著者
楠原 俊昌 花元 克巳 山岡 聖典
出版者
岡山大学医学部保健学科
雑誌
岡山大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13450948)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.7-15, 2002-12-25

本総説は,低線量放射線に対する生体の適応応答(以下,適応応答)に関してその効果を含む最近の研究動向,さらに放射線防護との関係についてまとめたものである。特にこの分野で最も検討が進んでいる「低線量放射線照射の生物学的影響」に関する国際研究組織(BELLE)での動向を中心に報告するものである。即ち,ヒトと自然放射線との共存などヒトの生活環境と適応応答について,適応応答の短期的・長期的効果など適応応答の効果とその生物学的意義について言及した。次に,適応応答の医療などへの応用の可能性について,また,適応応答と放射線防護との関係についても言及した。ここで,低線量放射線にはヒトへの有益な効果があるとの多くの報告例がある半面,放射線防護の面では微量放射線でも危険とする考え方がその根拠にあることがわかった。このため,今後は更なる低線量放射線の生体影響研究を進めるとともに,両者の間の隙間をなくす現実的・合理的な対応が求められている。We reviewed the recent trend of research on the adaptive response induced by low dose radiation and its significance. The following view were obtained. Risk assessment is fundamental to the protection of public health from radiation exposure, but any estimate of risk is subject to numerous major uncertainties. In view of the uncertainties surrounding the shape of dose-response curves at low doses of ionizing radiation. the linear nonthreshold dose-response model is now widely accepted as a paradigm in radiation protection practice and risk analysis. However, interest among scientists in obtaining a more conclusive understanding of the effects of low dose radiation has been evident in recent initiatives, such as adaptive response of low dose radiation, in part to help verify or disprove the linear model. A vigorous worldwide effort is now apparently underway to understand the basic mechanisms underlying the biological effects of low dose radiation. This review presents a series of papers representing the progress going on, which will undoubtably make an important contribution to this field of research.
著者
三宅 優 横山 美江
出版者
岡山大学医学部保健学科
雑誌
岡山大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13450948)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-8, 2007-03-15
被引用文献数
1

笑うことが人体に良い影響を及ぼしていることを証明する研究が,欧米を先駆けに,日本でも十数年前から実施されている。本研究は,現在まで日本国内において報告されてきた笑いの効果を身体面,精神面の二方向から概観し,医療や看護の場で笑いを用いる有効性を提示することを目的とし,文献考察を行った。身体面では,多くの研究において笑いの免疫系に関する効果が報告されていた。その他,疼痛緩和,アレルギー患者の皮膚症状の改善,食後血糖値上昇抑制,リラクゼーション効果を明らかにするもの,笑いと睡眠の質に関する研究なども行われていた。笑いの精神的効果として,ストレスコーピング,人間関係の確立,不安,緊張の緩和が挙げられていた。しかし,笑いの定義は研究者により様々であり,笑いやユーモアの定義,分類,尺度化が必要であるとの指摘もなされている。また,健康人を対象とした報告が多く,今後,医療の場でケアとしての笑いについての研究が期待される。
著者
池田 智子 奥田 博之
出版者
岡山大学医学部保健学科
雑誌
岡山大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13450948)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-66, 2005-12-25

18~52歳の月経周期のある健康な女性193名を10代,20~24歳,25~34歳,35歳以上の4つのリプロダクティブステージに分類し,月経及び月経痛に関する実態調査を実施した。結果①規則的な月経周期の割合は,リプロダクティブステージが進むにつれ増加し,経血量は減少傾向を示した。②月経痛はリプロダクティブステージの進行と共に軽減し,鎮痛剤使用頻度,日常生活への影響が少なくなる傾向を認めた。③各リブログクティブステージの特徴は,10代では月経痛の頻度や日常労作への影響が最も多く,血塊の出現率が最も高率であった。20~24歳は10代と類似していたが,鎮痛剤使用頻度は最も高率であった。25~34歳では最も安定した性成熟状態を示し,月経痛は「時々あり」が最も高率であったが,血塊の出現率が高かった。35歳以上では月経痛のない人が最も高率であり,生活への支障が最も少なかったが,「1日3回以上」の鎮痛剤使用は他のリプロダクティブステージと変わらなかった。以上の結果に加えてリプロダクティブステージにおける月経周期や経血量の特徴を考えあわせると,身体的な性成熟機能と心理社会的側面を考慮し,各リプロダクティブステージに適した月経痛への対応が必要であると考える。
著者
小野 清美 林 優子 大井 伸子 奥田 博之 山岡 聖典
出版者
岡山大学医学部保健学科
雑誌
岡山大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13450948)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.27-36, 2001-12-25

病院におけるアメニティの重要性は十数年前から言われているが,それは建物の建築の時だけでなく,その後療養の場所をどのように維持し,快適環境を患者にいつまでも提供していくかである。これまで日常の看護業務において掲示物やパンフレットの置き方,床頭台のあり方などは整理整頓の一環で病棟管理の中にあった。だが,もう一つの流れがある。ウイリアム・モリスは生活の中における芸術化を考え,生活用品そのものに美しきと手作りの良さがあることを提唱した。こうした生活デザインの流れの中で,本研究では本学科棟内において床頭台のディスプレイや掲示の仕方,パンフレットの置き方など,ラッピング技法を使用し,入院生活上のアメニティの創出を試みた。その後,ラッピング技法を用いたアメニティ創出の試みは患者の心を癒す可能性のあることを明らかにした。また,ラッピング技法使用上の留意点についても指摘した。The importance of producing the comfortable environment, namely to create the amenity for the patients admitted in the hospitals, has been recognized recently. In this study, to create the better amenity for admitted patients' daily life by the nurses, we examined the influence of the ways of displaying, placing and decorating the daily materials, such as booklets, tea cups, letters and etc. on a bed side table, using the wrapping skills. As a result, we found out that creating the amenity using the wrapping skills might be useful for the admitted patients' care and their mental healing. Furthermore, we indicated some important points when using the wrapping skills, such as selecting appropriate materials and methods suiting for each subjected matter.