著者
執行 三佳 河野 美江
出版者
全国大学メンタルヘルス学会
雑誌
大学のメンタルヘルス = Japanese journal of college mental health (ISSN:24332615)
巻号頁・発行日
no.2, pp.107-113, 2018-10

学生のメンタルヘルスに関する指導・支援の充実が求められる中、支援を要する学生を支援につなげるための様々な工夫や各種研修が行われてきている。A 大学においても学生相談に関するFD 研修の実施や、教職員が「気になる学生」を保健管理センターに紹介し、連携して支援にあたる体制を構築してきた。 本研究では、教員の学生対応での困り感や学生対応についての認識、研修へのニーズについて現状を把握することを目的に、2016年2月にWeb アンケートシステムを利用して教員を対象としたアンケートを行った。特に、不登校・ひきこもり学生については望ましいと考える対応についても尋ねた。その結果、8割の教員が学生対応に困った経験を持っていることが分かった。また、多くの教員は、学生の話を傾聴する、学科で相談をする、保健管理センター等へ相談するなど複数の対応方法を適宜選んで対応しているにもかかわらず、学生対応への自信はあまりないことが分かった。教員が支えられ、自信を持って支援に向かえるような研修やコンサルテーションの工夫が求められていると考えられた。
著者
河野 美江 執行 三佳 武田 美輪子 折橋 洋介 大草 亘孝 川島 渉 布施 泰子
出版者
全国大学メンタルヘルス学会
雑誌
大学のメンタルヘルス (ISSN:24332615)
巻号頁・発行日
no.2, pp.82-89, 2018-10

近年、大学生の性暴力事件が報道されているが、実際は大学相談機関に被害者が相談に来ることは少なく、被害者が安心して支援を求められる体制整備は喫緊の課題である。今回我々は、大学における性暴力被害者に対する支援や性暴力に対する予防教育の必要性を明らかにすることを目的に、大学生における性暴力被害の実態と性暴力に関連する知識を調査し、性暴力被害経験と精神健康度との関連について検討した。 対象と方法:機縁法にて協力の得られた10大学20歳以上の大学生3,357人に無記名・自記式のアンケート調査を実施、有効回答の得られた643部を分析対象とした(回収率19.6%)。結果:レイプ未遂は7.8%(男子3.1%、女子9.7%)、レイプ既遂は2.6%(男子1.6%、女子3.1%)、何らかの性暴力被害経験は42.5%にあった。緊急避妊ピルについての知識は60.0%にあったものの、性暴力救援センターについては13.7%であった。また、性暴力被害経験のある学生のGHQ 得点は4.2±3.2点と被害経験のない学生に比べ有意に高く(p<0.001)、被害強度、被害重複数と弱い相関が認められ(p<0.001)、重度の被害ではメンタルヘルスに深刻な影響をもたらすことがわかった。 以上より、大学生に対して、性暴力に対する予防教育を行うと共に、大学の相談機関における性暴力被害者に対する支援方法の確立が急務と考えられた。