著者
池田 智子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Special_Issue, pp.59-66, 2013-10-01 (Released:2013-10-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1972年に職業病予防を目的に制定された労働安全衛生法は,時代とともに私傷病(作業関連疾患)への配慮も含む内容に変わり,近年では労使の参加・協力の枠組みも示されるようになった.今後は,拡充された労働安衛衛生法の目的達成のために,労使主体による予防活動のさらなる推進が重要になるが,それには全ての労働者に対して,自主的活動を行える力をエンパワーメントする必要がある.看護とは,対象者の潜在能力を引き出し最大限に発揮できるようエンパワーメントすることであり,環境改善やポピュレーションアプローチを含む活動であることを,既に1850年代にナイチンゲールが説いた.また保健師とは,当事者が自らの健康課題を解決するプロセスへの援助を核とし,コミュニティを基盤に健康問題をとらえ,予防につながる組織的な取り組みを担い,公的責任を志向する公衆衛生専門職である.保健師や看護師(両者を総称して「看護職」)の活動基盤は「エンパワーメント」の理論と技術であり,今後,労使自主対応型の労働安全衛生を推進するにあたり,重要な役割を担える専門職である.
著者
池田 智子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.52-60, 2003-07-31

従来,相互行為における笑いは主に会話分析の枠組みの中で研究されてきた.本稿では日本語の二者対面状況の中で笑いという行為がいかになされ,どのような結果をもたらすかを,あるインタビューの事例を通して具体的に検証する.分析の対象としたのは,フェミニスト刊行物の編集者が読者ボランティアに対して行ったインタビューである.基本的な価値観を共有する二者間のやりとりを子細に検討した結果,以下の現象が観察された.(1)デリケートな内容に関する質問は笑いと共に発せられ,受け手の笑いをも引き起こす.(2)話者自身のトラブルを披露する発話の終了地点付近では,必ずと言ってよいほど笑いが発せられ,受け手も笑いで応じる.相互行為における笑いは偶発的なものではなく,組織的に産出され,またコミュニケーションの次の展開に影響を及ぼすリソースとなる.本データでは,笑いが参加者の一体感を高めつつ,インタビューの目的達成に貢献している様子が観察された.
著者
渡辺 啓 大村 孝之 池田 智子 三木 絢子 勅使河原 喬史
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.185-191, 2009
被引用文献数
3

W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。
著者
池田 智子 奥田 博之
出版者
岡山大学医学部保健学科
雑誌
岡山大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13450948)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-66, 2005-12-25

18~52歳の月経周期のある健康な女性193名を10代,20~24歳,25~34歳,35歳以上の4つのリプロダクティブステージに分類し,月経及び月経痛に関する実態調査を実施した。結果①規則的な月経周期の割合は,リプロダクティブステージが進むにつれ増加し,経血量は減少傾向を示した。②月経痛はリプロダクティブステージの進行と共に軽減し,鎮痛剤使用頻度,日常生活への影響が少なくなる傾向を認めた。③各リブログクティブステージの特徴は,10代では月経痛の頻度や日常労作への影響が最も多く,血塊の出現率が最も高率であった。20~24歳は10代と類似していたが,鎮痛剤使用頻度は最も高率であった。25~34歳では最も安定した性成熟状態を示し,月経痛は「時々あり」が最も高率であったが,血塊の出現率が高かった。35歳以上では月経痛のない人が最も高率であり,生活への支障が最も少なかったが,「1日3回以上」の鎮痛剤使用は他のリプロダクティブステージと変わらなかった。以上の結果に加えてリプロダクティブステージにおける月経周期や経血量の特徴を考えあわせると,身体的な性成熟機能と心理社会的側面を考慮し,各リプロダクティブステージに適した月経痛への対応が必要であると考える。
著者
中谷 淳子 池田 智子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.73-78, 2011

2010年8月産業医科大学産業保健学部は, 東京都内において「第3回国際産業看護・第2回アジア産業看護ジョイント学術集会」の特別企画として, シンポジウム-仕事とポジティブ・メンタルヘルス-を開催した. 基調講演として, オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・シャウフェリ教授が「ワーク・エンゲイジメント」の概念について説明された. その理論は, 仕事に対する活力・熱意・没頭の3要素が高い労働者は, 心身ともに健康状態が良好で, 組織の活性化や生産性向上にも貢献するというものである. 続いて, 心理学者, 産業医, 企業の人事担当者および内閣府審議官によるパネルディスカッションを行った. その結果, 深刻なうつ病の予防対策は職場におけるメンタルヘルス対策において必要であるが, それだけでは不十分であり, 同時に健康な労働者のさらなる健康を目指す対策も取り入れて, 職場全体の健康を増進して行くことが, 今後の課題であるという共通認識に至った.
著者
渡辺 啓 大村 孝之 池田 智子 三木 絢子 勅使河原 喬史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.185-191, 2009-09-20 (Released:2011-12-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。
著者
池田智子 山下純子 小澤靖枝
雑誌
日本教育心理学会第59回総会
巻号頁・発行日
2017-09-27

問題と目的 村上(1986)は,抑うつ傾向と成功失敗事態での原因帰属のパターンの関係について検討を行い,抑うつ傾向が高いほど,自分の内的要因(能力・努力など)とは関係のない,自分にとって統制不可能な外的要因へ帰属することを報告している。また,平松(2003)は,対人的傷つきやすさは成功場面よりも失敗場面における原因帰属スタイルとの関係が強く,対人的に傷つきやすい人ほどその失敗が自分の内部に内在していると帰属しやすく,また失敗の原因は安定的で,普遍的であると考える傾向があると報告している。 さて,近年,教育現場,臨床現場等多くの場面で,さまざまな不適応的傾向から起こる不適応状態に陥っても,それに立ち向かう力としてのレジリエンス(resilience)という概念に注目が集まっている(小塩・中谷・金子・長峰, 2002)。抑うつ傾向や傷つきやすさといった不適応傾向にある者が特有の原因帰属のスタイルを持っているならば,レジリエントな状態にある者も,適応状態につながる特有の原因帰属のスタイルを持っていると予想される。そこで,本研究では,大学生のレジリエンス要因と原因帰属スタイル,そして人間行動の原因帰属をどれくらい多く行うかという帰属の量,言い換えれば,原因帰属の複雑性の関係について検討することを目的とした。方 法調査対象者 女子大学生121名(有効回答者)。質問紙1. 二次元レジリエンス要因尺度(BRS)(平野, 2010)21 項目に5件法で回答を求めた。2. 帰属複雑性尺度(佐藤・川端, 2012)28項目に7件法で回答を求めた。3. 原因帰属スタイル測定尺度(村上, 1989)学業達成領域と対人関係領域のそれぞれ成功場面と失敗場面5場面における,原因帰属の外在性,安定性,普遍性について7件法で回答を求めた。手続き 授業時間を利用して,集団で質問紙調査を行った。結果と考察 二次元レジリエンス要因尺度の得点を因子分析した結果,「楽観性」「行動力」「自己理解」「他者理解」の4因子が抽出された。各レジリエンス要因因子の得点と帰属複雑性尺度の得点,各原因帰属スタイルの得点間の相関分析の結果(Table1),レジリエンス要因因子の「自己理解」「他者理解」と主に対人領域での成功場面において正の関連が見られ,他者や自分を理解する自信が高いほど,対人関係がうまくいった原因を自分に帰属し,また,その原因は安定的だとみなしていることがわかった。また,このレジリエンス要因の「自己理解」と「他者理解」の2つの因子の得点と原因帰属の複雑性得点との間に正の相関がみられ, 自己や他者を理解する自信が高いほど,多くの原因帰属を行なうことがわかった。これらの結果から,レジリエンス要因の高い者に特徴的な原因帰属のスタイルと量があることが示唆された。
著者
渡邊 祐紀 赤林 朗 池田 智子 富田 真紀子 渡辺 直紀 甲斐 一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.111-119, 2000-09-13
被引用文献数
3

高齢化社会を迎えつつある現在、医療現場における高齢者の治療法決定への参加のあり方は、早急に検討するべき課題となっている。本研究では、心肺蘇生法(CPR)を取り上げ、寿命があと2、3ヵ月の末期癌の入院患者において、CPR施行の決定者、CPR施行の希望、患者本人の意向と家族や周囲の者の意見が異なった際の対応等について、中・高齢者(50歳以上)を対象に面接による意識調査を行い、CPR施行について意思決定の過程を考察した。調査は1999年5月〜6月に都内A寺において行われ、110名より有効回答が得られた。解析の結果、患者自身による治療法決定の考え方(自己決定)が中・高齢者の間に浸透していることが明らかになり、CPR施行を希望しないという回答者が多数を占めた。また、決定者間で意見に不一致が見られた場合には、必ずしも患者本人の意向を優先しなくてもよいとする傾向や、おかれた状況が患者本人か家族であるかによって、回答内容が変化する傾向も明らかになった。
著者
池田 智子 鈴木 康江 前田 隆子 原田 省
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.129-138, 2011-04
被引用文献数
1

本研究の目的は,(1)高校生における月経痛と関連する因子の実態調査,ならびに(2)リラクセーション法による月経痛の軽減効果を検討することである。実態調査は,高校生1,339名を対象に無記名自記式質問紙法で実施した(有効回答953名)。その結果,月経痛がある者は865名(90.8%)で,日常生活に影響があるとした者は448名(51.8%)であった。月経痛に関連する因子として,睡眠状態の不良(オッズ比:1.43,95%Cl:1.06〜1.92),生活上のストレス感(オッズ比:1.42,95%Cl:1.06〜1.90),冷えの自覚(オッズ比:1.84,95%Cl:1.40〜2.41)などが見出された。そこでストレス感と睡眠に着目し,呼吸法とアロママッサージ併用によるリラクセーション法の月経痛軽減への効果を検討した。月経痛のある高校生で研究協力の得られた者を無作為に介入群(16名)と対照群(16名)に割り付け,介入群にはリラクセーション法を実施した。介入群では,対照群に比べ月経1日目,2日目の月経痛は有意に軽減し(P<0.05),日常生活への影響は2日目で有意に減少した(P<0.05)。POMSの緊張-不安が有意に低下した(P<0.05)。リラクセーション法の実践により月経痛の軽減効果が示され,有効な対処法として活用できると考えられた。