著者
野村 駿
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.122-132, 2018-07

本稿の目的は,「音楽で成功する」といった夢を掲げ,その実現に向けて活動するロック系バンドのミュージシャン(以下,バンドマン)を事例に,夢を追う若者がフリーターを積極的に選択・維持するプロセスとその背景を,若者文化の側面に着目して明らかにすることである. 若者の学校から職業への移行を扱ったこれまでの研究が,フリーターを積極的に選択・維持する若者の移行過程を看過してきたという問題意識から,バンドマンを対象とした聞き取り調査のデータを分析し,次の3つの知見を導出した.第1に,バンドマンはバンド活動を「やりたいこと」だと見なしながら,それと同時にバンドメンバー同士の相互作用の中でフリーターを選択していた.第2に,バンドマンはライブ出演に向けてメンバー間で場所と時間を共有する必要があることからフリーターを選択・維持していた.第3に,フリーターであることによって生起する金銭的困難が,バンドという活動形態の集団性とバンド単位で支払いを求める音楽業界の料金システムによって緩和されていた. 以上の知見を踏まえ,バンドという活動形態の集団性と音楽業界の料金システムが若者文化の内部構造として存在するために,それに適応しなければ夢が追えないバンドマンは合理的な進路としてフリーターを積極的に選択・維持していると結論付けた.
著者
野村 駿
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
no.10, pp.122-132, 2018-07

本稿の目的は,「音楽で成功する」といった夢を掲げ,その実現に向けて活動するロック系バンドのミュージシャン(以下,バンドマン)を事例に,夢を追う若者がフリーターを積極的に選択・維持するプロセスとその背景を,若者文化の側面に着目して明らかにすることである. 若者の学校から職業への移行を扱ったこれまでの研究が,フリーターを積極的に選択・維持する若者の移行過程を看過してきたという問題意識から,バンドマンを対象とした聞き取り調査のデータを分析し,次の3つの知見を導出した.第1に,バンドマンはバンド活動を「やりたいこと」だと見なしながら,それと同時にバンドメンバー同士の相互作用の中でフリーターを選択していた.第2に,バンドマンはライブ出演に向けてメンバー間で場所と時間を共有する必要があることからフリーターを選択・維持していた.第3に,フリーターであることによって生起する金銭的困難が,バンドという活動形態の集団性とバンド単位で支払いを求める音楽業界の料金システムによって緩和されていた. 以上の知見を踏まえ,バンドという活動形態の集団性と音楽業界の料金システムが若者文化の内部構造として存在するために,それに適応しなければ夢が追えないバンドマンは合理的な進路としてフリーターを積極的に選択・維持していると結論付けた.
著者
浅沼 裕治
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.86-98, 2019 (Released:2022-03-25)

本稿の目的は,父子家庭の父親の子育てに関して,とりわけ「娘」が示す特有の興味•関心・身体的変化への対応の困難性を考察することである.これまでの父子家庭研究は,父親とは性別の異なる子どもを育てる困難の考察が等閑視されているように思われる.本稿では,この点に主たる焦点をあて,父子家庭の父親へのインタビューにおいて得られたデータについて,テキストマイニングを中心とする分析により考察を行った.そして,①父親の養育困難として,娘の発達段階によって発現する一般的に女性(女児)特有の典味•関心や身体的変化により,男児を養育する場合とはケアの困難の要素が異なること,②そうした女性(女児)特有の困難への対処として,自身の母親等の異性の親族が対応しているケースがあるが,家族機能の縮小等によって,こうした協力関係の維持が脆弱になっているため,父親が内面化しているジェンダー規範をふまえた代替的支援の可能性について考察を行った.
著者
野村 駿
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.122-132, 2018

本稿の目的は,「音楽で成功する」といった夢を掲げ,その実現に向けて活動するロック系バンドのミュージシャン(以下,バンドマン)を事例に,夢を追う若者がフリーターを積極的に選択・維持するプロセスとその背景を,若者文化の側面に着目して明らかにすることである.若者の学校から職業への移行を扱ったこれまでの研究が,フリーターを積極的に選択・維持する若者の移行過程を看過してきたという問題意識から,バンドマンを対象とした聞き取り調査のデータを分析し,次の3つの知見を導出した.第1に,バンドマンはバンド活動を「やりたいこと」だと見なしながら,それと同時にバンドメンバー同士の相互作用の中でフリーターを選択していた.第2に,バンドマンはライブ出演に向けてメンバー間で場所と時間を共有する必要があることからフリーターを選択・維持していた.第3に,フリーターであることによって生起する金銭的困難が,バンドという活動形態の集団性とバンド単位で支払いを求める音楽業界の料金システムによって緩和されていた.以上の知見を踏まえ,バンドという活動形態の集団性と音楽業界の料金システムが若者文化の内部構造として存在するために,それに適応しなければ夢が追えないバンドマンは合理的な進路としてフリーターを積極的に選択・維持していると結論付けた.
著者
木田 勇輔 成 元哲 河村 則行
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-143, 2018 (Released:2021-03-22)

本稿では Robert J. Sampson の集合的効力感に関する理論を検討し,日本の都市において個人レベルの集合的効力感がコミュニティにおける活動意欲を促すのかという点について検証を行った.具体的には名古屋市の6学区における質問紙調査から得られたデータを用い,集合的効力感の規定要因とその効果に関する基礎的な分析を行った.個人レベルの変数や居住学区のダミー変数を含めた重回帰分析を行った結果として,以下の3つの結論を得た.(1)社会的紐帯の豊富さと移動性の低さは集合的効力感を高める.(2)居住学区は集合的効力感に影響を与えている可能性が高い.(3) 個人レベルの変数や居住学区の効果を統制しても,集合的効力感はコミュニティにおける活動意欲に正の効果を持っている.今後の研究の展望として,日本でも集合的効力感が重要な意味を持つ可能性は高く,居住地区間の格差や不平等を解明する際の糸口を提供すると考えられる.