著者
西村 政子 猪又 由華里 趙 彩尹
出版者
公⽴⼤学法⼈ 下関市⽴⼤学
雑誌
教育経済学研究 (ISSN:24361798)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-13, 2023 (Released:2023-02-28)
参考文献数
26

日本の高等教育機関では、若者に対するグローバル人材育成に向けた国際化事業に力を入れている。この取組みは、「外なる国際化:学術の習得や研究等の目的達成のために自国以外に比較的長い期間在留する、海外留学に代表される取組み」と「内なる国際化:グローバル人材に求められる能力やスキルを大学のキャンパスにおいて身に付けるための、海外留学に替わる取組み」に区分することができる(西村ら,2022)。グローバル人材育成に最も効果的な政策として留学が推進されている一方で、留学せず社会に出ていく多くの若者の国際化は、多文化共生社会を担う人材育成にとって喫緊の課題である。そのため本稿では、「内なる国際化」を留学の限界を補完しグローバル人材育成を強化する手段となるプログラムとして構築するため、必要な要素についての事前調査を行った。その結果、大学教育における内なる国際化は、学生に自己成長や行動変容を促すなどの教育的意義を持っており、大学の取組み内容においては、留学生と日本人学生との交流・協働、地域社会・産業との関わりという共通性を確認した。文部科学省が行う国際化推進事業において採択数の少ない公立大学の取組実態に焦点を当てることで、国際化の取組みを実施していない、又は実施が困難な状況にある大学においても、実現可能性が高く継続することのできる取組みの要素として、(1)キャンパス及び地域の多様性の活用、(2)チューター制度などの一定期間に渡る学生交流の活用、(3)異文化理解講座などの 1 回完結型交流の活用、の 3 つの要素が抽出された。
著者
日下 まりあ 小原 愛子
出版者
公⽴⼤学法⼈ 下関市⽴⼤学
雑誌
教育経済学研究 (ISSN:24361798)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.68-84, 2023 (Released:2023-02-28)
参考文献数
76

本研究は、大学が地域貢献の役割を果たす観点から、地域・産学官と連携した教育活動を進めていくにあたり取り組まれている PBL 教育について、実践事例報告より PBL の傾向を整理し、現状と課題について明らかにすることを目的とする。結果として地域連携に取り組む PBL の教育特性には、科目の到達目標に学生の社会的資質の向上があることや、最終成果の表現形態に文系・理系学部それぞれの特徴があることが明らかとなった。しかし、目標設定において連携先の視点や地域全体を総合的に評価できる項目が不十分であることから、今後より一層、連携先と大学・学生が地域連携の意義を明確に共有すること、また、地域全体での成果評価とそのための指標の必要性が課題となっている。