著者
吉川 修司
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.40-47, 2016

<p>【問題と目的】精神分析を教育に応用する試みは,エビデンスベースドな風潮の中でほとんど顧みられてこなかった。しかし,近年英国を中心として,教育における精神力動的な見方や,関係性を重視したアプローチが再び注目されるようになってきている。そこで本稿では,精神分析が教育に応用されてきた歴史を振り返ったうえで,クライン(Klein, M.)の「投影同一視(projective identification)」の概念を援用しながら実際の事例を考察し,教師が精神分析的な視点を持つことの可能性について論じた。その結果,精神分析の概念は,事例で起きている現象を理解するのに有効であると考えられた。今後,実際の指導場面で教師が行う生徒理解に,精神分析学をはじめとする深層的な概念や理論を援用する研究が進められることで,より多面的な理解が可能になると思われ,生徒支援の新たな視座が開ける可能性が示唆された。</p>
著者
堀 匡 小林 丈真
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.41-48, 2010-10-01
被引用文献数
1

本研究は,大学生の愛着スタイルとソーシャルスキル,友人サポート,精神的健康状態との関連について検討することを目的とした。大学生を対象に質問紙調査を実施し,回答に欠損のない650名(男性264名,女性386名)を分析対象とした。分析は,まず,愛着スタイル尺度に関してクラスター分析を行った。その結果,安定群,アンビバレント群,回避群という3つのクラスターが抽出された。その後,各クラスターを独立変数ソーシャルスキル,友人サポート,精神的不健康度を従属変数とする一元配置の分散分析を行った。分散分析の結果, 1)アンビバレント群は,関係開始,主張性,感情統制,関係維持スキル得点が安定群,回避群に比べて有意に低く,解読,記号化スキル得点は安定群に比べて有意に低いこと, 2)回避群は,関係開始,解読,関係維持,記号化スキル得点が安定群に比べて有意に低いこと, 3)回避群は友人サポート得点が,安定群,アンビバレント群に比べて有意に低いこと, 4)アンビバレント群は,安定群,回避群に比べて精神的不健康度が有意に高いことが明らかとなった。以上の結果から,1)アンビバレント群では,主張性,感情統制,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが,2)回避群では,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが心理・社会的適応状態の改善に有効であることが示唆された。
著者
齋藤 暢一朗 福原 俊太郎 川西 智也 細川 直人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.51-58, 2009-09-30

本研究では小学校スクールカウンセラーが実践上感じる困難感とその対処様式から,小学校スクールカウンセラーの課題と可能性について質的方法を用いて検討した。調査の結果,現場に何らかの問題が生じていても,スクールカウンセラーとして期待される役割をスムーズには発揮されない場合があり,様々な関係性の中で実践することの困難状況が浮かび上がった。こうしたスクールカウンセラーが遭遇する多重関係を筆者らは階層的な次元性を想定し,一次関係と二次関係という概念を仮定して検討を行った。その結果,小学校スクールカウンセラーは周囲と非相談的な「一次関係」を基盤として,「二次関係」となる相談関係を周囲と構築することの重要性が示唆された。また,校内外との連携においても「一次関係」の基盤が重要になってくるなど,関係の多重性と階層性が検討され,スクールカウンセラーの実践としての特徴と可能性が考えられた。
著者
岡田 一秀
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.59-62, 2010-10-01
被引用文献数
1