- 著者
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陳 力衛
- 雑誌
- 成城大學經濟研究 = Seijo University economic papers
- 巻号頁・発行日
- no.194, pp.9-35, 2011-11
近代の西洋においてdemocracyとrepublicはもともと区別のつきにくい概念であった。その二つのことばに対して、19世紀半ばころまでは中国では「民主」、日本では「共和」と、各々異なった漢語訳語を当てていた。いわば中日言語の没交渉の時代があっての産物だった。19世紀後半になると、漢訳洋書や英華字典の日本への流入によって、中国語の「民主」は日本語に入って、まずrepublicの意味において「共和」と類義関係をなすようになった。一方、19世紀末期に来日していた中国人は日本語の「共和」を持ち帰っていって中日両国語にともに「民主」「共和」が使われるようになった。こうしてrepublic=「共和」の対訳が固まるにつれてdemocracyと「民主」との意味結合も徐々に多くなってきた。さらに明治後期の日本においてdemocracyを「民主主義」やカタカナ語の「デモクラシー」へと訳され、政体を表す「民主」との意味区別を図るようになった。20世紀の初めころ、「民主主義」の言い方も中国へ伝わり、democracyとrepublicは最終的に「民主」と「共和」に対訳するように、意味の棲み分けをするようになった。