- 著者
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桑原 博道
- 出版者
- 公益社団法人 日本小児科医会
- 雑誌
- 日本小児科医会会報 (ISSN:09121781)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, pp.78-80, 2023 (Released:2023-04-30)
摂食障害の患者について,入院管理のうえ,身体拘束を加えた場合についての裁判例を紹介する。この事案では,77日間にわたる身体拘束が加えられたが,東京地裁令和3年6月24日判決は,そのうち17日間の身体拘束を違法と解釈し,これに対し,東京高裁令和4年10月31日判決は,全期間を通じて,身体拘束は違法ではないと解釈している。いずれの判決も,医師の裁量を認めるものであるが,将来予測の難しさについて,どのように評価するかについての解釈が分かれたものである。この点については,東京高裁の解釈がより正しいものとして是認できる。本訴訟事例は,医師の裁量に基づく判断に対する裁判所の判断が正しくないと思われる場合には,控訴などの上訴を積極的に検討する必要があることを示す1例でもあるといえる。