著者
瀬尾 和大
出版者
宮城教育大学附属教育復興支援センター
雑誌
教育復興支援センター紀要 = Bulletin of Support Center for Revival in Education, Miyagi University of Education (ISSN:21884080)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-6, 2015-03-11

前報では,宮城県内のいくつかの学校を訪問することによって,津波被害と津波避難行動の実態について学ぶことができた。本報では,今後における学校の津波対策を防災教育・防災計画に基づいた確固たるものにするために,学校が置かれている地域毎の津波に対する脆弱性について考察することを目的として,津波に対する死者率という指標を用いてさらなる検討を試みた。前報でも注目された石巻市立大川小学校ならびにその周辺地域における死者率は他の地域に比して突出して大きいことが判かった。このような高い死者率を低減させるためには,地震・津波対策の視点から,学校が地域社会にどのように関わることができるかとの視点が重要であり,地域社会と一体となって防災対策を構築することは当然のこととして,その中で地域社会の雰囲気に飲み込まれるのではなく,地域社会に対して適切なリーダーシップを存分に発揮できるような態勢を日頃から整えておく必要があるのではないかと考えられた。
著者
川崎 惣一
出版者
宮城教育大学附属教育復興支援センター
雑誌
教育復興支援センター紀要 = Bulletin of Support Center for Revival in Education, Miyagi University of Education (ISSN:21884080)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.61-72, 2015-03-11

近年,欧米やアジア諸国において注目されている教育実践として,「子どもの哲学(p4c:philosophy for children)」がある。これは「対話による探究」の実践である。本論はクリティカル・シンキングとの比較を行うことで「子どもの哲学」の意義を明らかにすることを目指すものである。 「子どもの哲学」は創造性を重視しており,新たな問いを立てることの重要性を強調していることに加え,問いそのものに対する前向きな態度や,他者および文脈に対する感受性を持つことをその柱の一つとしているのに対して,クリティカル・シンキングは「思考の質を高めること」に重点を置いている。このことから,両者は,互いに支え合い,含み合うような(楕円の二つの中心のような)関係のもとで,「子どもの哲学」がクリティカル・シンキングの基盤を形成しつつ,同時に後者の習得が前者のさらなる発展・深化を可能にする,そのような関係性にあると理解できるように思われる。
著者
岡 正明 内海 菜央子
出版者
宮城教育大学附属教育復興支援センター
雑誌
教育復興支援センター紀要 = Bulletin of Support Center for Revival in Education, Miyagi University of Education (ISSN:21884080)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.117-122, 2015-03-11

東日本大震災の津波被害で,多くの学校の花壇・圃場の土壌が塩分を含む状況となった。多量の塩分を含む土壌では,これまで小中学校の教材として用いられてきた多くの植物は栽培することができない。その中で,アイスプラントが耐塩性極強の植物として注目された。最近では独特な食感を持つ葉菜類としても市販されている。本研究では,アイスプラントの生理的・形態的特徴に関する基礎的な調査を行い,栽培教育における教材植物としての有用性を検証した。
著者
門脇 啓一 吉田 利弘 伊藤 芳郎
出版者
宮城教育大学教育復興支援センター
雑誌
教育復興支援センター紀要 = Bulletin of Support Center for Revival in Education, Miyagi University of Education (ISSN:21884080)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.49-62, 2014

本稿は,教育復興支援センターの取組,主として支援実践部門 平成25年4月~26年1月の取組を報告する。本センターは,平成23年3月11日の東日本大震災によって甚大な被害を受けた宮城県内の学校教育の復旧・復興――児童生徒の確かな学力の定着・向上,現職教員の各種支援等を期して,同年6月28日に設置された。被災から3年目を迎えた25年度,センター支援実践部門においては人的・物的,二つの「充実」が図られた。人的充実とは,ボランティア協力員を中心とする学生組織が,本格的に機能しはじめたことである。また,物的充実とは,6月29日のセンター棟の竣工である。研究室,会議室等の整備に加え,学生のミーティングルームが設けられた。そこを活動拠点として,各ボランティア団体の活動を担ってきた学生が,それぞれの活動内容,課題等について共通理解を図り,学生提案により大学祭,被災地視察研修,各種研修会が企画・運営された。そうした学生の主体性が,長期休業中の学習支援等のボランティア活動に好影響を与えることにもなり,前年度を上回る充実した支援活動が展開された。支援実践部門を担う教職員としては,支援対象の児童生徒の成長に止まらず,支援する学生の人間的成長を期してきた。それが,以下に示すような学生たちのさまざまな実践により,身近に感じることができたのは望外の喜びであった。今後は各ボランティア活動の学生代表と協働して,その後継者の育成に努めたいと考えている。なお,新しい試みとして仙台市立中野小学校,丸森町教育委員会の学び支援の具体の取組を掲載した。これを参照され,詳述できなかった各学校,各教委の取組も類推していただきたいと考えている。