- 著者
-
鳥海 順子
- 出版者
- 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
- 雑誌
- 教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = 教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:18816169)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.1-8, 2018-03-31
本研究では,知的障害児(者)の教育心理学的研究の動向を把握するために,日本特殊教育学会における過去25 年間の学会発表論文について分析を行った。具体的には,日本特殊教育学会の1982年から2007年まで過去25年間における5年次毎の大会発表論文のうち,知的障害児(者)を対象とした研究について研究内容や研究方法を分析した。その結果,日本特殊教育学会の全発表件数も知的障害児(者)の研究発表の件数も25年間で2倍以上に増加しており,知的障害児(者)の研究は,全体を通して全発表件数のうち14%から20%を占めていた。研究の内容については,2002年以降,弁別学習や記憶等「心理機能」の研究は減少し,「療育・指導」の研究が増加していたまた,研究の方法についても,2002年以降,「教育臨床」や「応用行動分析」による研究が増加し,対象数も1名や10名以下が7,8割を占め,対象障害種は自閉症が70%以上を占めるようになった。2007年には「応用行動分析」の研究対象の9割近くは自閉症であった。以上から,日本特殊教育学会における知的障害児( 者) を対象とした教育心理学的研究は,近年「療育・指導」に関する「事例研究」もしくは少人数の「自閉症を伴う知的障害児(者)」を対象とした研究が増加傾向にあることが示唆された。