集の序文に引かれる「力なき蝦」・「骨なき蚯蚓」の表現が用いられていることから逆照射して、ここに歌人の行為と象徴を読み取る必要のあることを結論づけた。
著者
中田 幸司
雑誌
玉川大学リベラルアーツ学部研究紀要 (ISSN:18828647)
巻号頁・発行日
no.6, pp.19-26, 2013-03-15

『催馬楽』「席田」は大嘗会和歌のひとつとして存在し、詠作者を想定するべき歌である。そこには、和歌の歌謡化といった傾向が見出されるとともに、その表現は、紀貫之を筆頭に受容されたと考えられる。この時、『催馬楽』は宮廷人の存在なくしては、成り立たず、必ずしも巷間・民衆から発生したとは言いがたい。
著者
中田 幸司
雑誌
玉川大学リベラルアーツ学部研究紀要 (ISSN:18828647)
巻号頁・発行日
no.10, pp.68-62, 2017-03-15

『枕草子』「清涼殿の丑寅の隅の」章段は、従来『古今和歌集』との関係から論じられたが、本稿では当時の和歌や『伊勢物語』を間テクスト性の観点から論じた。冒頭の「おそろしげなる」絵を〈笑ひ〉へと導く背景には当時の「うしとら」歌の存在を考慮すべきであり、続く叙述には『伊勢物語』一〇一段が想起される。『伊勢物語』の語りを『枕草子』の当該部分に照射すること、つまり間テクスト性の問題として読み直すことで詠歌の折を基準に『枕草子』の特徴を理解することができる。ここに和歌に収束した『伊勢物語』の散文と、和歌には収束せずに拡散した過程を経て和歌に到達した『枕草子』の位相差を読み取ることを指摘した。