著者
中村 将人
出版者
北海道大学大学院経済学研究院地域経済経営ネットワーク研究センター
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 (ISSN:21869359)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.61-74, 2020-03-30

寿都鉄道は,大正期から昭和中期にかけて北海道後志地方に存在した局地鉄道であり,国有鉄 道に買収してもらうことを前提に,当面の輸送手段確保のために地元資本によって敷設された当座企業 であったと言われる。大正期の鉄道業では減価償却が実施されつつあったが,その根底にあるのは「継 続企業の公準」であり,換言すると安定的な減価償却は継続企業性を示す指標であった。寿都鉄道の減 価償却実務を分析すると,処分可能剰余金に感応的な計上額ではあるが減価償却を実施しており,未成 熟ながらも継続企業性を模索していたことが判明する。