著者
小堀 智恵子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-18, 2010-03-01

次世代育成支援地域行動計画によって,保育現場は様々な事業を担いながら,一方で人材や空間などの保育条件が充分に保障されないという矛盾を抱えて,日々実践していると考えられる。本論は,前期行動計画が保育現場にどのような影響をもたらしたのか,その現状と課題について明らかにするために,統計資料を中心に分析をした。その結果,待機児童対策と特別保育事業は量的に拡大しているが,その中心は民間保育所であること,公立でも民間でも非正規職員が増加していることがうかがえた。さらに,一時保育と地域子育て支援センターは,困難な条件の下での実践を余儀なくし,全市的に見て充分機能しているとは言えない状況がみられた。公的保育制度を後退させながら数値目標を追う行動計画は「保育の質」を担保できず,保育現場においては,子どもの発達要求と保護者の保育要求を軸に,実践を組み立てていくことが課題であることを述べた。
著者
上田 純子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
no.49, pp.19-36, 2021-03-01

医療技術が進歩し,障害の重い子どもたちも就学するようになってきた。彼らを支える養育者の支援という視点からの研究は見られるようになった。しかし本人が直面している課題に焦点をあてた研究は,該当する子どもの数の相対的な少なさや本人による明確な意思表示の難しさ,生命の脆弱さなどの背景から,まだ少ない。そこで本稿では,学童期にある重度障害児本人及び家族が直面している課題の実態を,本人にとって生活の中心的な部分を占める学校生活を軸としながら,ある母へのインタビューをもとに明らかにすることを試みた。登校したい,家族と離れて過ごしたい,放課後は友だちと過ごしたい。そんな思いを実現すること,それを支えることがなぜ困難なのか。不平等及び多様性という観点を糸口として,彼らが直面している様々な課題に対する考察を試みた。超重症児家族不平等多様性
著者
松岡 江里奈
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
no.49, pp.109-125, 2021-03-01

本稿は,韓国のソウル市で2016 年から制度化している青年手当に焦点を当て,韓国で展開されている若者支援について検討を加えるものである。青年手当は,韓国の青年たちが自ら,その政策を提言し議論するなかで制度化した経緯がある。筆者は,その青年たちによる運動の背景には,韓国の代案教育運動や,市民運動によって生み出された社会的企業,さらには協同組合等の連帯経済を創り出す主体,つまり社会を変革する運動の主体を育ててきた実践があると考える。本稿では,今日の韓国の若者たちが抱えている深刻な生活問題とそれを支える支援制度に焦点を当て,その運動の主体を育てる学びと運動への参加が,主体的な社会参加を保障すると考え,その実践を行うソウル市青年活動支援センターの今後の運動課題を考察する。若者支援自立支援韓国青年手当時間の保障
著者
藤本 和栄
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.45-62, 2013-03-01

日系ブラジル人子どもの生活課題を明らかにし,支援の方策を,多文化ソーシャルワーク,ブラジル人コミュニティ,地域学習室の取り組みを通して検証し,様々な協働を通して生まれた新しいきざしから,子どもたちが健やかに育つ支援の方策について考察をこころみることを目的とする。本研究では,日系ブラジル人が集住している都市の行政機関,ブラジル人学校,国際交流協会,ブラジル人コミュニティ,NPO,市民団体等の現地調査により,日系ブラジル人特有の課題とその具体的支援について聞き取りを行ってきた。調査結果と,日系ブラジル人及び,子どもたちの新たな活動にも注目し,子どもたちの夢の実現に向けての共生の方策を検討していく。
著者
孫 ■■
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.19-34, 2012-03-01

韓国でも人口高齢化に伴い同居率の低下,家族の介護力が低下している。一方では要介護高齢者の増加,要介護期間の長期化,家族の身体的・経済的・心理的な負担は増加している。このような状況から家族介護システムから社会的介護システムへの転換としての韓国型の介護保険制度が2008年7月から施行され,4年目を迎えている。長期療養保険施行以後の認定者及び利用者は,毎年増加する傾向にある。最近の保健福祉部・国民健康保険公団の2011年老人長期療養保険施行3周年記念シンポジウムの資料によれば,2008年の認定数者14万人と利用者数7万人は,2009年には認定者数26万人と利用者数18万人,2011年3月には認定者数32万人と利用者数28万人まで増加している。又,要介護の認定申請から外された潜在的な長期療養対象者も現在(2011年3月基準)約37万人であり,潜在的な長期療養者に対する支援も必要である。このような韓国の高齢社会の状況と公的介護保障制度である「老人長期療養保険制度」の施行後の動向と成果及び課題が注目される。