著者
廉隅 楼雄 松良 俊明
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-81, 1994-03-31

京都教育大学周辺部におけるツバメの営巣状況と,観月橋アシ原に見られた集団ねぐらの実態について調べた。ツバメの営巣期間は4月から8月上旬までであり,特に5月上旬から6月下旬にかけて盛んな育雛活動が観察された。抱卵から巣立ちまで約34日を要し,巣あたりの巣立ち雛数は約4羽であった。また巣の7割は人家の1階部分の庇につくられ,特にテント屋根の下側がよく利用されていた。ツバメはアシ原において,5月末から10月中旬まで集団でねぐらを形成することが確認されたが,8月下旬のピーク時には約25,000羽がやってきた。ねぐら入りする時の様子は,盛夏前は日没前に集まり出すが,盛夏になると日没以後に集まるというように,季節とともに変化した。アシ原内部のねぐらの位置は,大きく変動することなく,ほぼ一定の場所が利用されていた。
著者
細川 友秀 衣笠 尚子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-70, 2003-03-31
被引用文献数
1

我々の研究室は,地域社会に向けて開かれた大学をめざして教育大学としての特色ある取り組みを模索してきている。その取り組みのひとつとして,1997年の大学祭(藤陵祭)において,研究室の研究内容を地域の人々にプレゼンテーションするという企画をはじめて実施した。以降,この企画を毎年充実させる努力をしつつ6年継続してきた。2002年の企画では,例年のように「卒業研究生は専門分野の研究を理解し,その内容について一般向けのプレゼンテーションと教材化のトレーニングをすること」を主要な目的の一つとして卒業研究に関連した展示を行った。さらにそれに加えて,教材開発を卒論のテーマとする4回生が試作中のアニメーションと様々な食材に繁殖したカビを使って模擬授業を数回実施し,試作のアニメーションと模擬授業に対する実験的評価を得るためにこの機会を利用した。模擬授業は「免疫ことはじめ」というタイトルで小学校高学年から中学生を村象として,高等動物の体を微生物の感染などから守る生体防御機構についてやさしく説明するというテーマで実施された。模擬授業受講者のアンケート回収合計は54名であり,小学1〜3年生8名,小学4〜6年生14名,中学生5名,大学生11名,社会人16名であった。小学高学年から大学生の対象者うち,「理科が大好き」あるいは「理科が好き」と答えた人は,小学高学年57%,中学生40%,大学生82%であり,また,免疫のしくみについて「よく知っている」と答えた人はなく,全員が「知らない」あるいは「少しは知っている」と答えた。このような対象者が模擬授業を受けた後,小学高学年の64%,中学生の80%,大学生の82%がそれぞれ「免疫について興味をもった」と回答した。また,模擬授業の説明について,小学高学年の86%,中学生の全員,大学生の91%が「とても分かりやすい」あるいは「分かりやすい」と回答した。アンケート調査の対象が,マウスを見たりさわったりしようとする人で理科系の研究展示を見ようという人に限定された集団であることや集団が小さいことなどの理由により,アンケートの結果から明確な結論を引き出すことはできないと考える。しかし,模擬授業受講者の反応とアンケート結果は試作教材の内容と授業構成の修正点や改善の方向を考える上で大いに参考になった。2002年度の「マウスといっしょ」全体の企画には,これまでと同様に地域の小中学生とその保護者を中心として多数の人々が参加した。これまでどおり参加者には簡単なアンケートに答えてもらい,展示の感想,評価,研究室への要望を聞いた。アンケート回収分の人数は127人であった。アンケートの回収数が例年の60%程度にとどまったことが注意すべき点である。大学生・社会人の数は昨年とほぼ同じであるのに対し,小学生〜高校生の回答者が減少していることが特徴であった。ただし,今年の小中学生の参加者は過年度からのリピーターや期間中のリピーターが目立った。このことは展示そのものは参加者にとってもう一度行ってみたいと考えさせる魅力があることを示している。新規の参加者を呼び込む努力が足りなかったと考え,この点を来年の課題とする。今後もこの企画を継続することで経験を積むとともに,大学を地域に開放し大学と地域社会との結びつきを強めるための特色ある活動としていくことをめざす。
著者
山嵜 泰正
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-13, 1993-03-31

「公害」に対する私の考え方の変遷と環境教育の自覚,その発展・展開プロセスを述べる。水俣への修学旅行。水俣病患者の苦悩,「苦海浄土」を劇にした。戦後日本は高度経済成長でGNPの拡大を目指してきたが,「健康で文化的な生活を営む権利」を保障するはずの日本国憲法が公害でその根幹を虫ばまれている。新しい基本的人権として「環境権」による教育を考えた。公害教育が「義憤」を起こさせる「心を揺さぶる教育」とすれば,環境教育は科学分析の解説かマナー・生き方・道徳・倫理の問題に片寄る。やはり社会的正義感を失ってはならない。現状肯定ではなく,大量生産・大量消費・大量廃棄の社会構造に切り込んで行く厳しい社会批判の視点を忘れてはならない。