著者
壬生 幸子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = 共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.15, pp.237-252, 2017-03-31

『古事記』仲哀記の香坂王・忍熊王の反乱物語における息長帯比売軍の二つの策略-品陀和気を喪船に乗せる「死」の偽装と、息長帯比売の偽りの「死」の布告-は、『日本書紀』にはない。この『古事記』独自のプロットにより物語は、天皇空位期における異母兄弟の争いにおいて皇統上劣位にある品陀和気・息長帯比売母子が、擬似的な「死」を潜り抜け、次代の天皇とその母としての地位を確保した物語となる。文脈と表現の検討から「赴喪船将攻空船尓自其喪船下軍相戦」は、忍熊王は喪船には品陀和気の遺骸と息長帯比売が乗ると見、息長帯比売を討ち取ろうと攻めたが、息長帯比売は予め喪船に軍兵を乗せており両軍の戦闘となった、という状況を表現したものと解釈される。「赴」はおもむく意の自動詞、「空船」は軍兵を乗せない船と解する。忍熊王が喪船に攻めかかった目的は、上記行文に先立つ「待取」という表現の検討から、息長帯比売を討ち取り殺すことと解する。

1 0 0 0 OA 上代の雨

著者
壬生 幸子 Sachiko Mibu
巻号頁・発行日
vol.16, pp.265-276, 2000-03-31
著者
壬生 幸子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.201-214, 2018-03-31

『記』『紀』のオケ王(仁賢天皇)・ヲケ王(顕宗天皇)兄弟の物語には,王統上重要な二王の即位の正当性を語るとともに,王統譜においてとりわけ重要な位置にあるオケの正統性を語る狙いがある。『古事記』は,ヲケとシビの歌垣と,それに続く二王によるシビ討伐のプロットを物語に組み込むことでこの狙いを達成した。二王がシビを武力討伐し,さらにオケが王位継承を宣明することで,二王の即位の正当性とオケの正統性を示している。また,二王の姨・イヒトヨ王の,二王の即位への関与は抑制的に記される。二王はシビ討伐により自らの力で王権を掌握したのであって,そこに日継を知らす王として認められていたはずのイヒトヨ王の関与をみることはできない。

1 0 0 0 OA 上代の雨

著者
壬生 幸子
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:09115358)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.265-276, 2000-03-31
著者
壬生 幸子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = Journal of kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.16, pp.201-214, 2018-03-31

『記』『紀』のオケ王(仁賢天皇)・ヲケ王(顕宗天皇)兄弟の物語には,王統上重要な二王の即位の正当性を語るとともに,王統譜においてとりわけ重要な位置にあるオケの正統性を語る狙いがある。『古事記』は,ヲケとシビの歌垣と,それに続く二王によるシビ討伐のプロットを物語に組み込むことでこの狙いを達成した。二王がシビを武力討伐し,さらにオケが王位継承を宣明することで,二王の即位の正当性とオケの正統性を示している。また,二王の姨・イヒトヨ王の,二王の即位への関与は抑制的に記される。二王はシビ討伐により自らの力で王権を掌握したのであって,そこに日継を知らす王として認められていたはずのイヒトヨ王の関与をみることはできない。
著者
壬生 幸子
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = 共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.15, pp.237-252, 2017-03-31

『古事記』仲哀記の香坂王・忍熊王の反乱物語における息長帯比売軍の二つの策略-品陀和気を喪船に乗せる「死」の偽装と、息長帯比売の偽りの「死」の布告-は、『日本書紀』にはない。この『古事記』独自のプロットにより物語は、天皇空位期における異母兄弟の争いにおいて皇統上劣位にある品陀和気・息長帯比売母子が、擬似的な「死」を潜り抜け、次代の天皇とその母としての地位を確保した物語となる。文脈と表現の検討から「赴喪船将攻空船尓自其喪船下軍相戦」は、忍熊王は喪船には品陀和気の遺骸と息長帯比売が乗ると見、息長帯比売を討ち取ろうと攻めたが、息長帯比売は予め喪船に軍兵を乗せており両軍の戦闘となった、という状況を表現したものと解釈される。「赴」はおもむく意の自動詞、「空船」は軍兵を乗せない船と解する。忍熊王が喪船に攻めかかった目的は、上記行文に先立つ「待取」という表現の検討から、息長帯比売を討ち取り殺すことと解する。