- 著者
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陳 力衛
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 国語学 (ISSN:04913337)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.3, pp.30-43, 2003-07
本稿は,熟字訓形成の要因を,まず漢籍の伝来に伴う概念の対訳の必要性から捉え,一体性としての熟字に対して和訓が語訳の性格を帯びていることを確認する。そして,この種の熟字訓は時代とともに産出され,つねに中国語から新語・類義語・新表記を日本語に取り入れるための手段として用いられたため,一過性や流行性といった特徴が指摘できる。また逆に,伝承性の強い本草学関係の熟字訓にも注目し,日中間の交渉による意味概念の同定とそのずれを指摘する。一方,視覚による書記表現としての効果性への追求から,日本人が独自に創出した熟字訓もある。本稿はそれを取上げ,中国語由来のものとの異同を比較し,最後に,熟字訓の問題点を指摘する。