著者
瓦谷 光男 三輪 由佳 磯部 武志 細見 彰洋 岡田 清嗣
出版者
地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所
雑誌
大阪府立環境農林水産総合研究所研究報告 (ISSN:21886040)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.20-22, 2014 (Released:2020-04-02)

培地上の株枯病菌は25℃前後に生育適温があり,34℃で生育が停止し,40℃で1日培養すると死滅した.菌叢片または子嚢殻は,45℃120分以上,47℃30分以上,50℃7分以上の熱処理により死滅した.イチジクの素掘り苗(土なし)は,45℃4時間,47℃30分間,50℃20分間の温湯処理により,また,ポット苗(土付き)は42℃1日の湿熱処理により株枯病防除が可能と考えられる.
著者
細見 彰洋 瓦谷 光男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.29-32, 2004 (Released:2011-09-12)
参考文献数
10
被引用文献数
8 6

いや地対策として選抜され,台木としての利用が普及しつつあるイチジク‘Zidi’や‘King’について,イチジク株枯病抵抗性の強度を明らかにするため,抵抗性が強いとされる‘Celeste’と,抵抗性が弱く本病の被害が問題になっている主要品種‘桝井ドーフィン’との間で抵抗性の比較を行った。1. 予めPDA培地で前培養し,培地ごと直径5mmに打ち抜いた株枯病菌Ceratocystis fimbriata の菌そうを直径8cmに切った供試品種の葉片に付傷接種した。その結果,接種部位からの病斑の広がりは‘Celeste’で遅く,‘King’や‘桝井ドーフィン’で速く,‘Zidi’はその中間にあった。2. 予めPDA培地で培養したC. fimbriata の菌そうを,培地ごとミキサーで粉砕して蒸留水に懸濁し,供試ポット苗の用土にかん注接種した。その結果,何れの品種においても病斑が形成され,C. fimbriata が再分離された。但し,‘Celeste’は接種後90日間ほとんど枯れなかったのに対し,‘Zidi’や‘King’は‘桝井ドーフィン’と同様に62%~89%の苗が枯死した。以上の結果から,いや地対策の台木として開発されたイチジク品種のイチジク株枯病抵抗性は,明らかに‘Celeste’より弱く,これらの台木を使った栽培においても,本病に対する注意が必要と考えられた。
著者
細見 彰洋 三輪 由佳 古川 真 瓦谷 光男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.159-165, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
19
被引用文献数
11 12

日本の主要イチジク品種‘桝井ドーフィン’については,病原菌(Ceratocystis fimbriata)によるイチジク株枯病(以下,株枯病)が深刻である.そこで本病抵抗性が期待される‘Celeste’,‘Boldido Negra’,‘Ischia Black’,‘Negronne’の 4 品種の耐病性を検証し,‘桝井ドーフィン’用の抵抗性台木としての能力を検討した.砂礫 350 mL を培地とする根箱の‘Celeste’苗は,培地への病原菌の接種直後から根の伸長が抑制され,根の呼吸速度は接種 2 ヶ月後には低下し,細根は伸長が停止して病斑を生じた.用土 3.5 L で鉢栽培した 4 品種は,病原菌の土壌かん注 5 ヶ月後の調査で地下部には病斑が確認された.しかし,全個体は生存し,大量の菌を接種しなければ根の呼吸速度は低下せず,‘Celeste’以外では葉重,新梢重および根重の有意な減少はなかった.4 品種を台木とする‘桝井ドーフィン’樹を用土 22 L のコンテナで栽培し,病原菌を接種すると,2 年目には一部の個体が枯死し,全般に接ぎ穂や根の生育が減退する傾向にあったが,‘Negronne’台木には,枯死や有意な生育の低下は認められなかった.4 品種を台木とする‘桝井ドーフィン’樹は株枯病汚染ほ場でも枯死が少なく,定植後 5 年間はその大半が枯死を免れた.この間,穂木‘桝井ドーフィン’の生育に,経年的な明らかな樹勢衰弱はなかった.以上から,4 品種については,株枯病の被害を受けながらも生存を維持する「ほ場抵抗性」が実証され,台木の耐病性は‘Negronne’が最も期待できた.