著者
今野 浩太郎 平山 力 中村 匡利 田村 泰盛 服部 誠 河野 勝行
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 日本蚕糸学会第72回学術講演会
巻号頁・発行日
pp.118, 2002 (Released:2004-02-03)

エリサン(Samia riciniヤママユガ科)は味覚が鈍感であり、たとえ毒性や成長阻害活性を持つ植物でも与えれば良く摂食し、その植物に特有の反応を示すため、植物の毒性や成長阻害活性の検出に大変優れた昆虫である。シダを食害する植食昆虫の種数は、植物1種当たり平均で、被子植物と比較して顕著(1/30)に少ないことが知られているが、その理由については未知であるため、エリサンを用い、ヒメシダ、コウヤワラビ、ゼンマイ、ワラビ、ヒカゲヘゴ等の毒性·成長阻害活性を調べた。その結果、草食哺乳類に対する毒性が知られているワラビが、エリサンに対し中程度の毒性·成長阻害活性しか示さなかった一方で、ヒメシダ、コウヤワラビ·ゼンマイなど、これまでに毒性·成長阻害活性が報告されていないシダに毒性に近い非常に強い成長阻害活性が観察された。特に、ヒメシダ(Thelypteris palustris )の生葉や、生葉粉を栄養価の高い人工飼料に混ぜた餌を与えた場合、エリサンは摂食するが全く成長しなかった。この活性は熱に弱く、100℃数分間の加熱で完全に失われた。また、この活性は水、リン酸緩衝液、アルカリ緩衝液、メタノール、界面活性剤などに対し極めて難溶性で葉残渣画分に残った。これらの性質は、シダが一般的に植食昆虫耐性を持つことの原因とされているファイトエクジステロイド、チアミン分解酵素、青酸配糖体の性質とは非常に異なっており、シダに未知の耐性機構が存在する可能性が示唆された。
著者
小島 友宏 塩見 邦博 石田 裕幸 梶浦 善太 中垣 雅雄
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 日本蚕糸学会第72回学術講演会
巻号頁・発行日
pp.137, 2002 (Released:2004-02-03)

カイコの休眠ホルモン(DH)遺伝子の食道下神経節(SG)における発現はわずか14個の神経分泌細胞に限定される。このようなDH遺伝子の細胞特異的発現調節機構は先に形質転換キイロショウジョウバエで解析され、FXPRLアミドペプチド産生細胞において特異的な発現に関わるシスエレメントが同定された。さらに我々は組み換えAcNPV(rAcNPV)ベクターを用いた迅速かつ簡便なレポーター遺伝子発現解析システムを開発し、カイコ個体でのDH遺伝子の発現解析を進めた(日本蚕糸学会中部支部第57回·東海支部第53回研究発表会にて発表)。こうした解析系を用い今回はシスエレメントの同定を試みた。カイコはN4系統の5齢幼虫、および蛹を用いた。BAC-TO-BACバキュロウイルス発現システム(インビトロジェン)により12種類以上のDH遺伝子上流域を削除したコンストラクトを持つrAcNPVを作製した。rAcNPVをカイコに注射後、SGにおけるEGFPおよびDsRedの蛍光を観察した。その結果、形質転換キイロショウジョウバエで明らかにされたシスエレメントとは異なる領域もDH遺伝子の発現に関わっていることが分かった。