著者
木村 由美 小嶋 章吾
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Journal of Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-47, 2022-12-15

本研究の目的は,わが国の2011年から2022年までの統合失調症者の家族研究の現状を明らかにし,今後の研究課題を検討することを目的とした.統合失調症者の家族研究を概観し整理した結果【統合失調症者家族の理解】【統合失調症者家族に提供される専門職による支援】【統合失調症者家族が認識しているケア継続の支え】の3つの内容に分類された.統合失調症者の家族理解の為に,質的に家族の理解を紐解く調査が多くを占め,特にネガティブな事象から支援を検討する調査が多くポジティブな事象に着目した調査は僅少であった.一方で,家族の生活を支える地域支援体制に関する調査は僅かであり,これらの調査の積み重ねが課題である.今後は,地域での専門職による家族支援の調査を蓄積していくことに加え,ポジティブな事象とネガティブな事象の両側面から統合失調症者を介護する家族の生活を捉える調査が必要である.
著者
贄 育子 小河 達之
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Journal of Japanese Society of Human Caring Research
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-35, 2015-09-30

リプロダクティブ・ヘルス/ライツ実現への示唆を得るため、人工妊娠中絶の法規制に関する女性の意識調査を実施した。20~24 歳の女性、妊娠中の女性及び出産経験をもつ女性を対象に、母体保護法と刑法堕胎罪に関する認知、人の始期、母体と胎児の権利の優位性について調査した。その結果、母体保護法に比べて、堕胎罪に関する認知が低い一方で、その存続を望む割合が高かった。その理由は、生命の尊厳を守るためという回答が最も多かった。また、受精直後を人の始期と考えている割合が最も高かったが、母体よりも胎児の権利を優位とする割合は低かった。生命の尊厳という倫理観はもっているものの、法制度の認知度を鑑みると、女性が自らの身体やそれをめぐる法整備について関心を持ち行動しているようには考え難く、そのような機会も乏しいと推察し得る。以上のことから、リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する教育の必要性が示唆された。
著者
大釜 信政
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Journal of Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-46, 2017-09-30

本研究の目的は,高度実践看護師による訪問診療サービスに関して,在宅療養支援診療所・病院の医師の認識を明らかにすることである.医師100 名に対して,高度実践看護師との提携 を想定した場合,その看護師がもつ裁量範囲や診療にまつわる責任所在等に関する無記名自記式質問票を配布した.有効回答数は56 になった.選択肢回答の結果から,高度実践看護師の裁量範囲に関する認識において有意な偏りが認められた.自由回答からは,【高度実践看護師が行う訪問診療サービスへの賛否】【高度実践看護師に求める裁量範囲】【責任の所在】【高度実践看護師と提携するうえでの環境】【制度に対する要望】の概念を抽出した.両回答を考察した結果,高度実践看護師と医師が同じ医療機関内に所属したうえでスムースかつタイムリーなコミュニケーションを図りながら,高度実践看護師が手順書に基づいて質の高い訪問診療サービスを担うことへの期待感が示唆された.
著者
江口 実希 國方 弘子
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Journal of Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.17-26, 2015-03-31

本研究の目的は、看護師のnegative な気分に影響を与える認知プロセスを明らかにすることである。看護師を対象に自記式質問紙調査を行い、回答に欠損値がない381 名のデータを分析に用いた。認知モデルとして「看護師のスキーマ、推論の誤り、自動思考、negative な気分の因果モデル」を措定し、共分散構造分析を行った。分析の結果、モデルのデータへの適合度は良好であり(CFI:0.958、RMSEA:0.041)、スキーマから推論の誤りに向うパス係数は0.542、推論の誤りから否定的自動思考は0.533、推論の誤りから肯定的自動思考は-0.217、否定的自動思考からnegative な気分へは0.738、肯定的自動思考からnegativeな気分へは-0.155 であった。以上よりnegative な気分は、スキーマ、推論の誤り、自動思考のプロセスを経て形成されることが示唆された。