- 著者
-
濱田 康行
川島 一郎
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究院地域経済経営ネットワーク研究センター
- 雑誌
- 地域経済経営ネットワーク研究センター年報 (ISSN:21869359)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.65-91, 2021-03-26
状況(2021年初頭)を見れば,まさに大災害:Disasterに見舞われている。世界のコロナ感染者数と死者数をみるだけで,それは明らかである。そして,経済は深刻な不況であり,2021年が明けて一段と深まる気配だ。しかし,2020年11月,あらゆる状況が悪化する中でダウ平均株価は“夢の3万ドル”を達成した。この状況を理論に基づいたフレームワークの中で,かつデータに基づいて分析するのが,一連の研究の目的である。課題は二つに分けられる。第一は,株式市場の繁栄が人々の幸福・経済の状況とあまり関係がないように見えるが,それはなぜか?国際決済銀行(BIS)のレポートの表現を借りれば,Disconnected(非関連)なのはなぜか。第二は,そもそも,この高株価を生み出した要因は何か,特に内的要因を探ることである。第一のテーマは,2020年8月に発表した論文が,そして第二のテーマを本稿が扱っている。第1節では,株価を決定するのは,基本的に当該企業の業績・収益の状況によるとする株価第一原則について解説する。第2節は,過去のデータから株価の算定式を導き,この式でダウ平均3万ドルを判定している。今回の株高がバブルなのかどうか,それを問う試論である。第3節では,株価第一原則だけで説明できなくなった時に浮かび上がってくる要因について述べ,さらに,この要因の説明力を強める状況を示す。ここで従来の株価理論へのいくつかの疑問も呈示している。第4節では,マクロ的視点から,以上展開したことを総括する。金融概念図を使って株式市場の概念的位置の移動があったこと,その原因のひとつが株式市場の巨大化であることを主張している。最後に,全体のまとめ,および今後の研究方向を示してむすびとしている。