著者
佐藤 安代
出版者
埼玉県立大学保健医療福祉科学学会
雑誌
保健医療福祉科学 (ISSN:2186750X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.28-31, 2020-03-31 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19

看護を学ぶ学生には、コミュニケーション能力の向上が求められている。そこで看護学科1年生を対象に音楽療法を行い、その前後でコミュニケーション・スキル尺度を用いてコミュニケーション・スキルの変化を測定した。データ分析にはSPSS Statistics 22を使用し、音楽療法前後の尺度得点の平均点の差を検定した(Wilcoxon符号付順位検定、p<0.05)。分析対象者は10名であった。音楽療法の前後で測定したコミュニケーション・スキル尺度の合計得点において、有意な得点の上昇がみられた。6つの下位尺度の中では、「自己統制」「自己主張」「関係調整」、それぞれに関する因子の合計得点において、有意な得点の上昇がみられた。今後は、学生のコミュニケーション能力を向上させるために、音楽療法のどの内容が有効であったのか、どのような時期に行うとより効果的であるかの検討を行っていく必要がある。
著者
滑川 道人 井上 由紀
出版者
埼玉県立大学保健医療福祉科学学会
雑誌
保健医療福祉科学 (ISSN:2186750X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-27, 2020-03-31 (Released:2020-04-03)
参考文献数
30

「新型たばこ」は、タバコの葉そのものを使用する「加熱式たばこ」と、使用しない「電子たばこ」に分類される。加熱式たばこのエアロゾルには、紙巻たばこに含まれる有害性物質が(程度の差こそあれ)含まれ、従来からのたばこと変わらない。紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えることが「リスク・リダクション」になるかは未解明である。 一方、本邦で販売許可されている電子たばこにはニコチンは含まれない。しかしニコチン入りの海外製品を個人輸入して使用している例が少なからずあり、本格的な喫煙・ニコチン依存症へと進展する危険性がある。また電子機器の爆発による死亡事故も報告されている。 さらにごく最近、電子たばこ使用者(主に若年者)に急性肺障害(EVALI)が発症することが知られ、2019年10月末時点、アメリカ全土で1600名(うち死者34名)を超えた。新型たばこの有害性は未解明な点が多く、安全性が確認できるまでは使用しない方が賢明である。
著者
横山 恵子
出版者
埼玉県立大学保健医療福祉科学学会
雑誌
保健医療福祉科学 (ISSN:2186750X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.7-13, 2014-03-31 (Released:2019-12-03)
参考文献数
11

【目的】精神障害者家族会の若年層の統合失調症患者の親の家族会入会から現在までの経験から、家族会の将来のあり方への示唆を得る。方法:エスノグラフィーの手法を用い、地域家族会での参加観察と17名の会員へのインタビューを行った。結果:分析の結果、【家族会入会までの家族の心理的変化】【家族会で得たもの】の2つのカテゴリが得られた。【家族会入会までの家族の心理的変化】には、≪混乱≫≪後悔/自責感≫≪孤立感≫≪元に戻る/期待≫≪元には戻らない/覚悟≫≪家族会入会≫という6段階が見出された。家族会入会には、病気に対する「覚悟」が必要であり、それが入会を阻害していた。【家族会で得たもの】には、≪情報≫≪未来への希望≫≪居場所≫≪信頼できる仲間≫≪体験的知恵≫≪自信≫の6つが含まれ、家族会は家族支援における重要な地域資源であった。家族会は入会を待つだけでなく、家族会から手を差し伸べる重要性が示された。
著者
櫻井 香織 臼倉 京子
出版者
埼玉県立大学保健医療福祉科学学会
雑誌
保健医療福祉科学 (ISSN:2186750X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.20-25, 2018-03-31 (Released:2019-12-03)
参考文献数
8

本研究は、常に選択の自由がある状態での作業課題実施が気分およびストレスに及ぼす影響を検証することを目的とした。常に選択の自由がある状態に設定できる作業課題としてぬり絵を用い、色を自由に塗る群を選択群、黒のみで塗る群を非選択群とした。POMS2短縮版と唾液アミラーゼ活性値を用いて課題前後の変化を評価した結果、POMS2短縮版において、選択群で「怒り-敵意」「抑うつ-落込み」「緊張-不安」の尺度得点が有意に低くなる傾向が、「混乱-当惑」の尺度得点が有意にやや低くなる傾向がみられた。非選択群では「抑うつ-落込み」「活気-活力」の尺度得点が有意に低くなる傾向がみられた。唾液アミラーゼ活性値については有意差がみられなかった。POMS2短縮版の結果から、ぬり絵では色の選択の自由がある方がネガティブな感情を軽減させる効果が得られる可能性が示唆された。唾液アミラーゼ活性値に関しては、統制条件を更に検討する必要があると考える。