著者
荒川 雪 アラカワ ユキ
出版者
神奈川大学人文学研究所
雑誌
人文学研究所報 = Bulletin of the Institute for Humanities Resarch (ISSN:02877082)
巻号頁・発行日
no.67, pp.169-190, 2022-03-27

本稿は,中国留日同学総会の機関紙『中国留日学生報』に掲載された記事の分析を通じて,中華民国政府(国府)と中華人民共和国政府(人民政府)がそれぞれ,日本における中国人留日学生の全国組織とその会員である中国人留学生を取り込もうとする過程を考察した。 中国留日同学総会は,国府の駐日代表団の指導で発足した中国人留学生の組織であったが,1948年から親共産主義的な思想が強くなり,中華人民共和国の成立後,親中国共産党の姿勢を継続していた。これに対し,国府側は硬軟織り交ぜて中国留日同学総会を引き戻そうとしたものの,親中国共産党の思想傾向の転換には至らなかったことが記事分析を通じて確認された。 また,国府に代わって影響力を強めた人民政府が留日学生の帰国を奨励した結果,中国留日同学総会は,台湾を含む中国からの留日学生のための組織から在日華僑学生の組織に変容し,『中国留日学生報』の記事内容も華僑向けに変わったことも明らかとなった。
著者
松本 和也 マツモト カツヤ
出版者
神奈川大学人文学研究所
雑誌
人文学研究所報 = Bulletin of the Institute for Humanities Resarch (ISSN:02877082)
巻号頁・発行日
no.66, pp.1-20, 2021-09-27

本稿では,昭和10年代(1935~1944)における地方文化(運動)を主題とした言説を,特に文学言説を軸として分析― 考察した。Ⅱでは,地方主義文学や故郷・郷土を語る文学言説を通じて「地方(文化)」という概念が注目されていた様相を確認する。Ⅲでは,昭和15年の日本文化論の再評価と連動して展開された地方文化言説について,再燃していく地方文学を中心に検証した。この時期,「地方」には,内地の周辺部と外地の日本が含まれていた。Ⅳでは,大政翼賛会文化部が主導した地方文化運動に注目し,文化部メンバーの発言や地方での受容などを分析した。この時期には,国民文化=地方文化を大東亜文化,世界文化へと展開していく回路も言説化されていった。太平洋戦争開戦後を扱うⅤ・Ⅵでは,疎開も含めて,地方文化(運動)が「戦力」として位置づけられていく地方文化言説を検証した。ここで地方文化言説は,文化と生活とが「戦力」において一体化する帰結を迎える。
著者
松本 和也 マツモト カツヤ
出版者
神奈川大学人文学研究所
雑誌
人文学研究所報 = Bulletin of the Institute for Humanities Resarch (ISSN:02877082)
巻号頁・発行日
no.68, pp.1-20, 2022-09-27

本稿では,明治末年における劇壇の新機運について再検討する。明治時代の演劇史についての先行研究は多々あるが,そのほとんどは,個別の演劇人,作品,興業などについてのものであった。それに対して,本稿では,演劇の近代化―西洋化がしきりに議論されていた,明治末年の劇壇を対象とした言説を検討対象とする。第1章では,明治時代の演劇史と自由劇場に関する先行研究をレビューすることで,本論のねらいを明らかにした。第2章~第4章では,時期を区切りながら明治末年における劇壇の言説を調査―分析した。この時期の言説上では,第一に西洋劇の上演組織,第二に雑誌の創刊,第三に新しい脚本,第四として帝国劇場の開場,そして最後に象徴劇(気分劇―情調劇)の隆盛を軸に,劇壇の新機運が語られていたことを確認した。第5章では,大正時代から振り返って,明治時代の演劇がどのように語られていたかを分析―考察して,結論にかえた。
著者
松本 和也 マツモト カツヤ
出版者
神奈川大学人文学研究所
雑誌
人文学研究所報 = Bulletin of the Institute for Humanities Resarch (ISSN:02877082)
巻号頁・発行日
no.57, pp.19-37, 2017-03-25

In this paper, I conducted a survey on reviews in monthly literary magazines in the second decade of the Showa era. The survey focused on the four types of general magazines( “Chuoukouron”,“Kaizo”,“Bungeishunjyuu” and“Nihonhyouron”). After introducing the research situation on the reviews, I obtained data on the posting situation of that 10 years. As a result, I found that review postings were less than expected. In addition, two years earlier than the end of the war, I also found that the reviews had disappeared from those magazines.
著者
孫 安石 ソン アンソク
出版者
神奈川大学人文学研究所
雑誌
人文学研究所報 = Bulletin of the Institute for Humanities Resarch (ISSN:02877082)
巻号頁・発行日
no.58, pp.171-205, 2017-09-25

〈小特集〉国際シンポジウム「上海租界と行政(一)」