著者
幸田 良介 虎谷 卓哉 辻野 智之
出版者
地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所
雑誌
大阪府立環境農林水産総合研究所研究報告 (ISSN:21886040)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-19, 2014 (Released:2020-04-02)

シカによる森林植生被害状況を広域的に把握するために,森林下層植生の植被率とシカによる採食痕跡の有無を調査し,IDW法を用いて下層植生衰退度の空間分布図を作成した.下層植生衰退度の区分結果は他の森林構成要素への被害状況と有意な相関関係を示しており,シカによる森林植生への被害指標として妥当であると考えられた.下層植生衰退度には地域差が見られ,概ねシカ目撃効率の高い地域で衰退度も高くなっていた.大阪府では今のところ極端に高い衰退度の地域は認められないものの,シカ生息密度の増加傾向が継続していることから,モニタリングの継続が必要だと考えられた.今後はシカ密度分布状況をより詳細に把握し,下層植生衰退度とシカ密度の関係を定量的に評価していくことが求められる.
著者
幸田 良介 小林 徹哉 辻野 智之 石原 委可
出版者
地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所
雑誌
大阪府立環境農林水産総合研究所研究報告 (ISSN:21886040)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-13, 2015 (Released:2020-04-02)

シカによる人工林被害状況を広域的に把握するために, スギ・ヒノキ人工林において剥皮被害割合を調査し,IDW 法を用いて剥皮被害度の空間分布図を作成した.スギ林での剥皮被害度は全体的に低く,大阪府ではスギよりもヒノキの方が剥皮被害を受けやすい傾向にあると予想された.スギ林の剥皮被害度には被害地域の偏りが見られなかったのに対し,ヒノキ林での剥皮被害度は北摂の西側地域でのみ高く,被害地域の明確な偏りが見られた. 剥皮被害度の分布状況は落葉広葉樹林での下層植生衰退度の分布状況と一致せず,剥皮被害の発生にはシカ生息密度以外にも様々な環境要因が影響しているものと予想された.今後は剥皮害発生状況とシカ生息密度や様々な環境要因との関係について解析していくことが求められる.
著者
瓦谷 光男 三輪 由佳 磯部 武志 細見 彰洋 岡田 清嗣
出版者
地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所
雑誌
大阪府立環境農林水産総合研究所研究報告 (ISSN:21886040)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.20-22, 2014 (Released:2020-04-02)

培地上の株枯病菌は25℃前後に生育適温があり,34℃で生育が停止し,40℃で1日培養すると死滅した.菌叢片または子嚢殻は,45℃120分以上,47℃30分以上,50℃7分以上の熱処理により死滅した.イチジクの素掘り苗(土なし)は,45℃4時間,47℃30分間,50℃20分間の温湯処理により,また,ポット苗(土付き)は42℃1日の湿熱処理により株枯病防除が可能と考えられる.
著者
田中 寛
出版者
地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所
雑誌
大阪府立環境農林水産総合研究所研究報告 (ISSN:21886040)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2015 (Released:2020-04-02)

トノサマバッタは相変異を持つ飛蝗の一種であり,西アフリカ,中国などでしばしば大発生する.日本のトノサマバッタを調査したところ,西アフリカ,中国と同等の相変異を有すること,生活史がヨーロッパ,アフリカと同様であることが明らかになり,一方,西アフリカや中国のような大発生に適した生息地がほとんど存在しないこともわかった.これらの結果の比較検討により日本ではトノサマバッタがなぜ大発生しにくいか,なぜ大発生が継続しにくいかについて考察した.関西国際空港では1994~97年に一期島,2007年に二期島でトノサマバッタが大発生し,危機管理として空港での飛行機事故を防止するために,調査と防除の基本戦略を設定した上で防除を行った.
著者
平康 博章 瀬山 智博 和智 仲是 吉田 弦 笠井 浩司 藤谷 泰裕
出版者
地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所
雑誌
大阪府立環境農林水産総合研究所研究報告 (ISSN:21886040)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-5, 2017 (Released:2020-04-02)

アメリカミズアブの幼虫は様々な有機物を摂食して減量し,成長した幼虫は飼料利用が可能であるため,食品廃棄物処理への利用が期待される.本研究ではどのような種類の食品廃棄物が幼虫による処理に適しているかを検討した.野菜・果物・炭水化物・肉・魚の5カテゴリーの食品廃棄物を幼虫に処理させ重量減少や幼虫の成長を比較した.野菜・果物・炭水化物カテゴリーは肉・魚カテゴリーよりも廃棄物重量の減少率や幼虫回収重量・幼虫生存率が高く,幼虫による処理に適していることが示された.5カテゴリーを混合したモデル生ごみはそれらの値がさらに高かったため,家庭から排出される食品廃棄物は幼虫により効率よく処理可能であると考えられた.食品廃棄物に塩分もしくは脂肪分を添加して幼虫処理に対する影響を調べたところ,塩分含有率は1.0%w/w,粗脂肪含有率は5.0%w/wを越えると食品廃棄物の重量減少率が有意に低下した.アメリカミズアブ幼虫は食品廃棄物に含まれる程度の塩分に影響を受けないが,脂肪分の含有率に関しては注意が必要であると考えられた.本研究は環境省の環境研究総合推進費(1-1604)により実施された.また,試験供試虫のうちつくば市の野外集団由来の幼虫は(国研)国際農林水産業研究センターの中村 達主任研究員から提供頂いた.