著者
秋谷 進
出版者
公益社団法人 日本小児科医会
雑誌
日本小児科医会会報 (ISSN:09121781)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.77-81, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
15

選択性緘黙(以下,場面緘黙)とは,話す能力にはほぼ問題がないのに,特定の状況では1カ月以上声を出して話すことができないことが続く状態である。米国の精神障害の診断・統計マニュアルDSM-V(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th ed.))の診断基準においては,DSM IV-TR1)(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (4th-TR ed.))の「通常,幼児期・小児期または青年期に初めて診断される障害」分類から社交不安症群/不安障害群の一つと定義された。場面緘黙と診断した女児の「幼稚園や学校などで話せない」ことを「不安が背景にある」ととらえ,緘黙を始めとした症状を周囲が受け入れることで安心感を与え,不安に寄り添った対応をすることで症状が改善し良好な自尊感情を形成できた。
著者
秋谷 進
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.751-754, 2021-07-01

場面緘黙とは特定の状況において1か月以上声を出して話すことができないことが続く状態である.不安や対人緊張が強く,診察時に医師と話をすることができないなど,普段の状態と異なり得られる情報が少ないため,緘黙児のアセスメントには苦慮することがある.今回,不登校と場面緘黙を主訴に受診した女児で,家族からの聴取によると年齢相当の発達段階であると考えられたが,知能検査の結果では知的発達障害が疑われた症例を経験した.知能検査において時間制限を気にしていたため女児の不安が高まったと考えられたことから,2年後に不安軽減のための時間的配慮をしたうえで再度知能検査を実施した.その結果,正確なアセスメントが可能となった.
著者
秋谷 進 宮本 幸伸 木村 光明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.139-146, 2009-03-01
参考文献数
23

原因不明の乳児肝炎として経過観察していた症例で,IgE 非依存性牛乳アレルギーと診断した2症例を経験した.IgE 抗体非依存性食物アレルギーは,IgE 抗体が通常陰性であるため食物アレルギーとは気づかれず種々の侵襲的検査を余儀なくされ,診断の遅れのために栄養障害や重症化をきたした報告も多く認められる.現在のところ IgE 抗体非依存性食物アレルギーの診断には評価の一定した検査方法がないが,臨床経過から IgE 抗体非依存性牛乳アレルギーを疑い,食物特異的リンパ球増殖反応検査を用いることで IgE 抗体非依存型牛乳アレルギーと診断した.乳児の慢性肝機能障害を呈する疾患のうち食物アレルギーの可能性を考慮し診察することで,侵襲性の高い検査が回避されることが考えられた.