著者
大平 雅之 桑原 博道 小原 克之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.10-15, 2014 (Released:2014-01-25)
参考文献数
8
被引用文献数
3

要旨:近年,脳卒中に関連する診療ガイドラインが公開され,医療現場において利用されている.「脳卒中治療診療ガイドライン」が判決文中引用されている裁判例のうち判決文全文が入手可能で脳卒中の診療が争点となった裁判例について検討した.対象は7 事例(8 裁判例)あり,判決の理由中ガイドラインが過失判断において引用された場合,おおむねガイドライン通りの認定がなされていた.特にガイドライン中,エビデンスレベルが引用されている判決が目立った.民事訴訟はその制度的特性から必ずしも客観的な医学的妥当性は担保されていないものの,民事訴訟での医学的妥当性を必要最低限担保するためにガイドラインが寄与しうる余地がある.
著者
桑原 博道
出版者
公益社団法人 日本小児科医会
雑誌
日本小児科医会会報 (ISSN:09121781)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.108-110, 2020

<p>新型コロナウイルス感染拡大に伴い,医療機関においても労務問題が発生している。業績が悪化し,従業員が同意したからといって,必ずしも基本給をカットできるものではない。休職をさせた場合にも,40%を超えて賃金カットすることには慎重になった方がよい。緊急事態宣言発令に伴う協力要請により休業した場合には,別途考慮が必要であるが,医療機関は要請対象外となるであろう。賞与のカットについては,就業規則等の定め方による。雇用関係の終了については,使用者としては,整理解雇の4要件(4要素)を意識して対応したり,退職勧奨を検討する。有期契約であれば,雇止めができる場合とできない場合がある。労働災害という側面から見た場合,医療職が新型コロナウイルスに感染した場合には,業務外で感染したことが明らかである場合を除き,原則として労災保険給付の対象となる。</p>
著者
桑原 博道
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.165-167, 2007-10

セクハラで患者に訴えられた医師が、裁判で勝訴しました。しかし、この提訴が新聞で報じられたため、読者にセクハラの疑念を抱かれることになったとして、患者や新聞社を名誉棄損で訴えましたが、敗訴してしまいました。事件の概要 患者Aは、複数の医師から半陰陽と診断され、男性の生殖腺除去、音声形成術を受けた。
著者
桑原 博道
出版者
公益社団法人 日本小児科医会
雑誌
日本小児科医会会報 (ISSN:09121781)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.78-80, 2023 (Released:2023-04-30)

摂食障害の患者について,入院管理のうえ,身体拘束を加えた場合についての裁判例を紹介する。この事案では,77日間にわたる身体拘束が加えられたが,東京地裁令和3年6月24日判決は,そのうち17日間の身体拘束を違法と解釈し,これに対し,東京高裁令和4年10月31日判決は,全期間を通じて,身体拘束は違法ではないと解釈している。いずれの判決も,医師の裁量を認めるものであるが,将来予測の難しさについて,どのように評価するかについての解釈が分かれたものである。この点については,東京高裁の解釈がより正しいものとして是認できる。本訴訟事例は,医師の裁量に基づく判断に対する裁判所の判断が正しくないと思われる場合には,控訴などの上訴を積極的に検討する必要があることを示す1例でもあるといえる。
著者
桑原 博道 墨岡 亮 新井 一 小林 弘幸
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.278-288, 2011-04-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

本邦における脳神経外科領域の医療裁判例30を分析した.裁判上の争点は,いくつかに類型化されるが,このうち説明義務違反に関しては,他の争点に比して肯定されやすい傾向にあった.低侵襲治療もすでに裁判の対象となっており,低侵襲であることのメリットを過度に強調するかのような説明には注意が必要である.判決言渡しまでの期間は大幅に短縮されているが,脳神経外科医などの外科医にとって,裁判を起こされること自体が精神的苦痛であることに変わりはない.また,手技ミスなど,手術に関係する過失を理由とする裁判の増加は,外科手術施行の萎縮,ひいては外科医希望者の減少につながる.そこで,脳神経外科などの外科領域においても,産科領域と同様の無過失補償制度を導入することも考慮に値する.ただし,補償額を算定するにあたって,原疾患や術式の難易をどのように考慮するかが,大きな課題である.
著者
墨岡 亮 桑原 博道 小林 弘幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.1183-1195, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1

肺血栓塞栓症は, 近年, 認知度が上昇し, 急死の転帰をたどることも多く, 訴訟リスクが高まっているものと考えられる. そこで, 肺血栓塞栓症が裁判上どのような点で問題となっているのか, 検索し得た40例の裁判例(36事例)を検証した.請求棄却判決は22例で, 一部認容判決が18例. 主な診療科は, 循環器科(7事例), 産婦人科(7事例9裁判例), 整形外科(6事例)で, 3診療科で約半数を占めた. 循環器科は, 2004年の判決以降に問題となっていた. 産婦人科では, 5事例6裁判例で, 医療機関側から, 急変した原因が肺血栓塞栓症であるとの主張がなされていた. 整形外科では, いずれの事例も下肢受傷例であった. 争点となったのは, 死因·原因(17事例20裁判例), 予防措置(16事例17裁判例), 診断の遅れ(16事例17裁判例), 救命措置(9事例10裁判例)であった. 2004年以降, 予防, 診断の遅れ, 救命措置に過失があったことを理由とした請求認容判決が7例存在した. また, 2004年以降の判決ではガイドラインに触れられているものがあった. 死因·原因などに関して, 8事例10裁判例で, 医療機関側から, 原因が肺血栓塞栓症であったことを, 過失や救命可能性を否定する根拠として主張していることが特徴であった.医療トラブル防止には, 個々の医師の対応だけでは限界があり, 肺血栓塞栓症の特質について, 患者および社会一般の理解を得る必要がある.
著者
桑原 博道
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.100-102, 2016-11

変形性頸椎症の手術を受けた患者に脊髄損傷が生じ、四肢・体幹機能障害を負いました。裁判所は術前のリスクに関する説明義務違反を認める一方で、説明義務違反と障害発生との因果関係を否定し、比較的少額の慰謝料の支払いを命じました。桑原 博道 仁邦法…
著者
平井 利明 桑原 博道 豊川 琢
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.38-41, 2010-12

近年、減少傾向にある医療訴訟。ただ、刑事訴訟法改正などの影響で刑事事件がこれから増える懸念もある。前号に引き続いて弁護士の平井利明氏と桑原博道氏に、医療訴訟における現在の課題や今後の展望について語ってもらった。(司会は本誌副編集長・豊川琢)──最近は民事事件、刑事事件ともに訴訟件数が減り、安堵している医師も多いと思いますが。
著者
桑原 博道 平井 利明 豊川 琢
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.24-27, 2010-11

今年6月、本誌の好評連載「医療訴訟の『そこが知りたい』」に掲載した判例を中心に、注目の47判例を解説した書籍を発刊した。弁護士7人の執筆陣の中から平井利明氏と桑原博道氏にご登場いただき、医療裁判史上、激動の10年間を振り返ってもらった。(司会は本誌副編集長・豊川琢)──連載「医療訴訟の『そこが知りたい』」が1冊の本になりました。何か感じた点はありますか。
著者
桑原 博道
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.143-145, 2012-02

透析のため通院していた患者が看護師や技士に対し、危害を加えることをほのめかす暴言などを繰り返しました。このため、病院は警察署に被害届を提出。裁判所は脅迫罪・強要罪の成立を認め、患者に実刑判決を下しました。事件の概要 患者は2000年1月以降、腎臓透析治療を受けるために、X病院の人工腎透析センターに通院していた。
著者
桑原 博道
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.145-147, 2010-12

後遺障害の残った患者が、診療録の開示義務や診療の顛末報告義務の違反が病院にあったと訴えました。裁判所は開示義務を否定した一方で、病院が診療録の一部を紛失して提示できなかった点を考慮し、報告義務違反は認めました。