- 著者
-
村岡 潔
- 出版者
- 佛教大学教育学部
- 雑誌
- 教育学部論集 = Journal of the Faculty of Education (ISSN:09163875)
- 巻号頁・発行日
- no.28, pp.49-55, 2017-03
本稿の目的は、題名通り、義務教育における初等医学教育の必要性について論じています。それは、医学知識(医療知識)というものが一部の医師集団に独占されていて、多くの一般市民が医学知識や医療技術習得の蚊帳の外に置かれているからです。医学は、近代の知の中で人間に関して集大成された最も重要な知識であり、知恵ですから、本来ならば、近代社会では、多くの人々が共有すべき人類のレジェンドと言うべきものです。識字率が99%以上であっても、医学のリテラシー(「識医率 medical literacy」)に関してはかなり低いものと言えるでしょう。それを義務教育で補うべきだと主張しています。 第一、医学知識を身に着けることは、病気や怪我の予防にもつながるはずです。これが本来のプライマリー・ケア(一次予防)です。義務教育を通して、初等医学教育が軌道に乗って来れば、セルフヘルスケアによる生活習慣病の解決も現在よりずっと高い成果をあげることが可能になるでしょう。その結果、病気が減ることになるので、医療費の削減にもつながります。 その可能性を示す実例として、中国の「はだしの医者(赤脚医生)」の事例をしめしました。義務教育初等医学教育「識医率」セルフヘルスケア赤脚医生