著者
佐藤 年明 Satou Toshiaki
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.171-183, 2006-03-31

本稿は、日本教育方法学会第41回大会における筆者の自由研究発表「思春期の性教育における男女別学習と男女合同学習の意味‐スウェーデン王国の事例を参考に‐」(2005年10月2日、鹿児島大学教育学部)の発表時配布資料を一部修正、加筆したものである。社会における男女平等、男女共同参画社会の推進の流れの中で、わが国の小中学校における性教育についても、かつての小学校における女子のみの初経指導と男子の放置という貧弱な性教育の実態への反省もあって、学級において男女合同で性に関する学習を行なうことが望ましいと考える関係者が多いのではないかと思われる。しかし、思春期特有の性に関する強い羞恥心と児童生徒の自らの性のprivacyを守りたいという正当な要求に配慮するならば、学習過程で男女別学習を組み込むことが効果的である場合もある。このことを日本とスウェーデンの実践事例の検討を通じて考察した。但し、性の学習における「男女」という二区分は、性自認や性志向におけるマイノリティの立場にある児童生徒がクラスに存在する場合には、却って弊害をもたらす場合もあり、当事者との協議を含む慎重な対応が必要である。
著者
手島 直美 脇田 裕久 Teshima Naomi Wakita Hirohisa
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.21-31, 2006-03-31

本研究は、健常な女子大学生15名を対象として、直立姿勢から「抜き動作」と「蹴り動作」の2条件による一歩踏み出す前進動作を行わせ、両動作の差異を筋電図および床反力を手がかりとして比較・検討した。本研究の「蹴り動作」を基準とした「抜き動作」の結果は以下の通りである。1)筋放電量は、主動筋である大腿直筋に0.1%水準の有意な増大、腓腹筋には0.1%水準の有意な減少が認められた。2)鉛直分力は、ピーク値が5%水準の有意な増大、力積には0.1%水準の有意な減少が認められた。抜重に伴う鉛直分力の最小値は、被験者体重の71%であった。3)水平分力は、ピーク値が1%水準の有意な増大、力積と平均水平分力には0.1%水準の有意な増大が認められた。4)キック角度は、0.1%水準の有意な減少が認められた。5)前進速度は0.1%水準の有意な増大が認められた。6)動作時間は、前傾動作時間が1%水準、全動作時間には0.1%水準の有意な短縮が認められた。「蹴り動作」を基準とした「抜き動作」の相対値は、腓腹筋放電量が56%の減少、前傾動作時間が22%の短縮、鉛直成分の力積が11%の減少、動作時間が11%の短縮、キック角度が1%の減少、鉛直分力のピーク値が7%の増大、水平成分の力積が12%の増大、水平分力のピーク値が15%の増大、大腿直筋放電量が49%の増大であり、これらの結果は、「抜き動作」が「蹴り動作」に比較して末梢筋活動の軽減・床反力の増大・動作時間の短縮といった多くの利点を有する効率的な動作であることを示唆するものである。
著者
桑原 克典 新田 貴士 Kuwahara Katsunori Nitta Takashi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1-29, 2005-03-31

三重大学の新田と名古屋大学の岡田によって汎関数空間上のFourier変換が定式化されたが、そこでの汎関数はƒ:{a:R→R}→Cというものを考えていた。一方、本論文ではdomainが測度空間(M, <special>μ0</special>)の場合、すなわちƒ:{a:M→R}→Cの場合を考えた。そして汎関数空間上のFourier変換を行うために、新田・岡田の理論にしたがって2回の拡大を用いるが、新田・岡田の2回の拡大がどんな*Nの無限大数よりも大きいような<special>☆(*N)</special>の無限大数の存在を保証するために、特殊なフィルターを用いていたのに対し、ここでは自然数全体の集合上のフレシェ・フィルターを含む超フィルターを用いる一般的な2回の拡大で議論を行った。そしてその結果、新田・岡田の場合と同様の結果が得られた。また、本論文は3つの章から構成されており、第1章では超準解析の議論に必要な事を簡単に述べ、第2章では超準解析の応用として知られているローブ測度空間とルベーグ測度空間の対応について、結果のみ述べる。そして最後の第3章では、本論文の題名にもなっている一般の汎関数空間上のFourier変換、但しdomainが測度空間の場合について述べる。
著者
正田 良 Showder Rio
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.201-210, 2005-03-31

明治・大正期に義務教育ではないにしても、現在の中等教育の原型とも言えるものが形成される。しかし、数学の幾何に関しては、男女差が甚だしく、不当な性差別が行われていた。その一方で、師範学校女子部では時代を経るにつれて、師範学校男子部との差が軽減されていく。この様子を、時間数や教育内容に関して、教育課程を調べ、また、教科書の緒言などの論調に関しても言及する。この男子に比べて劣るといえる条件の中にも、教科書に見られる教育的な工夫が為される余地があったこと、つまり、新しい工夫の実験の場としての可能性を秘めていたことを指摘する。
著者
中島 喜代子 廣出 円 小長井 明美 Nakajima Kiyoko Hirode Madoka Konagai Akemi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.77-97, 2007-03-30

現在「居場所」という言葉は、日常的によく使用されているが、「居場所」の概念は、一般用語としても、また研究の面においても捉え方が様々であり、明確な定義は定まっていない。そこで、本稿では、子どもの「居場所」の概念を明確にすることを目的としている。この目的を達成するため、まず一般用語としての「居場所」の概念を捉えるために、「居場所」という言葉の登場時期と使用状況を検討し、子どもの「居場所」と社会的背景との関わりの検討を行った。さらに子どもの「居場所」に関する研究を検討することにより、研究レベルの「居場所」の概念を検討した。以上の検討を踏まえ、「居場所」の定義づけを行い、また「居場所」の構造を捉えるため「居場所」の構造を検討し、さらに「居場所」の実態を具体的に捉えるため「居場所」の持つ概念の諸側面を明確にした。そして、現在の子どもの「居場所」づくり事業を検討し、今後の事業に対する提案を行った。