著者
石井 久雄 イシイ ヒサオ Isii Hisao
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究 = Doshisha studies in Japanese linguistics (ISSN:21885656)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-10, 2015-03

とはずがたり全用語全事例辞典の最初の数ページ分,および参照項目について,原稿を提示する。この辞典は,とはずがたりに現れた自立語すべての意味用法すべてを整理し,意味用法ごとに事例すべてを列挙する。意味用法の記述は,一般の辞典を意識しつつも,とはずがたりのみに限定されるほどに具体的であろうとする。同様の作業が他の作品についても積み重ねられ,辞典あるいは語彙論・意味論が再構築されることを期待する。
著者
谷口 悠 Yu Taniguchi
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究 = Doshisha studies in Japanese linguistics (ISSN:21885656)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-14, 2023-03-31

「おもわく」の用法と意味について考察を行った。その結果、名詞用法(ク語法の「今、現に思っていること」という分詞用法が形骸化)と副詞用法(引用句を導く)が併存したのが、近世に名詞用法のみとなること、近世に「恋・恋人」の意味がみられ、近代以降には商業・経済専門用語として使われていたことを明らかにした。くわえて「思惑」の表記が専門用語としての「おもわく」の意味に影響を与えていたであろうことを示した。
著者
丸山 健一郎 マルヤマ ケンイチロウ Maruyama Ken'ichiroh
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究 = Doshisha studies in Japanese linguistics (ISSN:21885656)
巻号頁・発行日
no.21, pp.30-42, 2017-12

阿部櫟齋(1867慶応3年)『絵入英語箋階梯』と石橋政方(1861文久元年)『英語箋』の対照調査の結果を示す。それにより本書は、序文に言及され先行研究に指摘される通り、『英語箋』の影響下に成立したと考えられる。但し、鳥之部扉裏の例言に記されるように、厳密には『英語箋』鳥部から抽出した内容に改編が加えられている。それにより、初学者向けの体裁でありながら、実質的には『英語箋』鳥部の改正増補を目指した内容となっている。また踊り字(繰り返し符号)による長音表記を含め、ひらがなでの長音表記の方法が複数みられ、幕末明治初期の通俗語学書の様相をよく示す資料であると云える。This paper presents a verification the relationship in two western learning materials that published in the late 19th century in Japan. In terms of word order and vocablary, ABE Rekisai's EIRI-EIGOSEN-KAITEI is based on ISHIBASHI Masakata's Eigo Sen. As the results of comparing the two materials, that Japanese entry headwords match 69.4%, English entry headwords match 63.2%, and KATAKANA notations for describe English words match 44.9% at between each other. ABE augmented EIRI-EIGOSEN-KAITEI and evolved it than Eigo Sen in terms of research on birds.
著者
楊 瓊 Qiong Yang Chong Yang
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究 = Doshisha studies in Japanese linguistics (ISSN:21885656)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-11, 2015-09-30

本稿では、『万葉集』における「ゆゑ」を用いた歌を取り上げ、特に逆接の意味に解釈されることがある歌を再検討することを通して、上代の「ゆゑ」の文法的性格を考える。上代の「ゆゑ」は、「ため」と同様に目標を示すことができる点で、中古以降の「ゆゑ」より用法上の広がりをもつことを述べる。「ゆゑ」が逆接に解釈される歌においては、「ゆゑ」が実質名詞の性格を帯び、未だ因果関係を表す論理的な接続表現となっておらず、偶然的原因を示すにとどまっていると考えられる。
著者
米澤 昌子 Masako Yonezawa
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究 = Doshisha studies in Japanese linguistics (ISSN:21885656)
巻号頁・発行日
no.19, pp.46-58, 2015-09-30

本稿では、『朝日新聞』に掲載された記事を対象とし、「てほしい」と「てもらいたい」の使用実態を明らかにした。両者の使用総数、文体別の使用数、動作主の明示と助詞の使用、動作と聞き手の関係等の観点から分析を行った。その結果、新聞では「てほしい」が圧倒的に多く使用されていた。その使用は、動作主が聞き手ではなく、特定多数であり、明示されないといった形が最も一般的な使用場面であったことを指摘する。