- 著者
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並松 信久
- 出版者
- 京都産業大学日本文化研究所
- 雑誌
- 京都産業大学日本文化研究所紀要 = THE BULLETIN OF THE INSTITUTE OF JAPANESE CULTURE KYOTO SANGYO UNIVERSITY (ISSN:13417207)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, pp.236-200, 2020-03-31
2013(平成25)年12 月に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録された。当初、「会席料理を中心とした伝統をもつ特色ある独特の日本料理」を登録申請するはずであったが、その代わりに「和食」が申請された。和食は会席料理を含む広い概念とされるが、抽象的な概念であるので、具体性に乏しく、曖昧なものである。しかし、多くの研究では、和食と京料理、あるいは和食と日本食の区別が曖昧なまま論じられていることが多い。 そこで本稿は、まず京料理の展開の背景となった京都市域の農業の特徴を明らかにし、食文化との関連性を考えた。京都の独特な食文化の形成は、都市農業の特性が発揮された結果である。現在に至る京料理に影響を与えたのは、会席料理である。無形文化遺産「和食」は会席料理を含み、自然の尊重や年中行事などの日本文化との関連性や、栄養バランスなどの日本型食生活を意識した食文化であるとされている。 しかし、この和食の特徴は歴史的にも地域的にも、全国一律にみられるものではない。日本各地の郷土料理が全国的に普及しているわけではない。このことは、無形文化遺産の登録要件である「国民の間に広く定着している」に抵触する。つまり、和食は具体性をもたせようとすれば、特定できない曖昧な料理になってしまう。あえて和食のイメージを京料理に求めるとすれば、生産地と消費地が同一の都市で生まれた日本型食文化となる。具体的には、長きにわたって育まれてきた「見立て」ないし「もどき」料理、あるいは年中行事の「因み」料理になるであろう。