著者
脇田 裕久 水谷 四郎 矢部 京之助
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.49-56, 1987-06-01 (Released:2017-09-27)

It has been observed that the premotion silent period appears just before a rapid voluntary movement. This phenomenon is believed to be caused by one of the inhibitory discharge from the central nervous system. On the other hand, the silent period is also observed when muscles are relaxed by counter movement. The present study was designed to compare some physical performances of both silent periods. Twenty healthy males aged 18-24 years were subjected to a series of experiment. They were asked to maintain the posture of standing with flexed knee joint at about 50 degrees on the force plate. In the first condition, they were requested to extend their knee joint responding to a flashing lamp as quickly as possible (Non-counter movement). In the second condition, they were asked to extend knee joint as quickly as possible with counter movement to a flashing lamp. The EMG activities of M. rectus femoris, M. vastus lateralis, M. vastus medialis and M. biceps femoris were recorded using bipolar surface electrodes. Force curve from a force plate and electrogoniogram were recorded simultaneously. The following results were obtained from this experiment. 1) The rate of appearance in complete silent period was higher on the counter movement (M. rectus femoris: 37.8%, M. vastus lateralis: 81.6%, M. vastus medialis: 59.7%) than on the non-counter movement (28.2%, 57.6%,46.5%, respectively). 2) The latency of silent period was significantly later on the counter movement (M. vastus lateralis:132.8 msec, M. vastus medialis: 135.5 msec) than on the non-counter movement (119.4 msec, 116.4 msec,respectively). 3) The duration of silent period was significantly longer on the counter movement (M. vastus lateralis: 100.0 msec, M. vastus medialis: 96.6 msec) than on the non-counter movement (40.9 msec, 41.9 msec, respectively). 4) No significant difference in the rate of tension rise was found between the counter movement (3.7kg/msec) and the non-counter movement (2.7 kg/msec). 5) The peak value of the force curve was significantly greater on the counter movement (173.0 kg)than on the non-counter movement (141.2 kg). It is suggested from these results that the silent period of the counter movement delayed the reaction time (latency and duration) and increased the muscular strength in comparison with the premotion silent period.
著者
手島 直美 脇田 裕久 Teshima Naomi Wakita Hirohisa
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.21-31, 2006-03-31

本研究は、健常な女子大学生15名を対象として、直立姿勢から「抜き動作」と「蹴り動作」の2条件による一歩踏み出す前進動作を行わせ、両動作の差異を筋電図および床反力を手がかりとして比較・検討した。本研究の「蹴り動作」を基準とした「抜き動作」の結果は以下の通りである。1)筋放電量は、主動筋である大腿直筋に0.1%水準の有意な増大、腓腹筋には0.1%水準の有意な減少が認められた。2)鉛直分力は、ピーク値が5%水準の有意な増大、力積には0.1%水準の有意な減少が認められた。抜重に伴う鉛直分力の最小値は、被験者体重の71%であった。3)水平分力は、ピーク値が1%水準の有意な増大、力積と平均水平分力には0.1%水準の有意な増大が認められた。4)キック角度は、0.1%水準の有意な減少が認められた。5)前進速度は0.1%水準の有意な増大が認められた。6)動作時間は、前傾動作時間が1%水準、全動作時間には0.1%水準の有意な短縮が認められた。「蹴り動作」を基準とした「抜き動作」の相対値は、腓腹筋放電量が56%の減少、前傾動作時間が22%の短縮、鉛直成分の力積が11%の減少、動作時間が11%の短縮、キック角度が1%の減少、鉛直分力のピーク値が7%の増大、水平成分の力積が12%の増大、水平分力のピーク値が15%の増大、大腿直筋放電量が49%の増大であり、これらの結果は、「抜き動作」が「蹴り動作」に比較して末梢筋活動の軽減・床反力の増大・動作時間の短縮といった多くの利点を有する効率的な動作であることを示唆するものである。
著者
脇田 裕久 高木 英樹 Wakita Hirohisa Takagi Hideki
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.81-88, 1992-02-28

本研究は、打突の機会の一つである出端小手を対象として、仕太刀の動作開始時間・動作時間、右上肢関節角度、竹刀角度、竹刀先端速度を指標とし、熟練者群と未熟練者群の相違点を検討した。その結果、熟練者群は、打太刀の振り上げ動作が開始される前に動作を起こし、打撃動作が小さく、振り下ろし速度が速いため、動作時間が短縮し、打太刀の出端を的確にとらえた打撃が可能である。一方、未熟練者群は、打太刀の動作開始と同時に動作を起こし、振り上げ動作が大きく、振り下ろし速度が遅いため、動作時間が延長し、打太刀の出端をとらえることが困難になることが明らかにされた。
著者
脇田 裕久
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
no.36, pp.p149-157, 1985

本実験は、被検者に剣道の中段の構えにおける竹刀保持を橈側手根屈筋群による条件(母指条件)と尺側手根屈筋群による条件(子指条件)の2条件を指示し、光刺激に対してできるだけ素早く一歩踏み込んで打込台を打撃させ、竹刀の保持方法の違いによる打撃動作の影響を比較・検討した。筋電図は、上腕二頭筋、上腕三頭筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋を被検筋として、表面双極導出法を用いて記録し、動作開始時間、振り上げ時間、振り下し時間を計測した。また、打込台には荷重計を設置し、打撃圧の鉛直分力を検出するとともに、被検者の右方から16mm映画撮影法を用いて、動作分析を行った。本実験結果は、次のようである。 1)経験者群における動作開始時間は、母指条件で503ms、小指条件で481ms、振り上げ時間は、それぞれ240msと235ms、振り下し時間は212msと205msであり、母指条件に比較して小指条件の振り下し時間は有意に短縮した値を示した(P<0.05)。未経験者群の値は、それぞれ256msと267ms、301msと354ms、267msと236msであり、振り上げ時間は、母指条件より小指条件が有意に遅延した値を示した(P<0.05)。 2)経験者群における竹刀の打撃速度は、母指条件で16.7m/s、小指条件で16.5m/s、打撃力はそれぞれ36.8kgと38.4kgであり、未経験者群の値は、それぞれ18.7m/sと18.9m/s、63.3kgと58.3kgであり、各群の両条件間にはいずれも有意な差が認められなかった。 3)経験者群の各局面における関節角度は、母指条件に比較して小指条件が、中段の構えで肩関節の屈曲が有意に小さく(P<0.01)、肘関節の屈曲と手関節の内転が有意に大きく(各P<0.01)、竹刀最高位で肩関節の屈曲が有意に小さく(P<0.01)、打撃時で手関節の内転が有意に大きかった(P<0.01)。未経験者の中段の構えと竹刀最高位における関節角度には、両条件間に有意な差は認められなかったが、打撃時では母指条件に比較して小指条件が肩関節の屈曲が有意に大きく(P<0.01)、肘関節の屈曲が有意に小さかった(P<0.05)。 4)経験者群の振り上げ動作における関節角度変化は、母指条件に比較して小指条件では肘・手関節の角度変化が有意に小さく(各P<0.01)、振り下し動作では肩、手関節の角度変化が有意に大きかった(各P<0.01、P<0.05)。未経験者群の振り上げ動作については、母指条件に比較して小指条件では肘関節の角度変化が有意に小さく(P<0.05)、振り下し動作には両条件間に有意な差が認められなかった。 これらの結果は、打撃動作の未熟な未経験者群では、竹刀保持方法の違いにともなう打撃動作への顕著な影響が観察されなかったが、経験者群では、尺側手根屈筋群で竹刀を保持することが、橈側手根屈筋群での竹刀保持に比較して、振り上げ動作を小さくしてその時間を短縮し、大きな振り下し動作を短時間で遂行することによって、竹刀の打撃速度および打撃力の増大に貢献していることを示唆するものである。
著者
林 和哉 脇田 裕久
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.75-84, 2004-03-31

本研究は、動作前の自発的掛け声が局所および全身反応時間に及ぼす影響を観察し、自発的掛け声が神経・筋機能に与える影響について検討することを目的とした。局所反応動作におけるS反応動作およびF反応動作のEMG-RTは、absence試行に比較してpresence試行が有意に短縮した。IEMGについては、absence試行に比較してpresence試行が有意に増大した。全身反応時間については、EMG-RTは、absence試行に比較してpresence試行が有意に短縮した。EMD・動作時間・力積については、両条件間に有意な差が認められなかったが、平均発揮筋力はabsence試行に比較してpresence試行が有意に増大した値を示した。以上のことから、自発的掛け声は局所および全身の反応動作におけるEMG-RTを有意に短縮させるとともに、その後に続く筋力発揮にも作用をもつことが示唆され、このことについては自発的掛け声が網様体賦活系や大脳の運動準備電位の活動水準を上昇させる可能性のあることが考えられる。
著者
脇田 裕久 八木 規夫 水谷 四郎 小林 寛道
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.141-148, 1985

The stretching effect on the repeated exertion of maximum hand grip strength were investigated when the wrist joint stretching was added in different muscle groups and/or different frequencies. The subjects were six healthy males aged 18-22 years. They were asked to exert their maximum hand grip strength for 6 seconds, 20 times with 1 minute intervals between each bout. Subjects performed 6 series of experiments in different interval conditions such as, Condition-A : hold resting during each enterval, B : add stretching of dorsi-flexion (7 sec×4 times), C : add stretching of palmar flexion (7 sec×4 times), D : add stretching both palmar and dorsi-flexions, alternately (7 sec×2 times each), E : hold resting until 10th trial, and then add stretching to 20th trial in the same way as in Condition-D during each interval, F : add stretching once every 5 intervals in the same way as in Condition-D. Following results were obtained. 1) No significant differences in average impulses (kg・sec) of 20 times in maximum hand grip strength were found among different conditions. 2) The greater impulses in 11-20th trials were observed in Condition-C and -D in comparison with Condition-A (p<0.05). 3) The impulses in Condition-D were greater than Condition-B in 16-20th trials (p>0.05). 4) The greater impulses were observed in 11-20th trials for Condition-D and -F in comparison with Condition-A (p<0.05). 5) The impulses in 11-15th trials were greater in Condition-F than Condition-E (p<0.05). Therefore, stretching of palmar flexion or, both palmar and dorsi-flexions are effective to prevent the decrease of hand grip strength. Stretching of every 5 trials of 20 maximum bouts is equally effective with that of every one trial.健康な男子大学生6名(18-22歳)を被検者とし、1分間の休息期をはさみながら最大努力で6秒間の握力発揮を20試行繰り返させ、手関節へのストレッチングが握力発揮にどう影響するかを、方法、時期、頻度を違えて実施した。各試行間の休息期には、毎回安静休息を保つ条件(A)、と静的ストレッチングを加える条件(B~F)があり、後者には毎回手関節の背屈方向のみ(B)、掌屈方向のみ(C)、背屈・掌屈双方(D)、第10試行まで安静休息、その後毎回背屈・掌屈双方(E)、第5、10、15試行後にのみ背屈・掌屈双方(F)の5条件とし、合計6条件を指示した。本実験結果は、次のようである。 1)各条件下における全試行の平均力積は、いずれの条件間にも有意な差が認められなかった。 2)第11-20試行では、条件C、Dが条件Aより有意に大きな力積を示した(P<0.05)。第16-20試行では、条件Dが条件Bに比較して有意に大きな力積を示した(P<0.05)。 3)第11-20試行では、条件D、Fが条件Aより有意に大きな力積を示した(P<0.05)。第11-15試行では、条件Fが条件Eに比較して有意に大きな力積を示した(P<0.05)。 以上の結果から、休息期に毎回掌屈または背屈・掌屈双方の静的ストレッチを加えることは、安静休息を保つ場合に比較して、握力低下の抑制に効果的であり、また、その効果については、5試行ごとに加えられた静的ストレッチングと毎回のそれとの間に差のないことが明らかとされた。