著者
山本 奈生
出版者
佛教大学社会学研究会
雑誌
仏大社会学 (ISSN:03859592)
巻号頁・発行日
no.31, pp.81-85, 2006

いわゆる「生活安全条例」や「コミュニティ・ポリッシング」の理論的背景として脚光を浴びてきたケリングらの「割れ窓理論」は,近年いくつかの批判に晒されている。本稿では,「割れ窓理論」に対するこれまでの批判点を概観し,論点を整理した上で,「割れ窓理論」が抱える困難と隠された社会的コストについて考察する。ここで主張されるコストとは, 1)「犯罪のリスク」が高いとされる人口集団に対する抑圧と排除, 2)都市空間そのものが内部に向かって規範化され,「ゲーテッド・コミュニティ」へと進展する可能性,の二点である。割れ窓理論人口への<生―政治>ゲーテッド・コミュニティ
著者
新矢 昌昭
出版者
佛教大学社会学研究会
雑誌
仏大社会学 (ISSN:03859592)
巻号頁・発行日
no.27, pp.35-45, 2002

ウェーバーの支配理論において論じられている「カリスマ的支配」から「伝統的支配」への変化は,徳川政権の誕生から安定化を考察する有効な一っの方法であると思われる。カリスマにとってはその「使命」が重要である。日本においてこの使命は,鎌倉期以降,武家政権の正統的根拠である天道思想であった。しかしこの天道思想は,政権の交代も正当化するので,不安定であった。従って,徳川政権の安定化のためにはこの天道思想を変容し伝統化しなければならなかったのである。では,この天道思想が徳川政権誕生にどのように関わり政権g安定化の中でどのようにして変容していったのだろうか。更には,天道思想を正統的根拠とする将軍と,神孫為君を正統的根拠とする天皇がどのようにして正当性のバランスをとっていたのだろうか。本稿の目的は,天道思想を中心にこれらの点を明らかにする試みにある。天道思想力リスマ的支配正統的根拠