著者
小山 了
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2019 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.101, 2019 (Released:2019-12-11)

【目的】本院では圧迫骨折や脊柱管狭窄症の保存療法患者に対し、治療の第一選択としてコルセットを装着し、不安定となっている骨折部の固定を行うことで、早期離床を可能とし、不動による筋萎縮・骨萎縮を予防する方法をとる事が多い。しかし、コルセット装着時の欠点として受動的に脊柱・骨盤帯の安定化が図られる為、体幹筋の働きが代償され、体幹筋の活動量の低下がおこることが考えられる。コルセット着用時の筋活動量についての報告が散見されるが、筋量または筋細胞の質的変化を検証したものは少ない。体組成計in body770にて計測可能な位相角は、細胞の栄養状態や老化程度を表す指標として使用されており、慢性疾患患者における重症度の評価に用いられている。本研究の目的は、コルセットの有無が筋量または筋細胞の質的変化にどう影響するのか位相角を用いて検証し、臨床の治療に活かすことである。【方法】 対象は、◯◯に入院または通院されたことのあるダーメンコルセット着用者35名(男性9名、女性26名、平均 79.7±12.5歳)とダーメンコルセット未着用者32名(男性8名、女性24名、平均79.4±12.0歳)とし、体組成計in body770を用い、位相角、筋肉量体重比(以下、%MV)、体幹筋量を測定した。統計処理にはSPSS ver25を使用し、コルセット着用患者とコルセット未着用患者の比較にはマンホイットニーのU検定を用いた。有意水準はいずれも5%未満とした.【結果】 コルセット着用者の入院当初の体幹筋量は15.1±3.98、2か月後は15.0±4.02であり、有意差は認められなかった。また、入院当初の位相角は3.9±0.79、2か月後は3.9±0.82であり有意差は認められなかった。コルセット未着用者の体幹筋量は入院時で14.9±3.15、2か月後の体幹筋量は15.0±3.30であり有意差は認められなかった。【考察】 今回の検証においてコルセット着用群・未着用群ともに、2か月間では体幹筋量や位相角に大きな変化はみられなかった。しかし、今回の課題として入院中のリハビリ介入を行っていたことを考慮されておらず、コルセット着用患者は、比較的体幹トレーニングを、コルセット未着用患者は下肢トレーニングを中心にリハプログラムを組む行う傾向にあった。そのことが筋量・位相角の変化がみられなかった要因とも考えられる。【まとめ】 コルセットの有無に関わらず、2か月間という期間では体幹筋量・位相角の著名な変化は見られなかった。【今後の展望】今後は、統一したリハプログラムでの検証や部位別の位相角、日中の運動量・血液データを加味し、継続した検討を行っていく。 【倫理的配慮,説明と同意】福岡県済生会大牟田病院の倫理委員会の承諾を得た上で,ヘルシンキ宣言に基づき全ての被験者には動作を口頭で説明するとともに実演,同意を得たのちに検証を行った
著者
槌野 正裕 荒川 広宣 小林 道弘 清田 大喜 岩下 知裕 堀内 大嗣 中島 みどり 高野 正太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2019 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.45, 2019 (Released:2019-12-11)

【はじめに】当院は大腸肛門病センターとして、大腸、肛門の器質的疾患や直腸肛門の機能障害に対しての診断・治療を行おり、リハビリテーション科は、便秘や便失禁症例に対する直腸肛門機能訓練に取り組んでいる。便失禁症は、2017年に発刊された便失禁診療ガイドラインによると、65歳以上の有症率は男性8.7%、女性6.6%とされており、専門的な保存治療の一つに骨盤底筋群に対するバイオフィードバック(biofeedback:BF)療法が行われ、治療の有効率は70%前後と報告されている。当院でも便失禁症例に対しては筋電図BF療法を用いているが、収縮方法を獲得できない症例を経験する。このように通常のBF療法では骨盤底筋群の収縮を獲得できない症例に対して、内閉鎖筋膜は肛門挙筋に起始を与えると報告されていることから、股関節外旋筋の収縮をさせることで骨盤底筋群の一つである外肛門括約筋の収縮を得ることが出来るのではないかと考え、検討を開始(第6回運動器理学療法学会で報告)した。今回、外旋筋を用いた骨盤底筋収縮に関する検討を継続した結果を報告する。【対象と方法】2018年5月から12月に当院で骨盤底筋群に対するBF療法を行った症例の中で無作為に選出した26例(男性4例、女性22例、平均年齢66.7±17.0歳)を対象とした。対象者の受診動機は、便秘14例、便失禁18例、その他3例(重複あり)であった。方法は、対象者をシムス体位(左側臥位)とさせ、検査者が外肛門括約筋に電極(幅5mm)が密着するように棒型双極電極を肛門に挿入する。筋電図(日本光電社製 MEB-9400シリーズ)を用いて外肛門括約筋収縮時の積分値(S:squeeze)を安静時の積分値(R:rest)で除した値(S/R)を外肛門括約筋の収縮力とした。次に対象者を腹臥位とし、股関節中間位、膝関節90°屈曲位から両側の踵部を合わせるように股関節外旋筋の収縮を促し、外肛門括約筋のS/Rを求めてシムス体位との収縮力の違いを比較した。統計学的処理にはWilcoxsonの符号順位検定を用いて検討した。【結果】外肛門括約筋の収縮力S/Rは、シムス体位の2.95(1.68~7.67)に対して腹臥位での股関節外旋筋収縮では4.80(2.32~7.70)と有意(p < 0.01)に収縮力は強くなった。しかし、外旋筋の収縮よりもシムス体位での収縮力が強い症例を4例に認めた。3例は外旋筋の収縮を行わせた方がシムス体位よりも持続収縮が可能であり、1例は安静時の活動電位も高まっていたため、収縮力としては低下していた。【考察】内閉鎖筋と肛門挙筋の関係に関しては様々な報告が散見されるが、臨床的には股関節外旋筋の収縮を促すと、肛門は腹側へ引き込まれるように動くのが確認される。内閉鎖筋膜は肛門挙筋に起始を与えており、内閉鎖筋は骨盤底において肛門挙筋と密接な関係にあるとの報告(田巻ら)から、骨盤底筋群に対するBF療法の効果を高める事が期待できると考えられる。【倫理的配慮,説明と同意】【倫理的配慮、説明と同意】当研究は、大腸肛門病センター高野病院倫理委員会の許可(第18-03番)を得て、充分な倫理的な配慮を行い実施した。