- 著者
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山口 エレノア
Yamaguchi Eleanor
- 出版者
- 京都府立大学
- 雑誌
- 京都府立大学学術報告. 人文 (ISSN:18841732)
- 巻号頁・発行日
- no.74, pp.1-30, 2022-12-25
歴史研究には対人関係や人間相互関係の影響の重要性を過度に強調する事ができない。歴史上有名な人物の他、歴史書で少ししか触れていない人物は数えられないほどいるが、生きていた当時、きわめて重要な役割を果たしていたことは少なくもない。本稿で現在はよく知られていない元薩摩藩士で後に京都府知事となった中井弘(1839-1894)という人物について検討し、幕末・明治時代日本史で知られている有名な仲間たちとの関係に関して考察する。中井は長州藩士の伊藤博文と井上馨と深い関係があった。更に土佐藩士の後藤象二郎と坂本龍馬とも知り合い、1866 年にこの二人の勧めと支援で中井は始めて英国に旅した。その他に明治時代に生きた有名な人物で中井の友人だったのは、大久保利通、木戸孝允、大山巌、大隈重信などが例に挙げられる。大物歴史人物への影響はかなり大きいことから、中井弘自身は現在知られていなくても彼の影響は日本史に残ることが明らかになる。