著者
木田 勇輔 成 元哲 河村 則行
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-143, 2018 (Released:2021-03-22)

本稿では Robert J. Sampson の集合的効力感に関する理論を検討し,日本の都市において個人レベルの集合的効力感がコミュニティにおける活動意欲を促すのかという点について検証を行った.具体的には名古屋市の6学区における質問紙調査から得られたデータを用い,集合的効力感の規定要因とその効果に関する基礎的な分析を行った.個人レベルの変数や居住学区のダミー変数を含めた重回帰分析を行った結果として,以下の3つの結論を得た.(1)社会的紐帯の豊富さと移動性の低さは集合的効力感を高める.(2)居住学区は集合的効力感に影響を与えている可能性が高い.(3) 個人レベルの変数や居住学区の効果を統制しても,集合的効力感はコミュニティにおける活動意欲に正の効果を持っている.今後の研究の展望として,日本でも集合的効力感が重要な意味を持つ可能性は高く,居住地区間の格差や不平等を解明する際の糸口を提供すると考えられる.
著者
貝沼 洵 牧田 実 河村 則行 黒田 由彦 山崎 仁朗 米田 公則
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本調査研究は、グローバリゼーションが進展し、地域が直接的にグローバルな影響にさらされ、かつ新自由主義的な国家政策との関連で、成長第一主義的な地域振興、すなわち、「中央依存型」「公共投資依存型」の地域振興から、あたらしい「まちづくり」の方法と主体形成に向けて苦悶している三つの地域、北海道北見市、愛知県瀬戸市、沖縄県宜野湾市の実状を分析し明らかにした。北見市においては、「資源供給型」「公共投資依存型」「中央主導型」経済からの脱却と、自立的な地域産業の確立を目指す「産業クラスター」運動と、新自由主義的な手法を取る神田市政が、地域の多様な利害を調整していけるのかどうかが、今後の課題であることを明らかにした。瀬戸市においては、愛知万国博覧会の主会場予定地が長久手町に移った現在、ビッグ・プロジェクト依存の中央主導型のまちづくりではなく、瀬戸市の地元政・財界がどのように「政治的に」自己革新して、幅広い住民諸階層の利害や運動に対応するのかが、瀬戸市の課題であることを明らかにした。これに対して、宜野湾市においては、普天間飛行場跡地利用も含めた中央政府への依存と、米軍基地に依存する経済からの脱却と自立したまちづくりとのジレンマに直面していることを明らかにした。