著者
内川 公人 川森 文彦 川合 清也 熊田 信夫
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.91-98, 1993-11-25
被引用文献数
7

神奈川県山北町における調査によって, 鈴木の見取り法のうち特に黒布を用いる方法がタテツツガムシ幼虫の野外サンプリングに非常に適していることを確かめた。この方法でタテツツガムシ幼虫がミカン畑の内外に多数生息していること, 比較的湿度の高い地点に謂集するらしいこと, などを確認した。野外で本種幼虫を多数採集するにも鈴木の見取り法は効率的であるが, 一旦採集した幼虫を実験室内で回収するのに種々の工夫を加える必要があるものと思われた。
著者
後藤 哲雄 穐澤 崇 渡邊 匡彦 土屋 明子 嶋崎 明香
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.93-103, 2005-11-25
被引用文献数
1 25

ミヤコカブリダニ(ミヤコ)の個体数は, 1990年以降に日本各地で急激に増加し, 関東以西の慣行防除果樹園ではそれまでの優占種であったケナガカブリダニ(ケナガ)と置き換わってきている.一方, 北日本への分布の拡大傾向は小さい.このような種の置換と分布拡大の要因を明らかにする一環として, 本報告ではミヤコの休眠性の有無と2種の耐寒性を報告する.ミヤコは, 短日条件と長日条件の産卵前期間が同じであり, 休眠性はなかった.2種間およびケナガの休眠と非休眠個体間の過冷却点(supercooling point)に有意差はなく, -21.9〜-23.3℃であった.ケナガ・休眠雌は, -5℃で7日以上生存した(>50%)が, ミヤコとケナガ・非休眠雌は5日以内に70〜85%が死亡した.このことからミヤコの北進が遅いのは耐寒性がわずかに弱いことも一因であると考えられた.一方, いずれの種においても生残した雌は20℃長日条件下で2個体を除いて産卵し, 産下卵の大半がふ化した.従って, 低温ストレスは産卵数やふ化率への影響が少なく, ミヤコも冬季の低温条件下で生き残ることができる地域では, 定着が可能であると考えられた.