著者
大石 真澄
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ
巻号頁・発行日
vol.52, pp.183-214, 2016-03-25

本研究ノートは、日本の戦後、特に1950~70年代に科学・専門的知識がいかにしてビジュアルイメージとして受容されてきたか、の解明に関する分析の一部である。このために、学習図鑑を対象として、その書面の形式および書式に注目することで、受容者の経験を復元するという作業を行う。
著者
大石 真澄
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.57-74, 2015-10-01 (Released:2020-06-20)
参考文献数
18

本論は、生理用品のテレビCM制作物の分析を通して、テレビの受容者が生理用品に関する言及をどのようにそれとして理解しているのか知ろうとするものである。 本論では分析対象であるテレビCMの言及形式に着目する。そのために、テレビCM分析の先行研究を検討した結果、データベースから資料を抽出し、受容者の理解をそのやり方に沿って記述するという方針を得る。ここからエスノメソドロジーの立場に立って、テレビCMの理解に際して要求されるカテゴリー化の作用を記述するという作業方針を立てた。またこの方針の遂行のために、ハーヴィ・サックスの「成員カテゴリー化装置」の使用を手がかりとし、テレビCM資料に適した分析手法の検討を事前に行った。 分析の結果、理解には二つの形式があることが分かった。一つは男性/女性のカテゴリー対を提示上で用いることで男性が対象外であることを示し、生理用品というモノにつなげるやり方である。二つ目に、生理の実践を経てそれに関する知識を持つ人にだけわかる形で場面を提示することで、CM上のトピックが生理用品に関してのものであることを示す方法である。このやり方は、映画番組というジェンダーによって視聴者がセグメント化されない番組で起きていたことから、視聴活動の場においても生理用品のテレビCMを理解する/しないことで、ジェンダーカテゴリーの切り分けが起こっていたことが見出された。 以上の分析から、生理用品のテレビCMは、その理解に際した知識要求の仕方で、生理のある女性をターゲットオーディエンスとして分離した。同時に女性にとっては、それを理解するという活動そのものによって、自らの性別カテゴリーを自認する実践でもあったことが分かった。