著者
小林 隆
出版者
佛教大学教育学部
雑誌
教育学部論集 = Journal of the Faculty of Education (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
no.24, pp.21-33, 2013-03

「知識基盤社会」では、「知識の消費者」ではなく「知識の創造者」を育てることが求められる。このような基本的視座から、本小論では子どもと切り離された現実社会を知識として転移するのではなく、現実と結びついた経験に基づいて子どもと教師・子どもと子ども・教室と地域社会などの社会的関係性の中で知識を構築している「社会科の初志をつらぬく会」実践を再評価した。そして、「知識は社会的に構成される」との構成主義の立場から、実践における集団思考と知識構築の様相を読み取った。研究の結果、集団思考において頑なに認識を変えない子、柔軟に認識を変容する子、集団思考が深まる場面でキーとなる子どもが存在することが明らかになった。そして、これらの子どもの意見を中心として、集団思考による知識の調整や再構成が行われ、概念的知識が社会的に構成されたことが明らかになった。社会科の初志をつらぬく会構成主義集団思考知識構築
著者
村岡 潔
出版者
佛教大学教育学部
雑誌
教育学部論集 = Journal of the Faculty of Education (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
no.28, pp.49-55, 2017-03

本稿の目的は、題名通り、義務教育における初等医学教育の必要性について論じています。それは、医学知識(医療知識)というものが一部の医師集団に独占されていて、多くの一般市民が医学知識や医療技術習得の蚊帳の外に置かれているからです。医学は、近代の知の中で人間に関して集大成された最も重要な知識であり、知恵ですから、本来ならば、近代社会では、多くの人々が共有すべき人類のレジェンドと言うべきものです。識字率が99%以上であっても、医学のリテラシー(「識医率 medical literacy」)に関してはかなり低いものと言えるでしょう。それを義務教育で補うべきだと主張しています。 第一、医学知識を身に着けることは、病気や怪我の予防にもつながるはずです。これが本来のプライマリー・ケア(一次予防)です。義務教育を通して、初等医学教育が軌道に乗って来れば、セルフヘルスケアによる生活習慣病の解決も現在よりずっと高い成果をあげることが可能になるでしょう。その結果、病気が減ることになるので、医療費の削減にもつながります。 その可能性を示す実例として、中国の「はだしの医者(赤脚医生)」の事例をしめしました。義務教育初等医学教育「識医率」セルフヘルスケア赤脚医生