著者
房家 正博 雨谷 敬史 松下 秀鶴 相馬 光之
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.823-830, 1998-12-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

空気清浄機を作動させた場合のオゾンの発生量と, 停止後の減衰についての検討を行った。市販の14種類の空気清浄機のうち, 電気集塵式やイオン式の機種の一部にオゾンの発生がみられた。オゾンの発生が認められた機種でも, その発生量は機種により異なり, 316μl/hr~5100μl/hrであった。このうち発生量の大きい機種を用いて, 夏と冬による発生量の違いや, 脱臭フィルターによる除去効果, 印加電圧による発生量の違い, および試験室と実際の室内でのオゾンの発生量と, 停止後の減衰の相違などについて調査した。この結果, 湿度の多い夏場や脱臭フィルターを装着した場合にオゾン発生量が低くなること, プラスの電圧で放電するよりもマイナスの電圧で放電する方がオゾン濃度が高くなることが認められた。さらに, オゾンは反応性に富んでいるため, チャンバーとくらべて実際の室内での濃度はかなり低くなること, 停止後の減衰もかなり早く進むことが認められた。また, 最大のオゾン発生量を示す機種では, 実際の室内でも一般環境基準の60ppbを超える濃度になることも認められた。
著者
松下 秀鶴 森 忠司 田辺 潔
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.250-255, 1983-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13

室内空気中のニコチン濃度およびこれへの個人被暴露量の簡易分析方法を開発した。本法は, 次の各操作すなわち, 固体捕集法による室内空気中のニコチンの捕集, 固体捕集剤への内標準物質 (イソキノリン) の添加, アルカリ性メチルアルコール溶液によるニコチンの溶出, そして熱イオン化検出器付ガスクロマトグラフィー (GC-FTD) によるニコチンの分析から成り立っている。本分析方法は98.8±2.1%と高いニコチンの捕集効率が得られ, 内標準物質であるイソキノリンに対するニコチンの脱着効率の比の平均値は1.01±0.01と再現性がよく, 分析手法の簡易化に有用であることが判った。また本捕集剤中でのニコチンは暗室 (室温) および冷凍庫 (-20℃) 内での保存では少なくとも7日間は安定であることが判った。本分析条件でのニコチンの絶対検出下限は4.5pg (S/N=2) であり, 本法を用いると0.30μg/m3までの濃度のニコチンを精度よく分析できる。室内空気中のニコチン分析の一例として研究室内の空気中のニコチン濃度を調べた結果, 0.57~2.36μg/m3であった。また談話室内空気中のニコチンの経時変化を調べた結果, ニコチン濃度は2.5~23μg/m3と10倍近く変動すること, ニコチン濃度の変動のパターンはタバコの喫煙本数のそれとよく類似することが判った。
著者
松下 秀鶴 江角 凱夫 鈴木 彰 半田 隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.1471-1478, 1972-11-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
22
被引用文献数
10 10

コールタール中の多環芳香族炭化水素に対する分析法について研究した.その結果,コールタール中の多環芳香族炭化水素の液相分配法による抽出→抽出物の二層二次元薄層クロマトグラフィーによる分離→各分離スポット抽出物の分光けい光分析の手続きからなる分析法を見いだした.本分析法をコールタールに適用した結果,93種の多環芳香族炭化水素類の存在を薄層クロマトグラフィーにより認め,そのうち,24種を分光けい光分析法により同定した.また,同定物質の中に,発がん性物質が10種含まれていることがわかった.このほか,コールタール中に含まれる13種の多環芳香族炭化水素の定量を行なった.その結果,たとえば発がん性を有するベンゾ(a)ピレンは7400ppm,ジベンゾ(a, h)ピレンは120ppm,ジベンゾ(a, i)ピレンは270ppmときわめて多量存在することがわかった.
著者
高木 敬彦 遠藤 治 後藤 純雄 河合 昭宏 村田 元秀 松下 秀鶴
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.312-321, 1986

自動車から排出される変異原物質の総量をモニターするための手法検討の一環として, 使用済ガソリンおよびディーゼルエンジンオイルの変異原性と走行距離との関係をサルモネラ菌TA100およびTA98株を用いて調べた。エンジンオイルの採取は両車ともに市中走行条件下でオイル交換直後から, 5000kmまで1000km毎に行った。又, 合わせて市中走行のガソリン車12台, ディーゼル車7台からもオイルを採取し, その変異原性を調べた。<BR>エンジンオイル中の変異原物質抽出法を検討した結果, メタノールを抽出溶媒にした還流抽出法が効果的であった。ガソリン車のエンジンオイルはTA100, TA98株に対してS9mix添加および無添加条件下で変異原性か認められたが, ディーゼル車のエンジンオイルはTA100株S9mix無添加条件下では変異原性がほとんどみられなかった。また, TA100株S9mix添加条件下で, 両車のエンジンオイルの変異原性と走行距離との間に相関関係がみとめられた。今回調べた市中走行車についてみると, ガソリンエンジンオイルの変異原性がディーゼルエンジンのそれに比べて高い傾向にあった。ガソリンエンジンオイル車の場合, 総走行距離が30000km以上になると, 走行距離1km当たりの変異原性 (TA100株+S9mix) が高くなる傾向がうかがわれた。
著者
松下 秀鶴 森 忠司 後藤 純雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.220-227, 1982

タバコ副流煙中のN-ニトロソアミンの新しい分析方法を開発した。本法は, 次の各操作すなわち, 液体-固体捕集系による副流煙中N-ニトロソアミンの捕集, ジクロロメタンによるN-ニトロソアミン抽出, 抽出溶液のK-D濃縮器および窒素気流吹きつけによる濃縮, そして熱エネルギー検出器付ガスクロマトグラフィー (GC-TEA) によるN-ニトロソアミンの分析から成り立っている。<BR>副流煙中N-ニトロソアミンの捕集には, 1N KOH, 0.5Mスルファミン酸水溶液, 脱水剤 (Na<SUB>2</SUB>CO<SUB>3</SUB>) そしてサーモソルブ/Nチューブを直列につないだ捕集系を用いた。この系では, 副流煙中に8ppmの高濃度二酸化窒素を含む場合でも, アーティファクトニトロソアミン生成がなく, N-ニトロソジメチルアミン (NDMA) やN-ニトロソピロリジン (NPYR) に対して99%又はそれ以上の高い捕集効率が得られることが判った。高い分析再現性を得るために, 溶媒抽出の際, 既知量のN-ニトロソジーn-ブチルアミンを内部標準溶液として試料溶液に加えた。また, 本法で用いたGC-TEAは, クリーンアップ処理の簡素化にたいへん有効であり, 高感度であった。<BR>本法を若干の国産銘柄タバコ副流煙中のNDMAとNPYRの分析に適用した。喫煙は国際喫煙モードで, 定容量型自動喫煙器を用いて行った。分析結果の再現性は高く, その変動係数はNDMAで4.9%, NPYRで2.9%であった。また副流煙中のこれらN-ニトロソアミン含量は銘柄によって異なり, その値はタバコ1本当たりNDMAで190~370ng, NPYRで90~210ngであることを認めた。
著者
松下 秀鶴 森 忠司 後藤 純雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.339-345, 1983

タバコ副流煙中のN-ニトロソアミソ分析方法を改良した。副流煙中のN-ニトロソアミンの捕集には, 0.5Mスルファミソ酸水溶液, 脱水剤 (Na<SUB>2</SUB>CO<SUB>3</SUB>) そしてサーモソルブ/Nチューブを直列につないだ捕集系を用いた。捕集した副流煙中のN-ニトロソアミンは捕集系の各部位からジクロロメタンで抽出し, 抽出溶液を一つに集め, 内部標準としてN-ニトロソージーブチルアミンを一定量添加したのち, K-D濃縮器および窒素気流吹きつけにより約0.5m<I>l</I>まで濃縮し, GC-TEAで分離分析した。<BR>本分析方法では, N-ニトロソジメチルアミン (NDMA) とN-ニトロソピロリジン (NPYR) はほぼ完全に捕集できること, 分析結果の再現性が高く, その変動係数はNDMAで7.2%, NPYR 8.1%でであることが判った。<BR>本法を国産, 外国産タバコ各々15銘柄の副流煙中のNDMAとNPYRの分析に適用した。N-ニトロソアミン含量は銘柄によってかなり異なり, タバコ1本当りの含量はNDMAで113~544ng, NPYRで40~332ngであった。また中国産タバコの副流煙中N-ニトロソアミン含量は他の国々の値よりかなり低く, 米国産タバコのそれは国産タバコより多いことを認めた。
著者
雨谷 敬史 大浦 健 杉山 智彦 房家 正博 松下 秀鶴
出版者
Society of Indoor Environment, Japan
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-43, 2000
被引用文献数
4

1999年8月に, 富士市の一般家庭の室内外のアルデヒド濃度調査を行った。サンプリングはSep-Pak XPoSureを用いたアクティブサンプリングにより行った。得られたサンプルはジクロロメタンによる抽出, アセトニトリルへの溶媒転換, HPLCを用いた分離分析法によりアルデヒド・ケトンの多成分同時分析をおこなった。本法は, 環境大気や室内空気中のホルムアルデヒド, アセトアルデヒドなど11種類のアルデヒド・ケトンを検出・定量するのに有効であることを認めた。ホルムアルデヒドをはじめとする調査対象アルデヒド・ケトンは, すべて, 屋外より室内の濃度の方が高かった。ホルムアルデヒドは新築住宅内で濃度が高く, ホルムアルデヒドなど9種のアルデヒド濃度は, じゅうたんやフローリングの部屋に比べて畳敷きの部屋で濃度が低かった。厚生省による室内環境中のホルムアルデヒド濃度指針値100μg/m<SUP>3</SUP>(30分間)を超えた家庭は2家庭(全体の10%)であった。また, 室内の10種のアルデヒド濃度間には有意な相関が見られた。
著者
高木 敬彦 峡谷 香澄 遠藤 治 後藤 純雄 光崎 研一 村田 元秀 松下 秀鶴
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.193-199, 1992-04-15

相模原市の大気の汚染度を変異原性の面から把握するため浮遊粉じんを1年間定期的に採取し調べた. 浮遊粉じん量は季節別に有意差はみられなかったが, その溶媒抽出物(タール状物質)の冬期の濃度は他の季節に対して有意に高いことが判った. 変異原性はTA100, TA98株の両菌株に対してS-9mix添加の有無にかかわらずみられることや, その高さは採取日により数倍〜数十倍大きく変動し, 日曜日, 盆, 正月など産業活動の低い時期には変異原性も低くなる傾向を示した. 季節別では冬期が夏期や春期に比べて有意に高いことが判った. また, S-9mix無添加系が添加系よりも高い日が比較的多く認められたことからTA98NR株を用いてニトロアレーン類の存在を調べた結果, その存在は冬期よりも夏期に多いことが判った.