著者
阿部 智和
出版者
北海道大学大学院経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 = The annals of Research Center for Economic and Business Networks (ISSN:21869359)
巻号頁・発行日
no.3, pp.87-101, 2014-03

本論文の目的は,わが国で積み重ねられてきたオフィス空間のデザインに関する研究知見のうち,とりわけ2000年以降の研究の到達地点を明らかにすることにある。本論文で2000年以降の研究蓄積に注目を向ける理由は,経営学者たちもオフィス空間のデザインを重要視し始めたことにある。より具体的には,この時期を契機として,知的創造や知識創造を促すオフィス空間のデザインを志向した研究が創始されているのである。1990年代までのオフィス空間内の快適性の向上を志向した研究とは異なり,建築学者や実務家たちだけではなく,一部の経営学者たちからもオフィス空間のデザインに対して注目が向け始められたのである。 本論文で明らかにする先行研究が辿り着いた研究知見は,以下の3点に集約することができる。より具体的には,①実務家や一部の経営学者たちによって知的生産性を向上させるオフィス空間のデザインへの注目が向けられ,実際にオフィス空間の設計が行なわれてきたこと,②建築学者を中心として知的生産性を計量的に把握する試みが積み重ねられ,定量的なデータにもとづいたオフィス空間のデザインが志向されてきたこと,③経営学者たちがコミュニケーションを鍵概念にして,オフィス空間のデザインについて考察を加えてきたこと,の3点である。最後にこれらの研究の貢献と残された問題を明らかにし,今後の研究課題を提示する。
著者
ウマロヴァ グルバホル 樋渡 雅人
出版者
北海道大学大学院経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 = The annals of Research Center for Economic and Business Networks (ISSN:21869359)
巻号頁・発行日
no.4, pp.147-155, 2015-03

「マハッラ」とは,現在のウズベキスタン共和国において,末端の行政単位として機能している地域共同体である。自治的な共同体としての歴史は古く,そこには昔ながらの親密な人々のつながりが根付いてきた。独立後の同国政府は,マハッラの人的ネットワークを,開発政策,政治活動,治安等の様々な局面において,政策的に利用する方針を打ち出してきた。マハッラは,ウズベキスタンの将来において,自律的な地域経済や地方分権の発展の礎を担い得る存在として期待されているといえる。本稿は,この「マハッラ」が自治的共同体として発展し,独立後に政策的に活用されるに至った歴史的経緯を,歴史文献に依拠しながら振り返ることで,ウズベク民族にとっての「マハッラ」の社会的意義を論じている。