著者
水島 治郎
出版者
千葉大学法学会
雑誌
千葉大学法学論集 = Chiba journal of law and politics (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1-25, 2015-03

第二次世界大戦が終結して七〇年目となる二〇一五年。「戦後」の平和と繁栄を長期にわたって謳歌してきたはずの西ヨーロッパでは、一月初旬からイスラム過激派に関わる事件が相次ぎ、騒然とする年明けとなった。まずフランスでは、預言者ムハンマドの風刺画を掲載したシャルリー・エブド紙が襲撃されて一二人が死亡する悲劇的な事件をはじめ、イスラム過激派による事件が相次いで発生した。次にベルギーでは、大規模なテロを計画していたとされるイスラム過激派を警察が一斉に摘発したが、そのさい銃撃戦が発生し、二人が死亡した。二月にはデンマークで、「表現の自由」をめぐる会合が襲撃されて二人が死亡するなどの事件が続いた。他のヨーロッパ各国も同様のテロを強く警戒しており、ヨーロッパが新たな「戦い」の渦中に入りつつあるようにさえ見党である。近年「イスラムの脅威」を強調し、イスラム系移民の排除を訴えてきたポピュリズム政党は、これらの事件によって自らの主張の正しさが立証されたとしたうえで、既成政党の無策を批判するとともに、イスラム批判を一層声高に唱えている。この事件以後、イタリアの北部同盟の党首はイスラムを「危険な宗教」と批判し、デンマーク国民党の議員は急進的とされるモスクの閉鎖を要求した。フランス国民戦線の幹部であるド・サン=ジュスト(Wallerand deSaint-Just)は、イスラムは「宗教法と市民法を混同」し、フランス国家の世俗的性格を認めない宗教であるとしたうえで、「他のいかなる宗教よりも狂信者を生み出す傾向がある」と断言した(Al Jazeera America, 2015)。オランダ自由党のウィルデルスは、
著者
大林 啓吾
出版者
千葉大学法学会
雑誌
千葉大学法学論集 = Chiba journal of law and politics (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.132-98, 2015-01

本稿は、2014年3月に出した拙稿「休会任命をめぐる憲法構築」の続編である。前作では、休会任命の歴史的展開を概観しながら、特に会期内休会任命の是非や欠員の時期など休会任命の射程をめぐる憲法構築を考察した。休会任命に関する憲法構築は、主として政治部門によって形成されてきたが、その射程については時代や状況によって変化してきた。ただし、下級審レベルでは、司法の場に争いが持ち込まれることもあった。これまで、連邦高裁は大統領が行った休会任命を合憲と判断してきたが、Noel Canning v. NLRB連邦高裁判では初めて違憲判決が下され、注目を集めていた。そして、2014年6月26日、その上告審判決が下された。休会任命の憲法構築を語るにあたり、この連邦最高裁判決の分析は欠かせない。本件は、これまで政治部門間で実践されてきた休会任命をめぐる憲法構築に関して、連邦最高裁が介入したことで注目されると同時に、その判断方法につき原意と近時の慣行のどちらを優先すべきかという問題が浮上し、原意主義をめぐる問題が付随しているという点でも興味深い。また、本件の結果が大統領と上院のどちらに有利になったのかについて大統領側と上院側で受け止め方が異なっており、その分析も重要である。本稿では、NLRB v. Noel Canning連邦最高裁判決に焦点を絞り、本判決の分析を試みることにしたい。
著者
水島 治郎 ミズシマ ジロウ MIZUSHIMA Jiro
出版者
千葉大学法学会
雑誌
千葉大学法学論集 = Chiba journal of law and politics (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1-25, 2015-03

第二次世界大戦が終結して七〇年目となる二〇一五年。「戦後」の平和と繁栄を長期にわたって謳歌してきたはずの西ヨーロッパでは、一月初旬からイスラム過激派に関わる事件が相次ぎ、騒然とする年明けとなった。まずフランスでは、預言者ムハンマドの風刺画を掲載したシャルリー・エブド紙が襲撃されて一二人が死亡する悲劇的な事件をはじめ、イスラム過激派による事件が相次いで発生した。次にベルギーでは、大規模なテロを計画していたとされるイスラム過激派を警察が一斉に摘発したが、そのさい銃撃戦が発生し、二人が死亡した。二月にはデンマークで、「表現の自由」をめぐる会合が襲撃されて二人が死亡するなどの事件が続いた。他のヨーロッパ各国も同様のテロを強く警戒しており、ヨーロッパが新たな「戦い」の渦中に入りつつあるようにさえ見党である。近年「イスラムの脅威」を強調し、イスラム系移民の排除を訴えてきたポピュリズム政党は、これらの事件によって自らの主張の正しさが立証されたとしたうえで、既成政党の無策を批判するとともに、イスラム批判を一層声高に唱えている。この事件以後、イタリアの北部同盟の党首はイスラムを「危険な宗教」と批判し、デンマーク国民党の議員は急進的とされるモスクの閉鎖を要求した。フランス国民戦線の幹部であるド・サン=ジュスト(Wallerand deSaint-Just)は、イスラムは「宗教法と市民法を混同」し、フランス国家の世俗的性格を認めない宗教であるとしたうえで、「他のいかなる宗教よりも狂信者を生み出す傾向がある」と断言した(Al Jazeera America, 2015)。オランダ自由党のウィルデルスは、
著者
石田 憲 イシダ ケン ISHIDA Ken
出版者
千葉大学法学会
雑誌
千葉大学法学論集 = Chiba journal of law and politics (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.115-157, 2015-08

『千葉大学法学論集』第30巻第1・2号 遠藤美光先生・小賀野晶一先生 退職記念号Hogaku Ronshu(Chiba Journal of Law and Politics) Vol.30 No.1・2 Essays in Honor of Professors Yoshiteru Endoh and Syoichi Ogano at their Retirement from Chiba University